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「スローシャッター」への共感と嫉妬。

学生の頃からバックパッカーもどきの旅行を繰り返し、社会人になってもその癖は止まず、いつしか海外出張や赴任を繰り返す生活になりました。自分で旅をして自分で未知の土地を歩いてきたので、あえて他人の旅日記を読む気にはならず、旅行記や紀行文を読むことはあまりありませんでした。

思えば僕は、業種は違えど、この本の著者の方と同じようなことをやっています。もちろん同じ経験をしたわけでもないし、訪れた町も違うけど、日本人がほとんどいない町に出かけ、こんな仕事をしてなければ決して出会わなかった人たちと出会い、刹那ながら何か人であることの本質に触れるような時間を過ごしてきました。

すごく遠くて、すごく違う土地柄で、なんの必然性があったのか分からないのだけど、その人に出会う。空港に行き、飛行機に乗り、その町に着き、人と出会い、仕事をし、飯を食う。きっと多くの出張者や駐在員が、それぞれの滞在先で、高揚感と緊張感を微熱のように抱えながら繰り返してきたことです。

「スローシャッター」(田所敦嗣著)には、その情景と空気感が鮮やかに収められていました。同じような生活をしてきた者の一人として共感し、またそれを言語化し1冊の本に収めた才能に嫉妬する本でした。


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