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人口の少ない島で暮らす。

結構な数の開発途上国にそれなりの期間滞在してみて、さらには住んでみて、それぞれの国の生活のハードシップ、困難さについて考えることがあります。

そりゃね、アフリカは大変だった。インドも大変だった。東南アジアの某国も、街から離れたところは大変だった。

それで今、太平洋の島に長居しているんですけど、で、ここは一人当たりGDPとかそういう指標で見ると割と開発水準の高い国ということになっているんですけど、でもまたアフリカやインドとは別の生活の厳しさがあるなと。

そう感じる最大の原因は、なんといっても人が少ないこと。今のこの島の人口は3万数千人。この程度の人口だと、ちょっと凝ったサービスや商品はマーケットが小さ過ぎて商売として成立しないので、入手困難になっちゃう。

病院はある。最低限の内科医、外科医くらいはいそう。でも、専門医はいない。X線写真は撮れるけど内視鏡は無理。メガネもたぶん作れないし、歯科医もまともなのはいない。

服や靴の選択肢はない。あるもの、サイズの合うものを買うしかない。

決まりきった食べものしかない。現地の人が好んで食べるもの以外は、希少だったり入手できなかったり。

あらゆるものの選択肢が限られる。食品、電化製品、車、文具や工具、食器や生活雑貨、家具や寝具、みんなあることはあるんだけど、「えー、これだけ?」っていう中から選ぶしかない。もしくは2、3か月はかかる海外からのお取り寄せになる。それもかなり割高の。

死にはしないんだけど、生活の質はかなり悪い。いや、事故や怪我、心筋梗塞や脳梗塞だと救急治療は怪しくて、日本だと助かるものも、ここだとやばいな。

ところが、島の人たちの平均的な金銭収入はそんなに低くない。なので、貧困国とはみなされない。生まれながらにこの島の人はそれが当たり前なので、不便なんかそんなに感じてない様子。

たとえ開発途上国でも、人口が多ければ一定の中間層や富裕層がいて、また外国人のコミュニティもそれなりの規模があって、首都ではそれなりのサービスが揃ったりするものです。ガーナのアクラにだって寿司屋はあるし、ジンバブエのハラレにだってフライドチキンやハンバーガーのチェーン店はある。

それが人口3万人で孤立している島だと市場が成立しないので、日本みたいな消費者が王様の国から来ると、とんでもなくクオリティ・オブ・ライフの低いところになっちゃう。

ノーベル経済学賞を受賞したアマーティア・セン博士は、「豊かさとは選択肢があること」と喝破したそうだけど、まさにそう。このセン博士のいう意味で、島は貧しい。お金は持っていても。

人口3万人の島には大学もない。若い人たちにとっては、島でなんとなく生きててもそれなりに楽しくは暮らしていけるんだろうけど、人生の選択肢が少ない。結果、若い人たちは就学と就労のために、また大人も子供も病気になれば治療のために島を出てしまうので、元々人口が少ないのにさらに人口流出が起きていることが問題となってしまってます。

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