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英国バーミンガム市の破綻

ノーザンプトンシャー、クロイドンに続き、バーミンガム市の破綻がニュースで伝えられました。

2023年9月5日付けPublic Finance誌は、以下のように伝えています。

バーミンガム、114条通知

 国内第二の都市バーミンガム市は、今年度8,700万ポンドの予算不足と4分の3億ポンドの同一賃金支払義務に直面し、114条通知を出した。
バーミンガム市は、その負債を満たすことができないと発表し、すべての不要不急の支出を停止する法的通知を発行した。
 当局は、オラクルITシステムの導入(1億ポンド)、2022年コモンウェルスゲームの分担金(1億8400万ポンド)、未払いの同一労働賃金債務(すでに支払った11億ポンドに加え、6億5000万ポンドから7億6000万ポンド)など、負担と挫折に直面している。
 フィオナ・グリーンウェイ臨時財務部長は、同市には同一賃金支払に充てる財源がなく、他の支払い方法もないことを確認した。
 バーミンガム市は、2012年の最高裁判決で、女性職員が男性職員に支給されたボーナスを支給されなかったことが明らかになったことを受け、7月に支出抑制を実施した。
 負債額は毎月500万ポンドから1,400万ポンド増加している。
 「市は、すでに実施されている支出管理を強化し、完全な掌握を確実にするために151条職員(CFO)の手に委ねる。この通知は、社会的弱者の保護と法定サービスを除く、すべての新規支出を直ちに停止しなければならないことを意味する」と広報担当者は述べた。
 今週末の委員会では、2023年から24年にかけて必要とされる6,500万ポンドの歳出削減のうち、3,300万ポンドが「高リスク」、2,900万ポンドが「中リスク」、300万ポンドだけが達成が「低リスク」と見られていることが報告されている。
出典:2023年9月5日付けPublic Finance

バーミンガム市当局からも声明が発表されています。

114条通知に関する声明

 本日(2023年9月5日)発表された114条通知に関する声明です。
 バーミンガム市は、平等賃金請求に関する財政負債と、現在8,700万ポンドにのぼる予算の年度内ギャップを埋める計画の一環として、114条通知を発行した。
 6月、本市は、6億5,000万ポンドから7億6,000万ポンドの平等賃金請求に関する潜在的負債があり、毎月500万ポンドから1,400万ポンドの割合で継続的に負債が発生すると発表しました。
 本市は現在も、これまでに発生した同一賃金債務(6億5,000万ポンドから7億6,000万ポンド程度)に資金を提供しなければならない立場にありますが、そのための財源の見込みが立たない状況です。
 これに基づき、本市の暫定財務部長であるフィオナ・グリーンウェイ(151条職員:最高財務責任者)は、1988年地方財政法第114条第3項に基づく報告書を発行し、本市には同一賃金支出を満たすための財源が不足しており、現在この負債に充当する他の手段がないことを認識しています。
 本市は、すでに実施されている支出管理を強化し、151条職員の手に委ね、状況を完全に掌握します。この通知は、弱者保護と法定サービスを除くすべての新規支出を直ちに停止しなければならないことを意味しています。
 本市の幹部職員及び議員は、財政状況への対応に全力を尽くしており、詳細な情報が入手でき次第、お知らせする予定です。
出典:https://www.birmingham.gov.uk/news/article/1381/statement_regarding_section_114_notice

CFOの役割と114条通知

 財政不均衡、財源不足に陥った団体は、このように最高財務責任者(CFO)により、義務的経費以外の支出停止を命じる「114条通知」が発出されます。
 1988年地方財政法第114条第3項には次のような定めがあります。
「当該団体の最高財務責任者は、会計年度に発生する団体の支出(発生予定の支出を含む)が、その支出に充当可能な財源(借入を含む)を超過する可能性が高いと判断した場合は、本条に基づく報告を行わなければならない」
 一般論として、財務に関する専門性を有するCFOが地方公共団体において最も高位の財務アドバイザーとしての地位を有していることを示していますが、同時に財政的な緊急時には一定期間支出を停止する権限と責任も有しています。
 本件のように114条通知が発出されるとどうなるのでしょうか。
 記事や声明にもあるように、社会的弱者の保護に関する支出や、法定事務に関する歳出は継続されますが、それ以外の新たな歳出は許可されません。ただし、既存の契約等については引き続き履行されます。

 本件は、バーミンガム市の債務への認識はどうだったのか、特に2012年最高裁確定判決による、男女賃金格差による不払い額の負担は事前に判明していたはずなので、何らかの事情があるのか気になるところです。
 ところで余談ですが、負債の中にコモンウェルスゲームズ負担金というのがあります。これは、2022年英連邦のスポーツ大会の開催が南アフリカのダーバンで開催される予定になっていたのですが、準備が間に合わず、開催地がバーミンガムに変更された経緯があります。
 どちらかというと、コモンウェルスゲームズ負担金の方が急に負担することになり、財政に影響を与えた可能性があるようにも思えます。

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