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【動画紹介】テクノロジーが音楽のスタイル(映画音楽)にどう影響しているのか?

今回は「Inside the Score」のOscar氏の「How Technology Affects Musical Style (Film and Classical)」という動画を紹介。

この動画では、タイトルにあるように、「テクノロジー(ここでは主にシンセサイザー、サンプリングやサウンドライブラリ、制作環境)がどのように映画音楽やオーケストラの音楽に影響を与えたのか」という観点から、テクノロジーによる変化の利点と欠点についてそれぞれ述べられている。

・利点:サウンドデザインにおける可能性が限りなく広がった。

ドラマ『チェルノブイリ』や映画『ジョーカー』『インセプション』の音楽では、シンセサイザーがうまく使われている。50年前の映画音楽ではあり得なかったサウンドデザイン・音響の可能性が探求されている。つまり、単にオーケストラ、ピアノやバンドサウンドだけでは表現しきれない音を、テクノロジーの発展により作ることが可能になった。
また、音響の可能性が限りなく広がったことにより、想像し得るどんな音も作れる可能性が出てきた。伝統的なオーケストラの音楽から一歩離れた独自な世界観を持った音楽への道も開かれている。

・欠点:サウンドライブラリやシンセサイザーから出る音により、最初に頭に思い描いていたアイディアを捨てることになるかもしれない。

動画では「もしチャイコフスキーがDAWやサウンドライブラリを使って作っていたとしたら」という例が用いられている。トロンボーンのレガートのパッチを読み込み、目の前の鍵盤を使い、思い付いたアイディア(動画では「交響曲第4番」の冒頭)を弾いてみる。当然ではあるが、弾くごとにトロンボーンの音がスピーカーからすぐに出てくる。
つまり、フィードバックが一瞬で得られるのだ。そのフィードバックを構成するサンプルライブラリの音にも、作る側は当然ながら影響される。もし、そのフィードバックの音が気に入らなければ、それに合わせてメロディや和音自体を変えてしまうかもしれない
こういったことは、紙とペンを使って作曲していたチャイコフスキーの時代には起こりにくい。アイディアのフィードバックを、音源を通して一瞬で得られてしまうのが今のテクノロジーの時代だ
思い描いていたアイディアが確固たるものでない限り、サンプルライブラリやシンセサイザーのパッチの音が、それを生かしも殺しもしうる。
サンプルライブラリの世界では、例えばエピック系の打楽器、スタッカートやスピッカートの音はすでにそれ自体で完成されていることが多い。それに対してレガート系のパッチは、モジュレーション、エクスプレッションなどオートメーションやアーティキュレーション面でのテコ入れが多分に必要となる。テコ入れをしていないモックアップの段階で、上記のショート系パッチの方が初期の印象が良くなりやすい。この影響で、最近の映画音楽などでは、重めの打楽器やストリングスのオスティナートが使われやすい傾向にあるのではないかと、Oscar氏は考察する。

・利点を生かしつつ、欠点に折り合いをつけるにはどうすればよいか?

- より直感的なソフトウェアのデザイン
サンプルライブラリのレガートパッチに関して言えば、上記のようなモジュレーションなどのテコ入れなしに、思ったような音がすぐに出るデザインのライブラリがあれば、欠点を補えるかもしれない。
また、シンセサイザーにしてもサンプルライブラリにしても、より直感的で作業を止めることのない画期的なデザインのものがあれば、良いのかもしれない。なぜなら、通常は音源のノブの値やその他の設定により、作曲自体の作業が止まったり、もともとのアイディアを損ないかねないからだ。
しかし、欲しい音を得るためには、もしかしたらそういったテコ入れや作業が必然なのかもしれない、ともOscar氏は述べる。

以上、Oscar氏の「How Technology Affects Musical Style (Film and Classical)」だ。
このチャンネルには10分を超える少し長めの動画も多いが、クラシック音楽を中心とした考察など、興味深い動画が他に多くある。また別の記事で、このチャンネルから動画を紹介したいと思っている。

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