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よくある相談『保護活動を仕事にしたい』

先日、知り合いの獣医師さんに繋いでいただき、高校2年生の方とお話しする機会がありました。とても真面目そうな方で犬猫が大好きとのこと。将来は保護活動を仕事にしたいと考えているので、この先何を学べば良いでしょうか?という質問をいただきました。
大学や専門学校で動物愛護の授業をすると、同じような質問をいただくことも多く、保護活動の認知や社会的な評価が以前よりも高くなっていることに驚くと同時に、普及啓発に取り組んできた一員としては嬉しくもあります。

ただ実際のところ、多くの方はボランティアとして動物愛護、保護活動に関わっています。ある程度の寄付金が集まっても、なかなか人件費までは賄えないのが現状です。ただ一部はお給料をもらって働いている人もいますので、まずはお仕事として成り立つ仕事をご紹介します。

まず、収容施設(シェルターや保護猫カフェなど)には、たいてい社員さんがいます。やはりボランティアのみでの運営となると、家庭の用事などの優先順位が高くなってしまいますから、動物を預かり管理している施設では責任者としてスタッフを雇用しているようです。

多くの場合、社員さんは1名で他はアルバイトやパートという雇用形態で働いておられます。その場合、基本的には最低賃金と考えて良いでしょう。以前はそれよりも低い時給でスタッフ募集という内容もよく目にしましたが、近年は幾ら保護活動でも流石に…というご時世になりました。

もし保護犬や保護猫に接する仕事がしたいと考えておられるなら、シェルターや保護猫カフェのスタッフが最もポストが多いかと思います。ただ基本は欠員補充でしょうし、スタッフになるには犬猫の飼育経験やボランティアとしての実績が求められる所もあるようなので、すぐに仕事が見つかるとは言えない状況です。

次に、現場で犬猫に触れる以外の業務に社員を配置している保護団体もあります。また啓発を主な活動にしている団体も同様に会計などの事務作業は必ず発生しますし、通販サイトの運営や広報、SNSを社員さんが担当している団体も、かなり数は限られますが存在します。ただ新卒の採用に積極的かというと、即戦力となる経験者を求める団体がほとんどでしょう。

更に動物愛護や保護活動に接点のある職場と考えると一気に幅が広がります。売り上げの一部を寄付にする商品を扱っている企業も増えてきましたし、ドッグフードや動物医薬品のメーカーさんも、何らかの形で支援をしているところが多いです。そのような職場で働くことが、保護犬、保護猫の為になると考えてみても良いでしょう。

ここから先は、動物愛護や保護活動が仕事では無いけれど、ライフワークとして取り組む方法です。
最も多いのは、本業で生活費を稼ぎ、ボランティア活動も行っている人たちです。
例えば動物のプロフェッショナルである獣医師さんやトリマーさん、ドッグトレーナーさんも同じくですが、その場合は、本業への良い影響が期待出来ます。

新人さんであれば保護犬、保護猫と接する事で様々なタイプの犬猫に対する経験値が増えます。小型犬と暮らした経験しかないトリマーさんでも、大型犬のシャンプーを経験出来ますから、いざお仕事としてケアする際にその体験は役立ちます。
また、ペットの場合は飼い主さんの意向が優先されますが、保護動物ならどんな治療をするのか、どんなケアやトレーニングをするのかは(自身が保護主であれば)全て自分が決められます。新人の獣医師さんにとっては症例数を増やす事も大切ですから、積極的に保護活動の担当をする仕組みを作っている動物病院もあります。

加えて譲渡後、新しい飼い主さんが継続して動物病院やトリミングサロンに通ったり、トレーニングを依頼するなどの接点が生まれることも多いでしょう。その為に保護、譲渡をしている方は少ないですが、副次的なメリットもあると考えて良いのではないでしょうか。

また、会社員や派遣社員として直接は動物に関係のないお仕事をしながら、休日はボランティアとして活動をしているという方もたくさんいらっしゃいます。この場合、犬や猫の飼育経験が豊富であれば直接犬猫に関わるお世話をすることもありますが、本業のスキルやノウハウを活かすプロボノというスタイルも増えているように感じます。

また事務作業やグラフィックデザイン、ホームページの運営などであれば、コロナ禍でオンライン会議や共有サーバーで情報を管理するスタイルが急速に普及したので、住まいと団体の所在地を気にする必要もなくなりました。必ず犬や猫と接する活動がしたいという希望で無ければ、ボランティアの門戸は非常に広がったと言えるでしょう。また目の前にいる犬猫のケアで精一杯という団体、個人ボランティアさんも多いので、様々な形で『推し』をサポートする事も大変意義のある動物愛護活動だと思います。

結局は、犬猫に関わることでも、直接は関係ないことでも「自分の得意分野はこれです!」と言えるスキルや経験を持っていれば、動物愛護や保護活動においても必要とされるので頑張って!とお話しする事が多いです。自己紹介で延々書きましたが、私もその1人です。
というのが、私の経験からのお答えですが、ここから先は若い世代の皆さんが、昭和生まれには思い付かないような発想で、楽しみながら動物愛護や保護活動に取り組んでいただきたいと心から思います。

※写真は2017年に開催したイベントでの一コマです

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