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経営課題とは?

 目まぐるしく変動する世の中において、企業は常に様々な経営課題の対応に追われています。問題があることはわかっていても、具体的にどんな対策をすればいいのかわからない、原因がイマイチ把握できていないという経営者も多いのではないでしょうか。

 そもそも、経営課題とは、どういう意味でしょうか?文字通り、企業を経営していく上での課題です。課題という言葉には、大きく意味が二つあって、一つは①問題、という意味で、もう一つは②問題と現状のギャップを埋めるためにできる具体的な行動、という意味がありますが、経営課題と言いますと、大抵は、問題という捉え方をします。

 そこで、今回は、多くの企業が抱える代表的な経営課題について、具体的な解決策とともに解説していきます。加えて、現代における経営課題の背景や、経営課題の見つけ方も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

企業における経営課題とは?

会社規模や時代背景によって発生する経営課題は様々ですが、その中でも代表的な課題を7つ紹介します。

①人材の確保の問題

 日本は、他国と比べても急速に少子高齢化が加速している国のひとつです。
15〜65歳の労働力人口は1995年をピークに、総人口も2008年をピークに減少の一途を辿っています。2060年時点の労働力人口は、1995年のピーク時からほぼ半減すると予想されています。そのため、優秀な人材の確保は全ての企業にとって長期的な課題となっているのです。

 優秀な人材を確保するための有効な対策としては、第一に労働環境の改善が挙げられます。適正な労働時間や人事評価制度の構築を行うことで、ライフイベントにより離脱する社員の獲得など、これまでの労働市場では活躍できなかった層を取り込むことが可能になります。

 まとめると、
経営課題: 優秀な人材の長期的な確保
課題原因: 適切な労働環境が整っていないことによる人材流出
改善事項: 人材を確保し続けるために労働環境を改善する
具体策: 例: 適正な労働時間の確保、人事評価制度の構築

②人材育成課題の把握

 人材を育成する力が不足していることを課題と感じる企業も多いものです。
せっかく優秀な人材を採用しても、育成がうまくいかないと仕事にやりがいを感じられず、モチベーション低下を招いてしまいます。
 人材育成がうまくいかない背景として挙げられる事柄は主に3つです。

  1. 育成する側の人材不足

  2. 教育・研修制度が未構築

  3. 育成する目的が不明瞭まずは、育成する目的はなんなのか、どんな人材を育てたいのか、ゴールを明確にすることが重要です。期待するゴールに応じて、研修制度や評価制度など必要な体制を構築していきましょう。

まとめると、
経営課題: 人材育成力の不足
課題原因1: 育成する側の人材不足
課題原因2: 教育・研修制度が未構築
課題原因3: 育成する目的が不明瞭

改善事項: 人材育成のために明確な目的を設定し、それに基づく体制を構築する
具体策1: 育成担当者の育成と配置
具体策2: 教育・研修制度の整備
具体策3: ゴール設定と目的明確化、適切な評価制度の構築

③生産性向上に関する解決策

2022年の日本国民の時間当たり労働生産性は49.9 ドルで、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中27位です。
米国(85.0 ドル/8,534 円)の 6 割弱ほどの水準ですが、経済成長率が上向いたことで前年と比べると労働生産性が上昇しました。
しかし、順位でみるとデータが取得可能な 1970 年以降、最も低い順位になっています。

長時間労働の慢性化やIT技術導入の遅れにより、業務効率が低迷していることも理由の一つです。

目下の対策として、労働時間の削減や労働環境の削減など、パフォーマンスを最大化するための施策が求められます。
他にも、社員のITスキル向上や書面の電子化など、IT技術の導入も効果的でしょう。

まとめると
課題: 生産性の低さ

  • 改善:

    • 労働プロセスの最適化

  • 要因1: 長時間労働の慢性化

    • 対策: 労働時間の柔軟化と働き方改革の推進

  • 要因2: IT技術導入の遅れ

    • 対策: ITスキル向上のトレーニングプログラムの展開

④技術力や開発力の強化

 ビジネス市場のグローバル化が進んだことで、国内だけでなく海外企業とも技術を競うことが当たり前になりました。
さらに、IT技術が次々と刷新されるようになり、新しい技術情報を常にキャッチアップする必要も出てきています。

 人材確保の困難さも相まって、技術力・開発力の不足を感じる企業も増えているのです。技術力や開発力を保ち続けるには、インプットとアウトプットを同時平行で続けられる体制が重要です。スキルアップやトレーニングを奨励する制度を作るだけでなく、社内セッションなどアウトプットの場を設けるのもおすすめです。

まとめると、
課題: 技術力・開発力の不足

  • 改善: 技術力向上と開発力向上のためのトレーニングと情報共有の強化

  • 要因1: グローバル競争の激化によるビジネス市場の厳しさ

  • 要因2: IT技術の急速な変化と新技術のキャッチアップの難しさ

  • 要因3: 人材確保の困難さ

  • 対策1: グローバル市場に適応できる技術力の向上

  • 対策2: 定期的な技術トレーニングおよび情報共有の強化

  • 対策3: 人材育成プログラムの拡充と新しい才能の発掘

⑤ブランド力や顧客満足度の向上

 ブランド力が高まると、競合企業と明確な差別化が実現し、自社のファンを増やすことができます。
「指名買い」してくれる顧客が増えるため、結果として広告宣伝費などのコストカットになり、収益性を高めることができるのです。

 ブランド力を高めるには、第一にターゲットを明確にすることが重要です。
そこから、ターゲットにとって自社はどんな価値を提供できるのかなど、自社の強みを明らかにしましょう。

 また、ブランド力向上と表裏一体の関係にあるのが顧客満足度です。
市場調査から顧客の自社に対する期待を汲み取り、応え続けることで顧客の信頼を勝ち取ることができます。
顧客満足度が向上すると、自然とブランド力強化にもつながります。

まとめると

課題: ブランド力と顧客満足度の向上の必要性

  • 改善: 顧客との深い関係構築と付加価値提供の最適化

  • 要因1: ターゲットが不明確

    • 対策: ターゲット層の明確な定義と期待値の共有

  • 要因2: 顧客期待に応えていない

    • 対策: 顧客フィードバックを活用したサービスの改善と期待値への適応

⑥コストダウンの実現

売上を最大化するためには、コストを最小限に抑えなければいけません。
そのため、コスト削減も企業にとって永遠の課題といえます。
経営におけるコストは、給料などの「人件費」、賃料や通信費、光熱費などの「オフィスコスト」、
求人広告費や研修費などの「採用コスト」の3つに分けることができます。

闇雲になんでも削減しようとするのではなく、現状を分析して、削減できるコストを洗い出すことが必要です。
着手しやすい施策としては、書類の電子化やリモートワーク導入によってオフィスコストを下げる、
日常業務を平準化・プロセス化して効率アップするといった方法がおすすめです。

まとめると

  • 課題: コストダウンの必要性

  • 改善: 組織内のコスト効率向上

  • 要因1: 人件費の高騰

    • 対策: リモートワークの導入や業務プロセスの見直しによるオフィスコストの削減

  • 要因2: オフィスコストの増加

    • 対策: 書類の電子化やリモートワークの推進

  • 要因3: 採用コストの増加

    • 対策: 求人広告費の見直しや採用プロセスの効率化

⑦営業力・販売力等の強化

売上目標を達成するためには、営業力・販売力の強化が必須です。
単にコミュニケーション能力を鍛えるだけでは自社の製品を売り込むことはできません。
自社のターゲット層と需要、そこに対する自社の強み・弱みを深く理解し、顧客と信頼関係を構築していく能力が求められます。
営業力・販売力の課題においての問題点は主に3つあります。

  1. 顧客情報がチームで共有されていない

  2. 営業・販売手法が属人化している

  3. ターゲット層と自社のポジショニングが明確化していない

まずは狙うべきターゲットを明確に設定し、細やかな情報をチーム全体で共有する体制を作っていきましょう。

まとめると

  • 課題: 営業力・販売力の向上の必要性

  • 改善: ターゲット層の明確化と情報共有の体制整備

  • 要因1: 顧客情報の非共有

    • 対策: チーム全体での顧客情報の共有プラットフォームの構築

  • 要因2: 営業・販売手法の属人化

    • 対策: ベストプラクティスの文書化とトレーニングプログラムの導入

  • 要因3: ターゲット層とポジショニングの不明確さ

    • 対策: ターゲット層の詳細な定義と自社の強み・弱みの明示

自社が抱える経営課題の見つけ方

自社が抱える経営課題を見つけ出すためには、①経営資金 ②社員の成績 ③組織の状況 ④業務フローを「可視化」することが効果的です。
それぞれの方法について、解説します。

経営資金の可視化

経営の資金繰りにおいてどこにネックがあるのか、削減すべきコストはどこなのかを把握するためには、
財務状況や金銭の流れを可視化することが大切です。
問題を直感的に共有できるだけでなく、先々の資金不足に対して早めの対策を打ち、「黒字倒産」を回避することも期待できます。

経営資金を可視化するには、実際の入金や支払いの動きを記録する「キャッシュフロー計算書」を作成するといいでしょう。
中小企業に作成義務はありませんが、帳簿では見えづらい、手元にある現金の状況を正確に把握することができます。

社員の成績の抽出

従来は多くの企業が「年功序列」に基づく評価制度を採用していましたが、
昨今では社員の成績や業績を明確にし、成果に応じた評価をする企業が増えています。
成績を見える化することで、パフォーマンスの高い社員の行動特性を洗い出し、採用や育成に役立てることができるのです。
逆にパフォーマンスの悪いチームや部署を分析することで、労働環境や業務内容の問題を発見することもできます。

評価制度を設計する際は、評価者の主観によってバラつきが出ないよう、評価指標が明確な制度を構築するようにしましょう。

組織状況の可視化

社内の人員配置や稼働状況といった組織状況を可視化すると、人員の偏りや不足している能力を洗い出すことができます。
多くの企業では組織図を作成していると思いますが、体制変更が続いて更新が追いついていないという企業も多いものです。

特に、規模が大きい企業や支店が多い企業は、組織の全体像を把握することが難しくなってきます。
現場の状況を正確に把握するには、仮説を立ててヒアリングすることがおすすめです。

目的を設定せずにただアンケートを実施するのではなく、どういう観点でどんな課題を解決したいのか決めて仮説を立て、
検証するようにアプローチするといいでしょう。

業務フローの確認

業務フローを見直すことで、業務内の属人化している箇所を発見し、作業効率を高めることができます。
業務に属人化している部分があると、社員毎に業務量の偏りが出たり、特定社員の退職によってサービス運用に支障が出たりする可能性があります。
業務フローの見直しは効率化のボトルネックを洗い出すだけでなく、サービスのリスクヘッジや質の向上にもつながるのです。

洗い出した業務の流れは、社員が直感的に理解できるよう、フローチャート形式でマニュアル化するといいでしょう。

自社が抱える経営課題の解決策

これまで紹介したように、規模や業態に関わらず多くの企業が様々な経営課題を抱えています。
経営課題を乗り越え、成長させるための具体的な解決策を解説します。

経営計画書の作成と確認

経営計画書とは、会社が今後どこを目指していくのか、どんな未来を描いているのかを示す計画書です。
具体的には、ミッションや経営理念、経営方針といった大きな目標から始まり、中長期の経営目標や数値目標といった具体的な目標が記載されます。

経営計画書を作成する意義は、以下の3つです。

  1. 現実と理想を比較し、行動を修正することができる

  2. 社員の定着率が向上する

  3. 社外関係者からの信頼がアップする

経営の主軸が固まることで事業の一貫性が保たれ、社内外からの信頼獲得につながります。
また、策定した経営計画を主軸として、次項で紹介する人事制度に結び付けていくことが重要です。

人事評価制度の見直し

優秀な人材を社内に定着させ、目標達成に必要な技術や経験を持つ人材として育成していくためには、適正な人事評価制度の構築が必要不可欠です。
人事評価は査定や人材配置を行うためだけに存在するのではありません。
社員の業務や日頃の行いが会社の示す方向性と合致しているのかを社員に示すものでもあるのです。

そのため、結果だけではなく評価のプロセスを見直すことも大切です。
単に評価指標に沿って判定を下すのではなく、経営目標達成のため社員に何が求められているのか、
そのためにどういう行動が必要なのかを明確に示すようにしましょう。
指針が明確になると、人材の成長促進にもつながります。

インフラリソースの見直し

コロナ禍によってリモートワークが急速に普及したことにより、通信回線や施設などのITインフラの見直しを行う企業が増えています。
出社が当たり前だった従来の働き方と大きく環境が変化したため、リソース配分を見直す必要が出てきているのです。

例えば、これまで社内インフラに注力していた分をクラウドサービスやオンラインサービスにシフトするといった対応が考えられます。
無駄を削減することで、コア業務にかけるリソースを確保し、事業成長スピードの促進や労働環境の改善を目指すことができます。

経営計画に沿って経営課題の解決を

自社の経営課題を洗い出すには、①経営資金 ②社員の成績 ③組織の状況 ④業務フローの4つの項目を「可視化」することが効果的です。
課題を解決するための施策を考える際は、まず経営の方向性を示す「経営計画書」を作成しましょう。

闇雲に様々な施策を試すのではなく、経営目標を達成するために何が必要なのかを考え、効果のある施策を選ぶようにしてください。

企業が抱える経営課題を解決するには「ルールブック」の活用がおすすめです。
「経営計画書」には、経営計画書の作り方からヒト・モノ・カネに関する悩みを解決するヒントが詰まっています。




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