英和辞典にまつわる素朴な疑問 Q&A
2023年10月に『ライトハウス英和辞典(第7版)』が刊行されます。第6版の刊行が2012年なので、今回は11年ぶりの改訂となります。
刊行を記念し、今回は英和辞典に関して「編集部では当たり前だけど、読者の方々の中には疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれない」という「素朴な疑問」にお答えする形で記事を執筆しました。そのなかで、今回改訂された『ライトハウス』にも少し触れたいと思います。
Q. 英和辞典の「収録語数」って何?
皆さんが英和辞典を選ぶとき、一つの判断基準とされるのはやはり「収録語数」でしょうか。「収録語数」は「収録語句数」「収録項目数」などと言ったりもします。収録語数(やそれに類するもの)は大抵どの英和辞典も謳っており、たとえば『ライトハウス英和辞典(第7版)』は7万、『新英和大辞典(第6版)』は26万語です。しかし、実はそのカウント方法に関しては、辞書業界で統一された基準があるわけではありません。
「収録語数」といったとき、皆さんがカウント対象として真っ先に思い浮かべるのは辞書の「見出し」かもしれません。とはいえ、見出しにもcenter/centreのような綴り違いの形があったり、不規則動詞の場合は過去形・過去分詞形を別見出しで立てていたりします。また、複合語・句動詞・成句などが小見出しで扱われることもあります。こうした要素をどのようにカウントするかによって、収録語数にはばらつきが出ます。
また、同じ表現であっても、辞書によって例文のひとつで扱っていたり、成句欄で扱っていたりします。例文で扱った場合、収録語句にはカウントされないかもしれませんが、表現がその辞書に載っていないわけではありません。
したがって、収録語数は「大体の目安」として捉えていただくのが良いだろうと思います。
Q. 収録語数が多い英和辞典を選んでおけば大丈夫?
収録語数が多い辞書は頼もしく思われるかもしれませんが、「英和辞典は収録語数が多いものを選べば間違いない」ということはありません。目的に応じて使い分けることをおすすめします。
英和辞典には大きく分けて「一般英和辞典」「学習英和辞典」の2つのタイプがあります。両者では、同じ単語でも記述方法が異なります。
①一般英和辞典
例:『新英和大辞典』『リーダーズ英和辞典』など
特徴:幅広い分野・ジャンル・時代の、高度な単語までもを網羅的に収録しており、収録語数・語義(単語の意味)が多いことが特徴です。
目的:語彙レベルの高い英文を読むときや翻訳するときに役立ちます。「語彙レベルの高い」というと、難解な語や専門用語がまず思い浮かぶかもしれませんが、それだけでなく、口語、俗語、古語、方言なども含まれます。
※一般英和辞典の中にもバラエティがあり、それぞれ異なる方針で編纂されています。
②学習英和辞典
例:『ライトハウス英和辞典』『コンパスローズ英和辞典』など
特徴:英語の中でより頻度の高い語や現代の語を中心的に収録しており、収録語数・語義数は一般英和辞典より少ないですが、用例、文型・コロケーション情報、語法などが充実しています。また、重要語や重要語義が視覚的に目立つよう工夫されていることが多く、英語学習を進めるにあたり「何を優先して覚えるべきか」がわかりやすくなっています。
目的:単語の実際の使われ方や、特に重要な語・用法を確認できます。英語を読んだり聞いたりする際(受信)だけでなく、書いたり話したりする際(発信)にも役立ちます。
Q. 『ライトハウス英和辞典』と『コンパスローズ英和辞典』ってどう違うの?
では、同じ学習英和辞典である『ライトハウス英和辞典』『コンパスローズ英和辞典』にはどんな違いがあるのでしょうか? ここでは最新版に絞って特徴をご説明します。
『ライトハウス英和辞典(第7版)』
収録語句:7万
対象:高校生・大学生・社会人(英語中級レベル~)
特徴:
『ライトハウス英和辞典(第7版)』(以下、『ライトハウス』)では、英語の基礎を身に付けるために必要な情報に絞って、丁寧に記述し、それらを見やすく提示することを編集方針としています。学習者のレベルによっては、上級者用英和辞典の細かい情報によって、重要な点がかえってわかりづらくなってしまうことがあるためです。収録語句7万は、共通テストレベルまでの大学入試をカバーするのに十分な語彙で、学習辞典ならではの文型・コロケーション情報や用例も充実しています。
英語学習のお供となる辞書を選ぶ際には、無理に背伸びして付き合うより、つまずきそうなときに上手く手助けをしてくれるような辞書を選んだほうが、使い勝手がよく、学習も進めやすくなります。たとえば「英語にちょっと苦手意識のある高校生・大学生」や「しばらく英語から遠ざかっていて学び直しをしたい大人」の方には『ライトハウス』こそぴったり寄り添ってくれるかもしれません。
また、今回の『ライトハウス』はウェブ辞書と紙辞書のハイブリットとなっています(ウェブ辞書は2024年春公開予定)。紙版は紙ならではの良さを生かした、見やすい活字・レイアウトとなっております。紙版を使用する際にはぜひマーカーを引いたり、自由に書き込んだりしてみてください。辞書は教科書や学習参考書より高額ですが、だからといって高級品・壊れ物のように扱う必要はなく、むしろ使い倒してこそ真価を発揮するものです。調べた語に印をつけるだけでも、長く使っているうちに自分の英語学習を振り返る道しるべとなります。どんどん書き込んで、『ライトハウス』をあなただけの「マイ辞書」にしてみてください。
ちなみに、英語力が向上し、『ライトハウス』が物足りなくなった暁には、より上級の学習英和辞典である『コンパスローズ』に乗り換えるのも大いにアリです。辞書は何冊使っても浮気になりません。
『コンパスローズ英和辞典』
収録項目:10万5千
対象:高校生・大学生・社会人(英語上級レベル~)
特徴:
『ライトハウス』より収録語数が多く、多義語ではより頻度の低い語義まで載せています。文型・コロケーション情報や用例の充実ぶりは『ライトハウス』と同様です。
最重要語では「語のイメージ」の広がりを示して、多義語の意味の関連をわかりやすく表示しています。基本となる「コアイメージ」と、拡張された「派生イメージ」を関連づけて、単語をひとつながりのまとまったイメージで把握できるよう工夫しました。単語の核心をネイティブのように感覚的に捉えて、読解だけでなく、書くこと、話すことにも応用がきくような理解に導くことを目指しています。
英語に自信のある方でも、使っていて様々な発見をしていただける辞書になっています。
ちなみに『コンパスローズ和英ライティング辞典』『語根で覚える コンパスローズ英単語』などの関連書籍も刊行されています。
Q. 英和辞典の「改訂」って何してるの?
『ライトハウス』のような学習英和辞典の改訂では、読者の皆さんの利用目的に応えることを目指して、様々な特色を取り入れています。学習英和辞典は主に高校生が学習で使用するときのことを想定して編纂されているため、最新の学習指導要領に沿った改訂が必要になります。たとえば、今回の『ライトハウス』の改訂では、「誤用注意報」「対話のスキル」「トピック別論述フレーズ」など、発信に役立つ要素を強化しました。
また、学習英和辞典を含め、一般に辞書の改訂では、古い情報をアップデートしています。普段、辞書の刊行年なんてあまり意識していない方もいらっしゃるかもしれませんが、実は辞書にも「賞味期限」のようなものがあります。言葉や社会は変化し続けているため、古い辞書だと、記述も古くなって、利用者の目的を満たさない場合があるのです(※この「賞味期限」の長さは辞書によって異なり、中には、前記事でご紹介した『英語語源辞典』のように情報が古くなりにくい辞書もあります)。そのため改訂作業では、新語や、社会事情を反映した語法を追加したり、用例が古い場合には新しいものに差し替えたりしています。特に、本文部分の細かなアップデートは、囲みやコラムの刷新よりも読者の方々には気づかれにくいかもしれませんが、辞書の根幹を成す部分です。
『ライトハウス』の場合、新語を追加する際にも高校生の皆さんが出会うであろう語を選んでいます。たとえば、今回の改訂では次のような新語を追加しています(一部の例です)。
特に、現代の英語や、近年議論が高まってきた話題(たとえばSDGs等)に関して、読んだり書いたりする機会が多い方には、最新版の英和辞典の使用をおすすめします。『ライトハウス』で新たに設けられた「トピック別 論述フレーズ」のコーナーでは、小論文やディベートに役立つトピックを扱っており、「高校生のアルバイト」「学校の制服」といった伝統的なトピックのほか、「AIと人間」「会社員の副業」など、より最近のトピックも扱っていますので、これらも活用していただけますと幸いです。
新しくなった『ライトハウス英和辞典(第7版)』も、ぜひチェックしてみてください! 商品ページはこちら。
おまけ
ライトハウスのシンボルである「灯台」マークも、実は版によって変えています。お気づきだったでしょうか?
(文責:N. A.)
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