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【百合界隈なぜざわつく?】百合のあいだに…タイトルと一抹の不安

プロローグ

百合好きさんたちのなかでざわつきがあった。

「百合の間に」から始まるアニメのことだけど……

はてと思い調べてみたところ
私も同じく戦慄しました

百合の間にはさまれる-ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生

これは賛否両論ありそうですね
「まぁ穏健に……」と始めは自分をなだめました
しかし、どうにも納得がいかない
このタイトルのなにがこんなに引っかかるのかと考えるにいたり
「百合とはなにか」という哲学へとたどり着きました…

なにがそんなに引っかかるのか

完全否定派ではないのですが
みなさんと同じくモヤッとした私
早合点はいけない
まずは情報収集

オリジナルテレビアニメが10月スタート まさかのダミーヘッドマイクに転生
https://mantan-web.jp/article/20220712dog00m200056000c.html @mantanwebより

百合の間にはさまれる-ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生本編は未公開で2022/10/~|TOKYOMXにて配信予定とのこと

人間の頭部を模した録音機・ダミーヘッドマイクを題材にしたオリジナルテレビアニメ「百合の間にはさまれる。ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生」が制作され、10月からTOKYO MXで放送されることが分かった。

 ダミーヘッドマイクは、耳の位置にマイクを取り付けることで臨場感がある音を録音できることから、女性向けゲームやドラマCDなどで人気を集めている。アニメは、耳に心地よい効果音「ASMR」を分かりやすく伝えるために制作。ダミーヘッドマイクに転生した俺クンと、ASMR部に所属する女子高生たちのドタバタコメディーが描かれる。

 「180秒で君の耳を幸せにできるか?」などの葛西良信さんが監督を務め、イラストレーターのcuraさんがキャラクター原案、大塚美登理さんがキャラクターデザインを担当。INDIVSION、エカチエピルカが制作する。

https://mantan-web.jp/article/20220712dog00m200056000c.html

これ以上詳細についてはまだ公開されいないようだ
一見すると百合ペアのたちが一堂に会し
ASMR部での活動を繰り広げる
言わば「部活動百合」
特にこの子たちがどんな関係なのか
個人的には大変気になるのですが……

おねロリだといいなぁ

しかし、しかしだ
見逃せないのがこれ

俺クンが転生したとおぼしき
ダミーヘッドマイク

これを見た瞬間、ゾワゾワゾワ
虫唾が走ったのである
作品を見る前に言及するのは非常に不躾ですが
見る前の印象と見た後の印象でカタルシスが生まれることを祈り
この気持ち悪さについて考察しようと思う

タイトルから分かる不穏さ

「百合の間にはさまれる」

「ある朝ダミーヘッドマイクになっていた」

「俺クンの人生」

百合好き歴15年
私は嫌な予感がした
「百合の間にはさまる」
これに関しては
もう、幾度となく裏切られ
苦虫をかみつぶしながら作品を嗜むこともしばしばでした
特に「俺クン」と言う部分に関して
強烈な悪寒を感じる
おそるおそるだがこれを分解させていただこうと思う

読むに当たっての注意

あくまで個人の視点。メモのようなものです
今後の創作のために行うのであって
「そんな考え方もあるのか」程度に扱ってほしいです
・作品の良し悪し
・ジェンダー問題
これらに切り込みを入れるわけではないことは
ひとことつけくわえて
見ていきましょう

タイトル分解、そして悪寒

「百合」

これに対して私を含め百合好きさんたちは「おや?」となるだろう
まさに垂らされた釣り糸
それが意味するのは疑念
「期待」と「百合ブラフなのでは?」
という二律背反の恐怖にも似た感情でした

有り体に言うと「生きるか死ぬか」なのである
界隈にいない人は「言い過ぎでは?」と思われるでしょう
しかし私たちは大変裏切られてきたのです

百合好き界隈については大きく分けて3つの細分化があるように思います

①男性はまったく出てこないでほしい
②存在はしていいけど間に挟まるな
③カプたちが認めてればよい

これに関しては切り分けが難しく
描くテーマによっても男性がいなければ不自然の場合もある
例えば私は母娘百合、親子百合の創作をさせていただいているのですが
描く際に父(夫)がいるのは基本的な構造であり
母子家庭にしてもよいが、それが不可能な場合もあります
その場合①は読者層から外れてしまいます
無念、しかし致し方なし

また、これは百合のジャンルや読者の年齢によっても遷移するのであり
グラデーションになっていることもしばしば

ちなみに私、つまりサンプル1の話で申し訳ないのだが
①→②→③の順でやはり遷移した(各段階で5年ほど必要とした)
これは社会構造を知っていく上で
「①では成り立たない」場面が多く存在すると気づくからであり
「性別というモノにこだわることの意味」を問うていった結果である

これは百合内の細分化ジャンルにも如実に表れており
「学生百合」処女性を求める事が多く、男性排他で成り立つ場合が多い
「社会人百合」出産・結婚・仕事などの題材を扱う際
男性は欠くことのできない要素である事が多く
①の前提で語る場合「ムリな設定」になることも多い

など、ジャンルによって相性が存在する
また、その作者が発信するメッセージにもよって変わるとは思う

これは私も小説を書いていて経験があるのだが
男性排他的世界設定
それは作者の腕次第で歪なハイファンタジーになるという要因もあると思うちなみに今現在は
「存在を捨てて概念になりたい」
と思ってるのだがそれはまた別の話…

さて、前提の説明が長くなってしまったが本題に戻る

つまり「百合」というコンテンツに触れるとき
「期待」と「百合ブラフなのでは?」という不安がつきまとうのである
許容範囲などは人によって変わるだろうが
いわゆる潔癖的な感覚もやはり存在することには存在する
2000年前後の作品にはよくあったのだ
百合の間に挟まるどころか
「男の夢」の代名詞として百合、レズという言葉を使う風潮が
「藤原」「わからせ」「男NTRエンド」
目にもしたくない
激昂。
地雷である。

最近ではマシになってきたが、気を抜くとやられるので注意されたい
ということで私たち百合好きは「百合」という言葉が出た瞬間に
「天国」か「地獄」
くらいの感覚で新しい作品に臨むことを念頭に置いて
次を見ていっていただけるとうれしい

「間にはさまれる」

カチキレである
界隈では「ミーム」化されている「百合に挟まれる男は○ね」
というものの暗喩…というかそのままだと読み取れる
どういった意図でこれを入れたのか謀りかねるのですが
これに関して百合好きのひとりとしては「冗談でも言うな」である

マーケティング的なネーミングだと予測するが

カチキレである(2回目)

…とまぁ冷静さを失うくらいに
ショッキングなワードというのが伝われば幸いです

昨今ではこのミームを作品につけるが流行っている
いわゆる「百合ホイホイ」である
しかしその場合は
・間にいるのは女
・表紙で明らかに分かる
といった安心材料がある

有名どころだと

これに対し

百合の間にはさまれる-ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生

には多くの地雷が含まれている
歩けば爆発、キープアウト
詳しくは後述するが
昨今の私たちの希望的観測である
「百合の間に挟まれる」といいつつ実は「挟まれるのは女性だよね」
が成就されるか、裏切られるか
まさに生か死かの瀬戸際なんである

このように不安になりつつ調べているのが私たちの日常なのだ
ちなみにその選別で命を落とす人がひとりでも減るように
Kindle Unlimitedで読める百合作品を毎日探してきているので
こちらもご活用いただきたい

そして続くキーワードに大きく裏切られることになる……

「ある朝ダミーヘッドマイクになっていた」

さてここで不安がいよいよ実像化する
ダミーヘッドマイクこれはまだギリである
無機物…と、とらえられなくもない
改めてここでキービジュアルを見てみよう

オリジナルテレビアニメが10月スタート まさかのダミーヘッドマイクに転生
https://mantan-web.jp/article/20220712dog00m200056000c.html @mantanwebより


いるのである


俺クンが転生したとおぼしき
ダミーヘッドマイク

まるでモアイ像のようではないか
しかもよく見れば頬を赤らめているのである
悪寒はフルマックスである
男性性が如実に表面化しているように見えてしまった
(モアイ像が男性か女性かの議論は詳しい方々に任せます)

私の中のざわざわは頂点に達し、不安とモヤモヤでいっぱいである
ここら辺で脳内の文体が崩れてくる
余裕がないんである
さらには俯瞰、つまりは神的な目線で見下ろしているように
みえなくもない。
落ち着け。落ち着け私。
対比としての以下を参考にされたい

これはどうだろう。セーフ
概念としても百合に挟まるのはおこがましいという発想から
少々のモヤモヤ感はあるものの
「観葉植物」「壁」つまり「百合に干渉しない」という
保証のようなものがあれば
まだ安心して見られるのだ
見守るというだけで若干の不安はあるが)

「ダミーヘッドマイクだって、不干渉じゃん」

と言われればそれまでなのだが
男性性を想起させるものがそこにあるだけで
モヤッとしてしまう
理性で抑えられるものではない

イメージとしては百合のブーケ
いいなぁ、きれいだなぁと癒やされていたら
全裸の男性が突然現れるような感覚だ

そしてその不安はいよいよ決定づけられる

「俺クンの人生」

怒髪、天を衝く。般若の形相で走り回るほどの憤りである
あげて落とすとはまさにこのことで
考え得る史上最悪のミームとも言えよう
…平静を欠いたことを許してほしい
日本語における一番の恐ろしさは語順によってその意味が反転するのである
主語。主人公は「俺クン」らしい

さてここで私の心の中では大きな変化が起こった
地殻変動ですべて繋がっていた大陸が孤立して
ユーラシア大陸が生まれたような変化である

「百合カプの短編オムニバス」と思って進んだ洞窟の先は
「俺クン」でした。

ショック。ショックなんである。

マインクラフトをやったことがあるだろうか
ダイヤが目の前にある、探しに探したダイヤである
それをめがけ、ツルハシで掘った瞬間、赤い粘液がどろり
そうマグマである
燃えるドロップダイヤ
流れる溶岩
背後に敵
炎上
瞬く間に死を迎え
アイテムもその場でロストするのだ
まさに地獄、まさに鬼の所業

私たちの絶望が伝わっただろうか

そう、そうなのだ
男性である、と明示している(ように見える)
さらには「百合に挟まる男」のデバフ付き

主語が男性であったことにすら絶望を感じるのに
さらには「俺クン」である
「僕」ならまだいい(ダメだが)
「俺」もぐっとこらえよう(もちろんダメだが)
「私」はハラハラドキドキ
しかし「俺クン」である
しつこいと言われようがそれほどにショックなのだ

キャッチコピー、タイトルは人の心を動かして初めて成功である
かの伝説のコピーライター「ジョン・ケープルズ」
かの御仁も褒め称えるかも知れないほどに
私たちの心を大きく揺さぶっている
デラックス振動パックである

さて、会いたくて会いたくて震えている場合ではない
冷静さを取り戻そう
「俺クン」のなにがここまで揺さぶるのであろうか
ミクロ的に見てみよう

「俺クン」と「百合豚」が持つおぞましい表情

さて、言葉には「表情」というものがある
まずは多くの人が体験したであろう
「オタク」という言葉の表情を例に出そう

一時期「オタク」と言う言葉は対象を卑下する言葉であった
萌え
引きこもり
社会に反し
非生産的
気持ち悪い
笑いものにしてもよい存在
だった
これは私の私感ではなく全体のメディアが作り上げた雰囲気
としてたしかに存在したのだ
実際私の学校ではそれでオタクいじめが起きていた
信じられるだろうか、堂々とラノベも読めない、買えないのである
本屋で女子が表紙の作品を眺めているのを見られようもんなら
次の日「オタクなんだ~」といじられる恐怖
ライトノベル探しもできやしないのである
多くの人が苦しんだであろう
私も怯えて、バレないようにと生きていた(にじみ出ていたが)
それこそ2005年頃の話だったと思うが
諸処、時間、感覚、程度のズレはあるだろう
少なくとも
アニメ好き、ラノベ好き、アニメアイコンなどがこんなにも
当たり前になるとは思ってもみなかった

今ではその「オタク」という言葉は
「好きが深くて最先端、トレンドに乗っている」
つまりポジティブな表情を持っているのだ

もちろん「昔はこうだった」という老害的な話をしたいのではなく
「ことばの表情」についての話である

業界内や界隈で表情が変わる
言葉が孕む表情というのは恐ろしいまでに強い

もうひとつ例を出すならば「百合豚」である
今日プロフィール文で
「百合豚」
を使う若年層(おそらく)の方々がいる
これに関しても大変注意されたい
これは「百合というものを性消費する男性」という意味の揶揄であり
「百合に挟まる男」の間接亜種
決して「百合大好き」の代名詞ではない
一部の間で「百合豚」がポジティブな意味を持っているようだが
ほとんどの場合はネガティブな意味を持っているように思う
少なくなくとも私はその言葉を見ると
いわゆる「キモいオタク像」が想起され、嫌悪を感じる
(人それぞれだとは思うが)

さて、これが「俺クン」とどう繋がってくるかというと
俺クンが持つ表情である

pixiv百科事典にはこうある

俺くんとは
二次創作やSSにおいて、名前を決めていない男オリ主
掲示板では投稿者自身を指すこともある
他にも使用例は幅広く
プレイヤーの分身となるキャラ
男性向けシチュエーションボイスにおいて
視聴者への呼びかけの表現

https://dic.pixiv.net/a/%E4%BF%BA%E3%81%8F%E3%82%93

「俺くーん。いっしょに帰ろっ♪」

のようなものである
初見では
「俺クンってなんだよ!!」
と鳥肌が立ったのを覚えている

これに関しては完全に個人の意見なので好き嫌いだが
問題なのは「百合の間にある」ということだ
単純に「シチュボでよく使われるから」という
お約束なのかも知れないが
「没入型コンテンツですよ」と暗に言っているようなものであり
それを深読み変えると「男が挟まります」となる
そしてありとあらゆるところで
「この百合には俺クンがはさまってるんだよな」
という気持ち悪さがぴったりとくっついてくる
センシュアルな香りの中に満員電車の皮脂の匂いを思い出してしまうのだ…

転生モノにおける性の引き継ぎはあるか

さて、ここで問題になるのは
「転生したらその人はその人か?」という問題である
日本的発想における生まれ変わりについての考察を
十倍希釈したような解像度の話になるが

「俺クン」が転生した時点で「俺クンの男性性」は保持されるのか?
これがキモになってくる
様々な意見があるとは思うが私の中では答えは
「引き継がれる」
作品を展開するに当たって
「俺クン」の視点、自分語りつまり
「女の子の声や耳に響いてうわぁぁ」的な描写がされるのであれば
それはあまりに下世話であるが
世に出ている作品を見るにその可能性は高い
さらに、ASMRを起点として前作が作られているようであるので
没入型コンテンツであることはかなり濃厚
そうめんつゆの四倍濃縮をそのまま飲む感じだ
同監督の前作品を見ていない私としてはただのエアプであることはご了承願いたいが(これは飽くまで考察であり邪推である)

これは日本人の
生まれ変わり、輪廻に通づる考え方であり
「前世の業は引き継がれる」と同じく
転生モノでのお約束になっている

無職転生~異世界行ったら本気だす~原作:理不尽な孫の手(MFブックス/KADOKAWA刊)

【小説1巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘I」 (TOブックスラノベ) Kindle版

あげだしたらキリがない
まさに枚挙に暇がないとはこのことだ
これらを代表とするありとあらゆる転生モノはそれを前提として構成される

しかし、しかしだ。これらは「百合」だと謳っていないからよいのであって
(無職転生の悪名高さも置いといて)

百合の間にはさまれる-ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生

これは「百合ですが、実は……!」のような
ブラフを含むから問題なのである
例えばこれが仮に「女性」が転生しているのであれば
前項で述べた「ダミーヘッドマイク」の男性性は中和され
むしろ「百合に挟まれた女」の構図が
作品に広がりが生む
ハッピーヘブン。次の扉は開かれた
だがしかし、がだしかしだ
俺クン
なのである……望みは限りなく薄いように思う…

まとめ

百合の間にはさまれるある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生
は秀逸な百合好きホイホイ落とし穴かそれとも……?
とにかくこの作品は「俺クン」が完全に中核となっていることは
自明であり
その俺クンをどう扱うかで「誰に向けた作品か」が決まるのであろう
百合ホイホイに引っかかった勘違いおばかさんになるのか
はたまた歓喜になるのか
今後に期待したい……

【希望的観測】
「僕っ子」文化があるように
もしかしたら自称「俺クン女子転生」かもしれない
万にひとつの可能性だが、それでも作品に対し真実を知るまで
早合点してはいけない、理性はそう言っている
だが、一抹の不安を拭い去れないのは私だけだろうか……

むすびに

何ごともそうなのですが
見る前に決めつけるのはよくないと思います(お前が言うな)
そして百合を愛するひとりの人間としては
「どんな作品からも百合を吸収する」
の使命を果たすために百合の発掘
及び私作を通しての百合の創世必要性を
改めて感じた次第でございます

最後にお断りしておきますが
まだ作品が公開もされていない時点での
究極のエアプ、邪推ここに極まれりです
ふたを開けたら「最高の百合だった」となることが一番の願いです
その時は深読み乙。
なんて言い放ってくださいませ
そうなることを祈って
最後までお読みいただきありがとうございます

みなさまよい百合ライフをおすごしくださいませ

私はこれを書いていて俺クンが頭にこびりついてきたので
百合小説を書いて浄化してきます
7月発売は「超能力百合アンソロ」
8月発売は「Lilium Anthems総集編」
9月発売は「ノンケ百合堕ちアンソロ(ヘテロとは言ってない)」
です
詳細はこちらからどうぞ
Lilium Anthemsは「百合の無限化」をスローガンに活動している
アンソロ、百合小説、百合拡散アカウントです
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