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十五作目 おねぇはおばかだけど、かわいいよね。 実姉妹百合アンソロ② 

登場人物紹介
咲野 澪(20)
「ねぼうしたー! 結ー! ママー! たすけてー!」
お姉ちゃん。
一応本作の中心にいる人。1番振り回されてる人とも言う。
名前も見た目もクールなデキる女風のくせにすぐに心が折れる。
メンタルゆですぎたうどん、豆腐ですらない。
ママに甘やかされて育つ。さらに高卒最年少社員のため現在も絶賛甘やかされ中。
天真爛漫。よく言えば嫌味がない。ただあんまり頭も良くない。
当然(?)ママが好き。本人は恋人のように甘えているつもり。どう見ても赤ちゃん。
本編では書かれていないが雑誌の編集の仕事。母のコネ入社+女編集長のお抱え。いなくてもなんとかなるが、いないとちょっと困る。組織を回す上で一番必要な人材だったりする。場が和む。文章やデザインは一見めちゃくちゃだが、親しみやすく。読者に受けいられるやすい。けっこう抜けているがなんやかんやみんなにちやほやされるタイプ。鈍感。
咲野 結(17)
「また? 私がいないとおねぇはだめだよね(無表情垂涎)」 
妹。
本作の黒幕。したたかで目的を果たすために策を講じるタイプ。
ただ、澪が頭が弱いので大体思い通り。
おねぇ。ママ。と呼ぶ。甘えただが強がることが多い。
当たり前のようにおねぇを自分のものにすることしか考えておらず。
有名大学への受験勉強もすでに済ませており。あとは復習のみである。
誰のため? もちろん、澪をヒモにして依存させるためである。おそろしや。
そんな結も、ママには適わない。年の功で裏をかかれ、ママの思い通りになることも多い。策士策におぼれる。ママには誰も勝てないのである。
母の甘々フェイスをそのまま引き継いだので、とてもかわいい。すごくかわいい。
ちやほやされる……と思いきや、とっつきづらいらしく。友だちは数名。
かわいすぎるのは孤独なのである。あと、自分から求めていない。友人とはつかず離れず。
おねぇがいればいいので別に気にしてない。ただ愛想がいいのでそつなく生きている。
咲野 智恵(40)
「すわりすぎたわぁ。でも、いい……実姉妹百合……じゅる」
同人サークル「百合の花園―LilyGarden―」の主。
百合ジャンル黎明期の古参中の古参。
ノンケ×ガチいちゃらぶ百合。
百合界隈で知らない者はいない。
澪はなにも知らないが、結は英才教育を受けて育った。
それすらも智恵の計画通りである。ちなみに子育ては人生をかけた創作。
「子育て、出産百合が書けるようになりたいからぁ」と言う始末。
動機のわりにまとも。創作における調べグセがそこにも発揮。科学的にも証明されている現在最良の方法だったため、娘ふたりは非常に優秀に育った。澪はちょっと、おばかだけど素直で良い子です。性格は一見ほわほわしてかわいらしい、ママさん。といった感じだが。スイッチが入るとすごい。まさに一心不乱。やめられない止まらない。かっぱ○びせん。娘たちから百合成分を吸収しているので永久機関。怖いぐらいに若々しい。
旦那は特に言うことのない平凡な人である。本編に存在しない。
 一 おねぇは、すぐキレるよね。

「だぁ! ちょっと結! またなの? 私のアイスとらないでよ!」
「べー!」
「っくぅ……かわいくない……」
「名前書いてない方が悪いんですぅー」
「くぅっっ……っていうか私の食べかけじゃん! キモくないの?」
「は? ご褒美だし」
「え?」
「あ」
「どういう意味。わけわかんないんだけど」
「うっさいなぁ。おねぇが大事にとっといてるからうまいって言ってんの(あぶねー)」
「はぁ……そういうことね。あんたどんなけ私のこと嫌いなのよ」
「へ」
「人の大事なもの奪うとか、サイテー。一番嫌い。そういう考え方」
「は……」
「あ! 落とすなよ! もったいない……バーゲンダッツ高いの知ってるでしょ!? って。うわ! なんで泣いてんの。泣きたいのはこっちだって!」
「なななな、泣いてねぇし。ばかおねぇ‼」
「はぁ……っていうか。言葉遣いも汚い」
「う」
「泣き脅し? キモ」
「ひどい! おねぇのばか! うわぁぁぁぁぁぁん!!」
 ドタバタと走って行く妹。なんだろうなー。いくら年下だって言っても、ちょっとレベルが下すぎる気がする。っていうか3つしか違わんし。こちとら大人中の大人。社会人ですぞ。
「なんなんだよ……まった……く……」
 床に落ちたアイス。食べれるんかな。いや……意地汚いよなぁ……。でもなぁ。バーゲンダッツですよ、お姉さん。安月給で週一のご褒美なんですよ。上の部分をすくえばなんとか……。
『……お姉ちゃん? やめなさい』
「ひぇ! ママ……」
『また、結ちゃんいじめたの?』
「いや。は、あはははは……だって……」
『だってじゃないの。もう……知ってるでしょ。あの子の気持ち』
「しってっけどさぁ」
『言葉遣い。あの子、あなたのマネしてるの』
「う。しってっ……知ってるけどさ」
『はぁい。よくできました』
「はぁ……。だってさ、可哀想じゃん。私なんかが好きなんて」
『どうして?』
「私、バカだし。要領悪いし……結の気持ちを私は受け取ってあげられないから」
『そうだったわね』
「わざとらしい……。慰めてよ。ママ」
『はいはい。断る方も大変だわね』
「んふぅ……」
 アイスなんか、どうでもよくなった。ママに抱きしめられると「はふぅ……」と、ネコのようにとろけてしまう。背中を撫でてもらって。そのあったかい手がゆっくり腰に降りてくる。ぴくっと、体が動く。ママにカラダをこすりつけて。アピールするにゃん。
『なぁに? 今日もしたいの』
「うん……」
『だぁめよ。ほら、結ちゃんのとこ行ってらっしゃい』
「やだぁ……ままぁ……」
『ほら。きちんとできたら、ご褒美あげるから』
「ん……先にちょっとだけ」
『もう。わがままねぇ……』
 キス。とても甘いキスをしてくれた。腰がとろけてしまう。歩きたくなくなるくらいに。ずっと、こうしていたい。ずっと、ずぅぅぅぅぅっと。でも、その温かい唇は離れてしまって、全力でかわいこぶっておねだりするのだけど。ママは……。
『ほら、いってらっしゃい』
「足に力はいらない……」
『もう。かわいい子。ほら、あなたの好きなの、あげるから』
「あ……ママ……」
 
――パシンっ!

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