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ばななアジャストとは。

関節を動かしたり外部圧によって矯正する。関節が動いちゃいけない方向に曲がる。

もちろんそういう事はない、いわゆる骨格矯正(英語でアジャスト)と言われるもの。
骨格矯正と聞くと日本で一般的にイメージされるのはアメリカ発のカイロプラクティックだと思われる。まずはそのへんのお話から。

カイロプラクティックは、アメリカ人医師のパーマーさんというひとが考案された骨格矯正法です。カイロプラクティックは日本語に直訳すると”手の技”で、要するに本来は手技療法全般の事を言います。
実際にカイロプラクティックと体系づけられている手技にはいろんなものがあるんだけど、見た目のインパクトから知名度がぶっちぎりで高くなったものが、首をバキッってしたり、腰をひねってグキッとやったりするアレ。
これはディバーシファイドテクニックと言われるもので、カイロプラクティックの中ではベーシックな位置づけにある手技です。

で、このアメリカ発のカイロプラクティックですが、ルーツは実は日本を始めとしたアジア圏にもともとあった骨格矯正法だったりします。
例えば、柔道整復で行う骨整復(骨継ぎ)や脱臼はめで今でも日本独自のものとして残ってますね。
つまり、元々西洋医学が中心の欧米人医師であるパーマーさんが東洋医学に触れることで、これは使えるってなって、体系づけたり標準化するという概念が薄い東洋に代わって再構築して体系化したものがカイロプラクティックという事です。格闘技のブラジリアン柔術と似てる。
あ、『実は日本がスゲーんだ!』とかそういう話ではないですよ?ただの事実です。
しかし、東洋医学を取り込んで公式な医療の選択の一つになっているアメリカに対し、西洋医学が入ってきてから元々持っていたものをゴミ箱にポイしたけどまた逆輸入して細々と頑張ってた残存勢力と交わって少しづつ発展を再開している日本という構図は不思議。人間社会っておもしろい。

なお、ぼくのばななアジャストはいろいろ混ざってるんだけど、カイロプラクティックも少し入ってるけど、メインは元々日本にあった矯正法らしい。らしいというのは師匠に聞いただけで、大元を調べても本当かどうかわからないから。
中国の文化大革命ほどじゃないけど似たような事が明治維新後にあって、ほとんどの矯正法が正式には断絶したようです。まあ解剖学と力学に照らし合わせて納得のいく手技しか使ってないから危険はないし、効果あるからそのへんはどうでもいい。
さらに理学療法でも使う関節モビライゼーションや、本来は骨格矯正ではないけど実際には矯正効果のある操体法、知る人ぞ知る超オタク向け古典矯正法の均整法なんかも組み合わせています。
こうやって書き連ねるとなんかすごいスキルツリーを網羅してるように思えるけど、最終的には、解剖・生理学知識によって安全性を担保し、人体という物体の筋系・骨格系構造の問題点を力学によって無理なく矯正する関節技という事になります。物事は突き詰めるとおおむね単純なとこに行きつく。力学的に見たら、人体も機械もそのへんに落ちてる石ころも通常空間にある剛体とその組み合わせであるという観点からは大差ないからね。

さてそれではオタク向けパートの開始です。地獄はここから。
矯正する時や矯正じゃなくても関節を動かした時にパキッと鳴るあの現象。
英語でキャビテーションという名前がついています。日本語では空洞現象という名前がついてるけど翻訳後付けだからキャビテーションの方が浸透してる。あ、コンセンサスをフィックスしてコミットするとか言ってるひとではないので安心してください。アジャストもそうだけどカイロプラクティックと共に逆輸入で入ってきた言葉の方が浸透してるんだもん。文句は明治政府に言って下さい。

話を戻して、これは人間の関節でだけではなく、物理現象として自然界のいろんなとこで起きる現象です。解剖学じゃなくて物理学が出て来たよ。流体力学になるのかな?でも大丈夫、計算式とかは出てこないから。そんなのぼくもワカラン。
一応物理学的な概要を説明すると、液体が動いた時に圧力変化で泡が瞬間的に発生する現象ということです。
これ以上首を突っ込むと頭がパンクしそうなので、はしょって人体に戻る。
人体でこれが起きるのは関節包の中。この中は滑液というすっごい滑らかな液体で満たされてる。
どれくらい滑らかかというと、人体解剖で膝関節包内の滑液を触ってみたけど、ローショn… 規制を食らいそうなのでこのくらいにして、とにかく滑らかで、これで摩擦を減らす事によって関節を動かしても損傷を置きにくくするようになっています。長持ちするベアリングの原理と同じだね。うん、実によくできてる。
で、関節を動かすと密閉された関節包内で圧力に変化が生まれる。そして泡が発生するって事だね。
それでなんで音が鳴るかはまだ完全には分かってないみたいなんだけど、液体が気体に相転移するからそのエネルギーの一部として発散されているか、密閉空間の体積が急に増加したエネルギーの一部が発散されているかどっちかもしくは両方で、関節包内で反響するからだと思う。しらんけど。
人体においては泡発生の段階で音が鳴っているのは確かめた実験があって、船のスクリューでの騒音原因としても考えられてるから、音はそれで鳴るという事は事実だからもうこのくらいで勘弁してください。

あと、キャビテーションとは別にゴリッって感じの似たような音が鳴る現象もあるけど、それは単純に体内の組織がこすれる音です。股関節とか肩関節の骨頭部分なんかは腱や靭帯が滑ったり弾かれたりしてよく起きる。茹でてないパスタの束をギュってするとギュリって鳴るのと変わらない単純な音。
つまり、激しくやりすぎるとよくないよ。キャビーテーションでもその周囲では摩擦が起きてるので、首ポキのクセがあって首の捻挫した跡がある人なんかよくいる。
かといって硬くなった関節を動かさないでいるとさらに硬くなっていくので、動かす事はいいんだけどゆっくり無理なくね。

最後に音が鳴るのがいいのか悪いのかの話。
よく骨がこすれている酷い状態だと思っている人がいるんだけど、骨の表面には骨膜という痛みをものすごく感じる膜がある。つまりこすれたら激痛。だから骨折すると超痛い。激痛があるならすぐ病院へGOだけど、痛みがないなら気にしなくてもいいです。「ちょっとここ硬くなりはじめてるんだなー、ちょっとだけ動かすように意識したろ。」くらいの感覚でOK。
(ただし、高齢者の方は感覚が鈍っていて気づかない事もある。ぶつけたり転んだりしたら、何ともないと思ってもすぐ病院で調べてもらおうね)

要するに施術においても鳴るまでやる必要はなく、鳴ったからといって矯正されたというワケでもないです。
不調が改善されたのなら手技自体はいいとして、『鳴ったから治せた!』と思うセラピストと、『鳴ったから治った!』と思うお客さんは音については勘違いなので、音フェチにはならないように気を付けましょー。

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