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自称サイコパス男子と情緒不安定女子の家出ドラマがほろ苦い

一話約20分というコンパクトさにひかれた観たところ傑作でした。高校生の男女が家出します。友達以上、恋人未満という微妙な関係性にもハラハラしますが、主人公のジェームスがいつか人を殺してみたいと思っていて、スキをついて連れの女の子のアリッサを殺そうとしているのいうのがこれまたスリリング。

ドラマのタイトルは『このサイテーな世界の終わり』、ネットフリックスで配信中。以下はネタバレです。

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ヤバイよヤバイよ、殺してから公開するんじゃないの、と思っていたらそんなベタな展開にはならず。最終話で「なんだよジェームス! おまえ男前じゃないか!」とグッと来てしまいました。

前半では「いつ殺すのか?」「ほんとに殺すのか?」が気になってましたが中盤から「殺さないな。これ、やっぱり好きになっちゃうパターンでしょ」と思っていたら「なにこれ。どうなるの?」と事件が発生。

ジェームスは実はサイコパスではなく、過去の体験がトラウマになっていて、感情を自覚できなくなっていることがわかります。自分で自分の感情に蓋をしているようです。あまりにつらい体験だったので、なにも感じないようにしていたんですね。

だから、アリッサに逃げられたことがわかったとき、感情的な反応ができません。

では、どうしたかというと、街のチンピラに金を渡して殴ってくれと頼みます。心では痛みを感じられないので、身体で痛みを感じようとしている。そんなふうに見えました。おいおい、ジェームス、無茶するなよ、と思いました。

ふたりとも借り物のオーバーサイズな服を来ているのですが、これがまた彼らの居場所のなさを語っています。アリッサは家を出ていった父親のジャケット、ジェームスは途中で出会った軍人のおっさんからもらったアーミーセーター。ぴったりの服がない。その後変装すると、今度は服がぴったり。でも、変装なので本来の姿ではない。ジェームスは少しキツイ服だったりします。

旅を通して、彼らは自分自身を理解し、他人を理解します。他人というのは、ジェームスにとってのアリッサ、アリッサにとってのジェームス。自分は相手に守ってもらっていたと。さらに、サイテーな親だと思っていたそれぞれの親が、自分たちを守っていてくれていたことに気が付きます。

家出した当初は、互いに好都合な存在でしかありませんでした。

アリッサにとってジェームスは怒らないし、批判もしないし、何も求めてこない。頼めばいうことを聞いてくれる。そこが居心地いい。一方、ジェームスにとってアリッサは殺す対象でしかない。

落ち込んだアリッサが服を着たままベッドで丸くなります。ジェームスに背中を向けたまま「抱いて」というと、ジェームスは不器用に恐る恐る肩に手を回します。それだけです。なにもしません。

ジェームスは戸惑いながらもアリッサに調子を合わせているだけなんです。でもそのうち感情が芽生えてきます。その感情がなんなのか、本人にはわかりません。ジェームスもその気持を言葉にはしません。でも、旅の後半になると、ジェームスがアリッサを大切に思っていることはビシバシ伝わってきます。

微笑ましい二人、という感じです。状況を考えると明るいラストにはなりようがなく、リア充め、などと妬む余地もなく、そこがまたなんともやるせない。

ラストのジェームスの行動に、大人は真似できない、純粋さを感じてしまいました。

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