イーロンさんの冒険(2)
ミッション:ロシアでミサイルのお買い物
2001年の夏に戻る。
ジム・カントレルと無事にソルトレイクシティー空港内のラウンジで打ち合わせをするイーロン。当初はかなり怪しんでいたカントレルも最後は協力をすることに合意。仲間に加わることになったのだ。
カントレルのネットワークを頼れば、キーパーソンにコンタクトを取り、ロシア製のロケットを買いにいける。前回書いたように、実際はICBM=大陸間弾道ミサイルのB級品を入手して改造すれば宇宙に飛ばせるだろうというプランだった。このヤバい計画を聞いた友人達は彼を止めようとやっきになる。大金を手にした実業家がハリウッドで映画を作り始めたり、ロケットを飛ばそうとして大失敗するのは過去にもよくあった話で、周りが危ないと思ったのも当然のことだろう。彼らは過去の様々なロケットが爆発するシーンをわざわざビデオに編集して、上映会までして説得を試みるが、このワイルドな起業家を止めることは不可能だったのだ。初期のヤフー,グーグル、ユーチューブなどに出資した著名ベンチャーキャピタリストであるSequoia Capitalのマイケル・モーリッツの言葉を借りてみる。
"Chief executives are, for the most part, products of educational and institutional breeding. Founders or, at least, the very best of them, are unstoppable, irrepressible forces of nature."
「CEOとは教育と社会制度の賜物だが、優れた創業者とは、誰にも止めたり抑圧することができない、自然の猛威のようなものだ」
説得できないのであればしょうがない、と友人代表のお供として大学からの友人Adeon Rossi(アディオン・ロッシ)も参加することに。ロッシは自身も最大級の起業家アクセラレターネットワークであるFounders Instituteなどの創業者であり、連続起業家である。彼に加えて前回登場したロシアにコネがあるフィクサーのジム・カントレル。そして、もう一人紹介された人物が御一行様に加わるのだが、彼の名はMike Griffin(マイク・グリフィン)。元NASAのJPL(ジェット推進研究所)のスタッフで、その後はあのCIAの投資部門であるIn-Q-Telの責任者。グリフィンがここで参加して、知り合いになる事が、後に設立されるSpaceXの運命を大きく変えることになるのだ。