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イーロンさんの冒険 (0)

序章 その名はマスク

2001年7月。Jim Cantrell(ジム・カントレル)は雄大なロッキー山脈を背景に、ユタ州北東部の高速道路を自慢のオープンカーで爆走していた。ユタ州立大学にて機械工学の学位を修めた、車いじりとカーレースが好きなこの36歳のエンジニアは航空宇宙業界のベテランでもある。NASAのJPL(ジェット推進研究所)にて火星探索ローバーやバルーンのプロジェクトに関わり、その後フランス国立宇宙研究センターを経て、アメリカ国防総省のプロジェクトで人工衛星やミサイル防御システムの設計に関わるなど多彩なキャリアを積んだあとに独立し、コンサルタントとして活動を開始して間もない頃である。そんな彼のモトローラ製の携帯電話が、運転中に突然鳴り始める。見知らぬ番号だったが、カントレルは通話ボタンを構わず押した。

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「誰だか知らないけど、少し変わったアクセントの男がいきなりまくし立ててきたんだよ。」 カントレルはのちに語る。
化石燃料が!だとか、宇宙旅行が!だとか、人類を惑星を行き来させるように進化させないといけない!とか。自分の哲学みたいな何かを30秒かそこらで一気に喋りまくってきた。」

怒涛のスピーチの後に、カントレルはこの謎の声の主がイーロン・マスクという名だと知る。しかしそれでピンと来るはずもない。イーロンが創業メンバーの一人であるネット決済の先駆けのPayPalは、急成長をしていたとは言えまだ一般的にはメジャーではなかったし、技術が分かるカントレルではあったが、IT業界は全くの門外漢である。

「ミーティングをしたい」と、この謎の男は続ける。
「どこに住んでいる?俺はプライベートジェットがあるからどこにでも明日に行ける。」

カントレルは警戒心を一気に強める。
ロシア関連の仕事を多くこなしてきた彼には、過去にも様々な怪しい人物からアプローチがあった。軍事が絡む航空宇宙の世界ではこういう時に気をつけねばならない。

「分かった。明日ソルトレイクシティー空港で国際便に乗る予定があるから、空港でなら会える。」カントレルはとっさに嘘をつく。空港のセキュリティ内であれば、この謎のマスクとかいう男が銃を隠し持つことはできないので安全だ。百戦錬磨の男が過去の経験から学んだことである。

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ジム・カントレル


その1に続く

これはおそらく嘘で、イーロンはこの時点ではそれほどの資産はもっていなかったはずだ。少なくともカントレルには自分がビリオネアだというハッタリをかましたらしいので、とりあえず会ってもらおうとしたのであろう。

**これはギリギリ9・11テロ以前だったので、航空券がなくてもデルタ航空のラウンジに入ることなどは可能だった。
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これは私がAcquiredのポッドキャストの内容を忘れないように、Facebook上でさわりだけを書いていた内容を再度加筆したものです。より深く調べるために、ウィキペディアやその他のインタビュー記事などをベースに、自分が面白いと思った部分をなるべくわかりやすく書こうとしています。しかしあくまで英語の他人の記事やまとめなどを使っているのと、たまに端折っている部分はあるのであしからず。フォーマルにするためには文献のソースを本来は網羅して入れるべきでしょうが、まぁ趣味の内容なので、そこまではしませんでした。出てくる人達の名前を検索でたどると大体すぐに出てきます。

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