イケメンじゃないのに女装してiPod貰った話
私の性格は捻じ曲がっている。
色々な物事を斜に構える傾向にあるのだ。
平々凡々たる家庭に生まれ、愛情たっぷりに育てられたにもかかわらず、この癖はいったいどこから来たのだろうか。
それは高校の文化祭で催された女装コンテストだ。
当時、私はそこまで偏差値が高くないくせに進学校を謳う、生徒数多めなマンモス私立校に通っていた。
そんなマンモス私立校も資金だけはあったようだ。
文化祭でメインプログラムの一つに女装コンテストがあったのだが、景品が豪華だった。
1位はPS3、2位はiPod、3位はディズニーペアチケットだったのだ。
我々の両親が高い学費を納めてくれていたが、その学費は女装した人間にゲーム機であるPS3を還元していたのだ。香川県は怒り心頭だろう。
当時、2007年頃の男子高校生は皆PS3やiPod欲しさにバイトをしたり、臓器を売ったり、ママ活をしていた。(一部虚偽あり)
私も例に漏れずに上記商品を欲したが、臓器を売ることに躊躇っていたところである。
「これは何としても女装し、PS3を手に入れ香川県を怒らせるしかねぇ!!」(メタ発言)
こうして私は友人と一緒に女装コンテストへ出場することを決めた。
ちなみに女装コンテストは各クラスから1組のみ出場が許される。
出場するような人間の情報は自ずと漏れて聞こえてくるものだ。
皆、ジャニーズ系の中性的な顔立ちを持つイケメンである。女装という疑似的性転換を行うにあたって中性的な顔立ちが有利なのは明らかだ。
しかし、お世辞にも私の顔立ちは中性的イケメンの類ではない。一方、一緒に出場してくれる友人はイケメンではあるものの体格がゴツい。イケメンのジャンルも中性的とは異なる。
この時点で我々は怒りのデス・ロードを歩み、PS3を手に入れるためには臓器を捧げなければならなかった。
しかし、それは断固拒否である。臓器は大切なのだ。(特に肝臓)
そこでどうすれば良いか作戦を考えた。
答えは同じ土俵で戦わないことだ。
皆が王道な女装で攻めてくるのなら、こちらは邪道な女装をするのだ。
具体的には、ババアの女装をすることにした。
よく考えてみて欲しい。なぜ女装といえば綺麗で若い女性ばかりなのだろうか。ババアだって女性なのだ。至極、ダイバーシティに沿う発想である。
また、女装コンテストはアピールタイムが設けられ比較的自由にパフォーマンスができた。
そこで我々はマキシマム ザ ホルモンの『ぶっ生き返す』をエアギターで弾いた。
女装において、ババアの恰好でハードロックをエアギターするのは正に邪道だ。
結果、それがめちゃくちゃにウケた。
他の出場者がみな正統派女装しながら引き語りやカラオケ、モノマネなどを行う中だったので抜群に目立った。高級な出汁から作られるラーメンが並べられる中で、化学調味料たっぷりニンニクマシマシな豚の餌になれたのだ。
結果は惜しくも2位だったが、イケメンを退け、全出場者が20組近く居た中での順位なので快挙だろう。
PS3は逃したが、当時ゲーム離れを起こしていた私にとってナウでヤングなiPodの方が魅了的に思えた。
「人と違うことをしたら最新のデバイスが手に入った・・・。」
こうして、差別化、逆張りに味をしめた私は後に2浪したり、留年したりして2020年7月現在無職ニートである。
人と違うことをするのは確かにメリットがある。
でも、ほどほどにしとこう。
もっと有益なことに使え。