人材データの民主化とは
先日投稿した「オープンバッジの可能性を考えてみた」の記事を、LinkedInにも投稿した際、LinkedIn側で書き足した所を転載します。
会社はその業務オペレーション(もっとも分かりやすいのは勤務管理や給与計算業務)のために社員から様々なデータを回収し、会社の人事システムに蓄積し管理しています。
そうして長年蓄積してきたデータのうち、組織人事情報管理、給与計算、勤務管理などの情報はひとつのシステムの中で体系的に管理されている一方、学習履歴、職務経験に関する履歴、さらには職場における様々な役割遂行歴などのデータは蓄積されるシステムも別々だったり、社員本人がアクセスするのも必ずしも容易ではなかったりします。
それでも、現状はLMS(Learning Management System)を使って学習履歴情報がようやく民主化(提供)されてきたところではないかと思います。他には目標設定・期末レビューなどのシートに書かれた情報がデジタル化されてクラウドに保管されていればそれが参照しやすく提供されてきているくらいでしょうか。
さて、経済学では1960年代から人的資本の所有者は会社ではなく社員であるということを指摘しています。
※この辺については『人的資本の論理』(小野浩著)が分かりやすく解説してくれていますので、ご興味ある方はぜひお読みになってください(^^♪
人的資本の所有者は社員であるということを踏まえて、「データを民主化するとはどういうことか?」が意味するところを考えると、本来の持ち主である社員が自身の目的のために再利用できるようにするということだと自分は考えています。
データの民主化は社員自身のキャリアの自律や主体的な学びに欠かせないものであると私は考えますが、一方では様々なデータをどのように提供するか、そこの方法の工夫も必要なのかなと思います。
利用しやすい形でデータを提供する方法の一つとして、改ざんできないNFTによるデジタルバッジによって発行管理するというのも一つのアイデアになるのではないかと思っています。
もちろん、NFT発行にはコストがかかりますから、そのコストを企業は負担しなければなりませんが、社員からのデータ提供があってこそ、データ・ドリブンの学習と成長の支援がテクノロジーで可能になるわけですから、社員から提供されたデータ=データ預金に利息を払うという考え方で、NFT発行コストを負担するということもありではないでしょうか。
なぜならば、何よりも会社が管理する人事業務(SoR)の上に、支援する人事業務(SoE)を築くためには後者のSoEに必要なデータを定期的に社員から提供して貰う必要があるからです。これらのデータは動的で、かつ、蓄積されることで得られるインサイトも変わっていきます。リッチなデータがあってこそ会社は社員の自律的/主体的な成長を支援し、それをチームや組織の力に転換し、最終的には業績につなげていくことができる。
会社と社員が互いに選び、選び合う関係を目指すならば、会社がデータを調達するコストをより明確に意識することも同時に求められてくると考えることもできるのではないでしょうか。