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人的資本経営で変わりゆく人事の役割

先週末の大学院のゼミで「資本」について改めて考える機会があって、気付きがありました。今回はその気付きから考えたことを記します。

「資本関係」にはそれを提供する側とその提供を受ける側がいます。これを「人的資本」で考えたとき、この人的資本という資本を提供しているのは誰でしょうか? 資本を提供しているのは社員、受け入れて事業活動を行っているのが会社(組織)と捉えることができると思います。

人的資本の提供者は社員。人的資本を受け入れて事業活動をしているのが会社。

社員と会社の関係は多くの場合「1対1」の雇用という関係にあるため、社員は自身が持っている”資本”の提供先は所属する会社に限定されてしまいます。つまり、選べないという状況にあります。しかしながら、いつの間にか兼業・複業(私は副業じゃなくて、こっちが好きです)と言われる時代になって、個人が複業できる時代になりました。もちろん、複業・兼業するということも個人の選択権の内にありますが、そういう時代の下では自分が持つ”資本”の提供先を個人は選べるということに注目したいと思います。

個人が選択権を持つと考えるから、その資本を会社に提供してもらうために、会社はエンゲージメント向上に取り組む必要が高まります。社員も選択できる状態にあるために、自身の”資本価値”を高める継続的な取組みが求められます。「個人と会社は互いに選び、選ばれる関係になる」ということはこのような緊張感のある関係になるということではないでしょうか。

一方、多様な働き方があっていい時代でもあります。全員がこのような緊張感が常に求められる働き方をしなくてもいい。生き方の選択として、会社が提供する”資本価値”向上を図れる機会を使って(=選択して)取り組むというのもありだと思います。

いずれにしても、
・働き手は自身の”資本”としての価値をどのように表現し、高めていくか?
・働き手はどのような自身の”資本”の提供の仕方を選択するか?
これを考えて時々、節目節目に選択すること、それが「キャリアの自律」や「学びの主体性」という「問い」へ「答え」を出していくことになるのかもしれません。

さて、会社はそのパーパスの実現や社会への貢献のために、様々な「資本」を必要とします。社員が持つ”資本”を会社に提供してもらうためには、その資本をどのように活用して何を実現するのかというストーリーや、その資本に対する配当についても説明する責任が会社にはあると考えます。そう考えると、人的資本の情報開示において開示先のステークホルダーには社員も含むのだという認識を持つことができます。

先日「人材情報に利息を付与するという考え方」を投稿しましたが、人的資本情報開示では社外のステークホルダーだけが開示先、コミュニケーション先ではない。実は、社内のステークホルダー、とりわけ社員を意識したコミュニケーション、情報発信がこれから大切になると思う次第です。
エンゲージメントや従業員体験価値の向上に取り組むという視点で「管理する人事から支援する人事へ」という方向も示されてきています。このように考えていくと、人事はいままで以上に「発信する人事へ」への転換を求められていくことになりそうです。

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