アセスメント大好きですか?
今回は、Linkedinの方でも投稿した
『各種アセスメント・ソリューション活用に関して思うこと』
について一部書き直して書きます。
広く心理学領域における学術的な研究成果を基にして各種のアセスメント。リーダーシップ開発プログラム、モチベーション状況を測るためのアセスメントなど、組織開発や人材開発領域での活用は随分前から進んでいます。最近では、採用プロセスでも活用されていますね。
このような人材マネジメントの目的で活用されるアセスメントテストはデータ・インテリジェンスベースのHRソリューションと言っていいでしょう。性格特性、リーダーシップ特性、価値観といった側面を、一定の構造化されたフレームワークで言語化(表現)することができることは人材マネジメントを科学的に実行していく上で欠かせません。
さらに最近はUIも含めて改善されたソリューションがどんどん出てきています。アセスメント結果のダッシュボードは最早当たり前、特に組織サーベイのソリューションでは結果に対する考察やおすすめのアクションなども示唆してくれるものも出ています。
どのアセスメントテストも提供するベンダー企業は学術分野の研究成果や理論をベースにしているので、その特徴を理解して目的に沿って適用することで企業はこのようなソリューションを人材マネジメント活かせるだろうと思います。
ただし、こうしたソリューションの活用において、忘れてはいけない視点があると考えています。割と忘れがちでもあると思うのですが、
(1)結果の本人へのフィードバック
(2)結果を活かすピープルマネジメント
この2点です。
最初の(1)が行われるべきと考えるのは、個人のデータ(個人情報)は個人の所有物であると考えるからです。個人情報の取得にはその目的と活用について伝える必要があります(個人情報保護法)。また、取得目的の範囲を超えて個人情報を活用することはNGです。個人が自身のデータ(アセスメント結果など)の持ち主は自分であるという認識を高めることは、やがて、ただ求められるままに、、、ではなく、自らを表現する”客観的なデータ”として他者(例えば応募先)に提出するといった行動がとられるようになると期待します。個人情報保護と個人情報の適切な利用という点でからも、これは企業の側だけでなく、個人もこれまで以上の「自分のデータである」ということを意識する必要が高まっていくと考えています。さて、企業(人事)の現場ではいまどのようになっているでしょうか。企業はデータを回収するばかりで、個人へのフィードバックを行っていないのが現状ではないでしょうか。
(2)の方は昨今の日本におけるアセスメント結果の活用が採用時の採否判断、企業カルチャーとの相性といった側面で応募者側だけのデータで判断してしまうということへの私個人の懸念です。例えば、採用プロセスでのアセスメントテストの結果の活用を考えてみます。そもそも多様性の尊重、多様性はイノベーションの源泉ということを意識すると、新しく参加するメンバーの特性や価値観を活かすアサインメント、パフォーマンスを上げていくための支援、日常のコミュニケーションといったピープルマネジメントのレディネスこそが大事であると考えます。個人とチームの両方のデータを揃えて観ることが大切なのに、応募者データだけを見て判断してしまうのではなく、受け入れる組織側のデータも見てみる必要はないでしょうか。
「人」の力の発揮度は組織のカルチャーやマネジメント、人と人の関係性が影響してくる、つまりパフォーマンスが影響されると思うと、採否判定にあたって応募者のデータだけを見てしまうことを懸念しています。受け入れる組織側のデータがないとその人を採用して「人を活かす」ことができるのかどうか、判断できないのではないかと思うのです。
人材マネジメントをデータドリブンで科学的に行うために、バランスよくデータを揃えて考察、思慮することが求められる。多様な「人」を採用できたとしても、その「多様」を受け止める組織が自らの組織の特徴を認識していて、これからどのような組織文化を築き、どのような価値観を大切にしていくか、をしっかり考えているかどうか。多様な「個」の力を発揮させることを意識した人材マネジメントをどのように実行しているのか、この点が問われると思うのです。
一方の応募者のデータだけを見て採否判定に活かすのではなく、受け入れる組織の特徴、マネジャーやチューターとの相性、特にその組織内のコミュニケーション、メンバー間の関係性の在り様を念頭に置いて判断することも重要ではないでしょうか。ある意味、これが相性を考えるということなのかもしれませんが、もう一方の受け入れる組織側が自己認識がないままの”相性”判断をしてしまうことへの懸念です。
また、人材採用における採否決定を人事だけが行っている組織であるとこうしたソリューションを活かすことが難しい。組織の現状を認識すべきは人事の役割ではなく、本質的にはその組織のマネジメントだからです。いかにこうしたソリューションを活用したとしても採用後の長い取組みとなる「人を活かす」マネジメントは現場で行われます。全社的に金太郎飴的な人材育成、活用をするならば従来通り人事だけが判断するという方法も有効かもしれません。しかし、それはそれで会社がビジョンとして「多様性の尊重」を掲げているとしたら矛盾していることになります。採用プロセスにも現場を巻き込み、そこにデータを活用していくことが「多様性を力に変えていく」ためにますます重要になると思うところです。
私は「人」も「組織」も変われるものだと思います。組織自体が「人」の集団であることから、その構成員が変わることで組織の特徴も変わっていく。そこにデータを使えば、より解像度を上げ、思い込みを避け、組織にいまあるアンコンシャスバイアスを認識した上で、人の力を活かす組織となることができる。
データを扱うHRソリューションの活用において、特に採用プロセスでの活用に関しては応募者側のアセスメントデータを表面的に活用してしまうと多くの企業が掲げる多様性の確保、尊重とは逆方向に作用しかねない。そのようなことも認識しながら、テクノロジーや学術分野の研究結果に裏打ちされたアセスメントを活用することが結果的に多様な人材が活躍する企業風土、文化を作って行ってくれるように思います。
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