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家の暖かさの指標 q値とは?

暖かい家を設計するためには、自分が設計した家がどの程度暖かいのかを知る必要があります。

暖房とは?

冬、外が寒いと部屋の中を暖房します。暖房をし続けると外が寒くても家の中が暖かいという状態が続くわけですね。

その時、熱は温度が高い方から低い方に流れる性質があるため、家の中から外に向かって熱が流れていきます。それをそのまま放置していると、家の中から熱が流れ出続け、最終的には家の中の温度もどんどん低くなって最後には家の中も外も変わらないということになります。そうならないためにも、家の中でエアコンやストーブを使って室温が低くならないために暖房しつづけます。

保温性能

この、家の中から外に熱が流れ出すスピード、量を、保温性能といいます。魔法瓶みたいな家は保温性能が良いため暖房を切ってもすぐに冷えないし、暖房する量も少なくてすみます。逆に保温性能が悪いと、暖房を切ったらすぐに部屋は冷え、暖房する量も多く、一生懸命暖房しないと暖かさをキープできない。ということになります。

つまり、暖房を切っても暖かさをキープできる家、あるいは少ない労力で暖かくできる家(つまり光熱費が安いということでもある)を設計するためには、室内から室外に逃げる熱、つまり保温性能を把握することが重要だ!と言えます。

外と中との温度差

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ここで、少々厄介な問題があります。家の中から外に逃げる熱は、外がどれだけ寒いのか?ということに影響を受けます。

同じ保温性能の家でも、あまり寒くない日には熱は逃げていきません。逆に、ものすごい寒い日があったとすると勢い良く熱は逃げていきます。従って、いろいろな家の保温性能を比べっこするためには、外の温度を、例えば0℃だったら0℃、10℃だったら10℃というように揃える必要があります。

ここで便利なことに、熱の逃げるスピードは温度差に比例するという性質があります(※1)。例えば、室内20℃、室外15℃のケースと、室内20℃、室外マイナス10℃のケースがあったとします。前者は温度差5℃です。後者は温度差30℃です。この場合、もし保温性能が同じ家だったとすると、前者に比べて後者は6倍熱が流れますよ。ということが言えます。

1℃温度差のときにどのくらい熱が逃げるか?

こういった便利な性質を活かして、そして、後々いろいろな計算に使えるように、温度差を揃えて、これまで習慣的に温度差を1℃として逃げる熱量を表しましょう!ということが決められてきました。これを「単位温度差あたりの外皮熱損失量」(q値)と言います。

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単位温度の、「単位」とは「1℃」を難しく言った感じです。1℃あたり、ということです。「冬なんか、1℃とは言わず20〜30℃くらい平気で温度差ついてるやん!」と言いたくなりますが、1℃の温度差あたりで整理しておくと、例えば室内外が20℃温度差がついている場合でもその値を20倍すれば良いので便利だよね。という発想です。

1℃の温度差あたり(単位温度差あたり)に逃げる外皮熱損失量、というネーミングは僕がつけました。今から思うと、もう少しセンスあるネーミングにすればよかったな。と思いますが・・・。ここで、外皮とは、英語で言うenvelope 何かを覆うもの、室内と室外を隔てるものという意味です。

単位をマスターする

ここで、少々難しいですが、熱という物理現象を扱う以上、単位が重要になります。1℃は温度の単位ですが、国際的な単位系では、℃ではなくてK(ケルビン)が使われます。1℃=1Kです(※2)。熱が流れる量を表す単位はW(ワット)です。脱線しますが、ケルビンもワットも、その単位を発明した人の名前です。ケルビンさんとワットさんです。「単位温度差あたりの・・・」の「あたりの」というのを単位では「/」(スラッシュ)で表します。従って、単位、W/K ワットパーケルビンと読みます。これは、日本語にすると、ケルビンあたりのワット、意訳すると、1℃温度差あたりの熱の流れ となります。このように、単位をマスターすると、だいたい、この値は何が言いたいんだろう?ということが慣れてくると見えるようになってきます。なかなかとっつきにくいですけど、一度習慣になると、「単位なしでは気持ち悪い!」という体質になってきます。(たぶん)

まとめ

暖かい家をデザインするうえで欠かせない指標、q値(スモールキューち)について解説しました。単位はW/K(ワットパーケルビン)です。1℃あたりの温度差がついたとき、家の中から外にどれぐらい熱が逃げるだろう?という指標です。この指標をマスターすることで、暖房を切っても冷めにくい家、暖房費を抑える家をデザインすることができます。

また、違う機会に、このq値の計算方法について解説したいと思います。

※1 厳密には材料の中の熱の伝わりやすさ(熱伝導率)や材料の表面の熱の伝わりやすさ(対流熱伝達率とか、放射熱伝達率、あるいはそれらをひっくるめて総合熱伝達率といいます。)は温度差がつけばつくほど少し上がります。しかしここでは、簡単のため、そして実務ではこの違いは無視しても良いレベルであるため、熱の流れは温度差に比例する、としています。

※2 ここでは温度差を論じているため1K=1℃としていますが、温度自体を表す場合、K(ケルビン)は絶対温度、℃は摂氏で表され、摂氏0℃は絶対温度では273.15Kです。摂氏1℃は274.15Kです。1℃増えれば1K増えます。従って、温度差で議論する限り、Kでも℃でも同じように扱うことができますが、温度そのものを扱う場合は273.15K=0℃ですので、少し注意が必要となります。

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