『アはアーケードのア』 第18回『ツタンカーム』(1982年コナミ)

左右にショットを撃つメイズ型スクロールシューティング

 『ツタンカーム』は探検家が主人公の迷路アクションゲームです。鍵を拾って扉を開けていき、遺跡に眠る財宝を探し出すことが目的となっており、左レバーで主人公の移動、右レバーで左右にビーム発射、上に入れると敵一掃のフラッシュ攻撃という、一風変わった操作系が特徴です。

 この時期のコナミの優れたサウンドが光るゲームで、その反響音を感じさせるSEは未踏の遺跡の探索感をとてもよく醸し出していました。少々大げさかもしれませんが、そこにはひんやりとしたホコリっぽい空間がどこまでも深く静かに広がっているような空気さえ感じられました。

 『ツタンカーム』では、ビームを左右方向にしか撃つことができません。そのため、縦方向の細い道はすきを見て通り抜けるか、回数制限のあるフラッシュ攻撃を使うしかありません。

 開発中のバージョンではビームを4方向に撃てたそうで、簡単すぎるとのことで2方向になったそうです。もちろんその制約を含めての『ツタンカーム』なのですが、若干理不尽に感じてしまうことはありました。4方向撃てることを前提にバランスを取る方法はなかったのだろうかと今さら妄想してみるのも楽しかったりします。

比較的珍しい左右のみのスクロールゲーム

 『ツタンカーム』のマップは、左右スクロールのみ。上下にはスクロールしません。これは同じくアーケードでいうと、『マッピー』や『ドルアーガの塔』などと同じ構造ですが、これらのゲームの大きな特長となっています。

 限定空間内での2方向スクロールは、固定画面ゲームのようにすべての状況が見えているわけでもなく、かといって全方向スクロールのような凝ったマップ探索でもなく、すべてがその中間になります。ともすれば半端になる危険もあるのですが、そこには個性的なゲーム性が生まれていたように思います。

 そのおもしろさはおそらく、限定空間の2方向スクロールゲームが固定画面ゲームの密度の濃い作り方をベースに、見えない画面外の情報を推測するおもしろさが付加されながらも、その範囲が限定的のため、全方向スクロールほどプレイヤーが多量の情報を処理する必要がない、というバランスにある気がします。

 『ツタンカーム』は、このころのゲームに多かった4ステージ構成で、最後にツタンカーメンのマスクを見事発掘し、ループに突入します。

 このゲームに限りませんが、プレイ時間が売り上げに直結するアーケードで、ただストイックに難易度が上がっていくだけの遊びが延々続いていくという当時のつくりは、今にして思うと(あえて愛情を込めていえば)じつに雑なもので、それは黎明期だけに許された素晴らしき大らかな世界でした。

当時のコナミのゲームには“洋ゲーっぽさ”があった

 この時期のツインレバーゲームと言えば、『リブルラブル』『クレイジークライマー』『空手道』等が有名ですが、『ツタンカーム』は2本を移動とショットに割り当てているという点で、Williams『Robotron2048』辺りを彷彿します。当時日本のゲームでこういう操作系はまれでした。

 同じくこの時期のコナミに『ジュノファースト』というシューティングゲームがあったのですが、これは『ツタンカーム』よりも、さらに洋ゲーテイストが色濃く出ています(具体的には『Defender』をもっとも彷彿します)。エフェクト、SE等々、当時の日本のゲームの中では異彩を放っていました。

 『ツタンカーム』や『ジュノファースト』が生まれた経緯をぼくは知りませんので、まったくの想像なのですが、このころのコナミは海外のゲームをどこよりもよく研究していたように感じます。元々あったそうした好みやセンスが『グラディウス』辺りで花開いたということなのかもしれません。 了

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