『アはアーケードのア』 第11回『ザクソン』(1982年セガ)

セガが放った立体的視点のシューティングゲーム

 『ザクソン』は斜めの見下ろし視点で、敵基地へと進攻していくSFシューティングゲームです。

 戦闘機で敵基地深くへ進んでいく構成や、地上物と空中物という概念があること、そしてタンクを撃つことで燃料が補給される仕組みなど、前年のコナミ『スクランブル』の影響が色濃く出ているゲームだったように思います。

 ですが、当時のゲームのほとんどは、真上や真横からの視点を採用しており、『ザクソン』のような立体的な視点のゲームはとても珍しいものでした。もっというと、真上から見ている風なのにキャラクターは真横から見た絵になっていたり、そういうおおらかな見せ方のゲームもごく一般的な時代でした。

攻略にはXYZ3軸の把握が必須

 『ザクソン』の視点は、クォータービューもしくはハーフサイドビューなどと呼ばれていました。それらのゲームの多くは、等角投影法視点だったように思います。

 操作は、平面の軸をXZ(奥行きがZ)、高さの軸をYとすると、8方向レバーがXYの動きに対応しています。まずこれが多くの人には(ぼくもでした)なかなかわからない。理解するのが難しいゲームだったと思います。

 1ループの流れは、敵宇宙基地→宇宙戦→敵本拠地→ボス戦というエリア構成になっています。考え方としては、徐々に空間、特に高さの概念を理解させて、攻略を進めていく構成になっています。

 敵宇宙基地では、地表に接近して地上物を叩くことを学習し、宇宙戦では敵機と高さを合わせての射撃が求められ、敵本拠地では一点突破で高さを合わせてバリアを抜けていくことが必須になります。最後のボス戦では、XY軸をほぼ一点で合わせないと、敵のミサイルが撃ち落とせません。

 このように全エリアにわたって空間把握することが求められるのですが、個人的には、中でも宇宙戦が大変だった覚えがあります。目安になる地表が存在せず、敵機も移動中に高さを変えてくるので苦労しました。

 ただ、プレイしているうちに見方が理解できるようにはなりますし、敵ギミックに合わせて高さを合わせることで攻略の大半が済むともいえるゲーム性になっているので、そこがわかると、後は比較的簡単に進むゲームだったともいえます(少なくとも1ループする上では)。

 『ザクソン』のインストラクションカードには、最終目標であるボスのドット絵が描かれており、ぼくはこのボスに会いたくて、相当頑張ってプレイを重ねた覚えがあります。黎明期のスクロールゲームには、その先を見たいと思わせる強烈な何かがありました。

 当時はスクロールという概念自体が新鮮で、そこにはまさに未踏の地を進んでいく感覚がありました。ほとんどのゲームでコンティニューシステムがなかったということも大きかったと思います。実際には、その先にそれほど多くの要素が待っていたわけではなかったのですが、当時はそれで充分でした。

 ちなみに、後に『ザクソン』と同じ画面構成を使った姉妹作ともいえる『フューチャースパイ』では、操作がXY→XZ平面移動に変わっています。遊びはわかりやすくなりますが、独自性という点で『ザクソン』の方が好みでした。

画面に広がる三次元世界、それは“未来”だった

 ポリゴンが一般的になる以前、ハーフサイドビューは、立体的で特異なゲーム性を生み出す貴重なシステムだったといえます。このほかにも『ティップタップ』『Crystal Castles』『Marble Madness』『アウターゾーン』『マービンズメイズ』など、他と一線を画する魅力的な作品がいくつもありました。

 中には、基本的な仕組みを作ったところで、やや力尽きた感じの作品もありましたが、それでも当時のハーフサイドビューには“未来”が垣間見えた気がするのです。二次元モニタの中に箱庭のような三次元世界が広がっている、そんなセンス・オブ・ワンダーが感じられました。 了

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