『アはアーケードのア』 第15回『ソニックブラザーズ』(1992年セガ)

発売されなかった幻の落ちものパズル

 『ソニックブラザーズ(Sonic Brothers)』は、『バブルボブル』や『サイバリオン』『オメガファイター』等の企画で知られる、MTJこと三辻富貴朗さんのディレクション作品です。同氏がセガに企画を持ち込んで開発されたのですが、ロケテスト段階で没になり、残念ながら市場に出回ることのなかった幻のゲームです。

 ぼくも数回遊んだだけで記憶がかなり曖昧なのですが、なかなかこういう思い出を書く人もいないと思うので、覚えている範囲で記述してみます。もしご存知の方がいて、以下の内容に誤りがあればご指摘いただければ幸いです。

ソニックが登場する“囲み”ゲームとは?

 内容は『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のキャラクターを使用した落ちものパズルです(『テトリス』や『ぷよぷよ』のような)。

 丸まったスピンアタック状態のさまざまな色のソニックが、「田」の字型の4個セットで落ちてくるので、これを回転させてフィールドに積んでいき、同色のソニックで他のソニックを囲んで消していくという遊びです。

 この際、同色でぐるりと閉じた輪を作って囲まなくても良く、フィールドの外壁を使って囲みます。主に起こり得る場合を図で書くと、以下のようになります。■(同色)で囲むことで、その中の◯(色は何でも良い)が消えます。

底辺を使って囲む
□□□□□□
□■■■■□
□■◯◯■□
□■◯◯■□

底辺と片側辺を使って囲む
□□□□□□
■■■■□□
◯◯◯■□□
◯◯◯■□□

底辺と両側辺を使って囲む
□□□□□□
■■■■■■
◯◯◯◯◯◯
◯◯◯◯◯◯

 底辺を使わずに囲む(輪を作るなど)ことも許されたのか、また、一回のブロックの落下で、二重に囲んだり、二箇所同時に囲むこともできると思うのですが、その場合どうなるのかなど、ちょっと記憶が定かではありません(おそらくどの場合も消える判定がなされると思うのですが)。

“囲むゲーム”は難しい?

 パズルゲーム好きな方なら、想像していただけるかと思うのですが、ゲームとしては少々苦しいというか、難しかったです。一度置き方を間違えると計画が一気に台無しになるので、立て直しがとても難しいのです。降ってくるブロックが4個単位と多いのも、また大変でした。

 囲んだ中の色は何でも良いので、攻略としては、どの色に注目してゲームを進めるかが大変重要になります。捨てるところと絶対に捨ててはいけないところの差が激しく、ある意味大味で、ある意味緻密な、極端な作りのゲームという印象でした。

 落ちものに限らず、ゲームに「囲む」という概念を取り入れると、遊んでいて、(ルールによりますが)境界の内外の状況を把握しながら、境界線の軌跡を追っていく必要もあり、常に広範囲に目を配らないといけない難しいゲームになりがちです。その着想を製品まで育てるのはなかなか大変です。

 『ソニックブラザーズ』について、ぼくが覚えているのは、これぐらいです。『コラムス』でいう魔法石のような、救済アイテムの類いもおそらくあったと思うのですが、失念してしまいました。

 『ソニックブラザーズ』のアイデアがより洗練されたものがタイトーの『クレオパトラフォーチュン』のように思います。囲む部分のアイデアはよく似ているのですが、囲む側と囲まれる側とでパーツの役割を分けたことで、とてもわかりやすい遊びに昇華されています。

 MTJ三辻さんの企画の特長は、キャッチーなワンアイデアからスタートして、仕様上の多少の問題点を剛腕でねじ伏せる力強さにあったと思います。

 ただ、こうしたシンプルなパズルゲームは、装飾や調整も重要ながら、要素が少なくシンプルな分、それ以前のアイデア一発で決まる部分が大きいこともまた特徴で、そこに難があったともいえる本作は、残念ながら発売に至ることができませんでした。

 繰り返しになりますが、ぼく自身数回しかプレイしたことのないゲームで、資料もなく、ルールなど記憶違いがあるかもしれません。ご存知の方がいればご一報いただければと思います。

 『ソニックブラザーズ』をもう一度体験する機会がないことを残念に思います。同じ仕組みでプログラムを組んでみるというのも一興かもしれません。 了

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