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「厚生年金ハーフ」という話


勿凝学問414

いわゆる、年収の壁との関係で、厚生年金ハーフという言葉を、ちらほら目にするようになってきた。
・(有料記事)「年収の壁に対応する「厚生年金ハーフ案」が浮上――「厚生年金フル」との選択制で就業調整を回避」藤森克彦氏『東洋経済オンライン』2023年5月24日
・「いわゆる「年収の壁」問題は「手取りの段差」を埋めるだけで解決するのか?」マネーリテラシ-総研『note』2023年4月2日

「厚生年金ハーフ」というこの言葉は、今年(2023年)3月28日の社会保障審議会年金部会で話したときに使った言葉である。

第2回年金部会(3月28日)での発言

この日は、zoom参加であった。下記の2点目に厚生年金ハーフがある。

○菊池部会長 それでは、権丈委員、お願いできますでしょうか。
○権丈委員 2点ほどです。
 2つとも構築会議の報告書関連ですので、資料2を準備していただければと思います。
 まず、資料2の2ページの1つ目の黒星に「『時間軸』の視点」とあります。

第2回社会保障審議会年金部会 議事録
資料2 全世代型社会保障構築会議報告書(抜粋)

 これは、もともと去年3月の第2回(全世代型社会保障)構築会議で、次のような発言があったわけですが、
「例えば遺族年金などは、現在受給している人たちに全く影響を与えることなく、将来のコーホートに最適な制度に向けて、20年ぐらいかければ移行を完成することができます。 今回の構築会議では、コーホートにおける種々の変化を先読みして織り込んで、改革を時間軸の中で明確に位置づけて、これまで動かなかったものを今度こそ動かすようにしてもらえればと思っています。」
この発言が、オリジナルの時間軸の使い方です。時間軸をもって遺族年金を変えていく。 
今回の年金部会では、そうした意義のあることにしっかりと時間を費やして、遺族年金の改革を実現してもらいたいと思っています。 

2点目です。
資料2の4ページの下から2段落目に、20時間未満の短時間労働者についても、被用者保険の適用除外となっている規定を見直し、適用拡大を図ることが書かれています。その下の行に「国民年金制度との整合性等を踏まえつつ」とあるわけですが、この整合性を踏まえると、20時間未満に関しては、厚生年金の事業主負担のみを課す形になるといいますか、そうならざるを得ません。

第2回社会保障審議会年金部会 議事録


資料2 全世代型社会保障構築会議報告書(抜粋)

実は、岸田総理が政調会長だったときにまとめた報告書にある勤労者皆保険、当時、彼らは勤労者皆社会保険と呼んでいたわけですが、勤労者皆保険は、20時間未満に関しては、事業主負担だけを課す制度の話でした。 
今、厚生年金の事業主負担のみで、給付は厚生年金の半分になる制度を厚生年金ハーフと呼んでおきたいと思います。 
厚生年金ハーフを20~30時間のパート労働者に当てはめて、彼らに本人負担を含めた厚生年金フルと、厚生年金ハーフを選択するという形にすれば、今騒動が起こっている、壁だと信じ切って、就業調整をしている人の問題はほぼ解決します。 
ちなみに、構築会議の報告書では、5ページの4つ目の黒星にあるように、就業調整に関しては、一層の適用拡大と被用者保険への加入の意義の広報の充実しか書いていません。 
しかし、みんなが壁と誤解して意識して、それに基づいて行動しているというのであれば、広報の充実と並行しながら、先ほど言った20~30時間のところに厚生年金ハーフを準備して、彼らに、社会保険料の本人負担分を払わないで、今の手取りを高める選択をしてもよいけれども、それは老後の貧困リスクを高める選択であることを学んでもらうことも必要になっているかと思っております。 
今から12年ほど前の2011年2~3月にかけて、運用3号という問題で世の中は大変盛り上がっていました。それがあまりにも不公平な制度であったということで、その制度の制定に関係した課長の更迭というトカゲの尻尾切りのような事件が起こりました。 
この国では、3号を優遇すると、大炎上します。そのことを分かっていない新しい人たちが永田町にも増えてきたのだろうと思って、今の様子を見ています。 
いわゆる壁と言われているものをなくすために、年金財政から補助金を出すことなど、年金局の人たちが進んで考えるわけがないのですが、報道を見れば、厚労省が前向きに動いているという話になっている。 
今日もそうした案が出てくるのではないかと、フロアの人たちは、大いに期待されているのではないかと思いますが、今言われている補助金の話は、3号は、基礎年金だけでなく、法律上は2号も3号も国民年金の保険料は免除されているわけですが、加えて厚生年金保険料の本人負担分を補助金という他の人のお金で埋めてもらって、厚生年金をフルで受け取ることができるようにするという3号への特別な優遇措置です。 
そういうことにみんなが気づいていったら、運用3号のときのように大炎上するだろうと思いますし、今度は課長ではなく、局長あたりが更迭されるのではないかと私一人で心配しております。
年金局の方々は、くれぐれも気をつけながら対応していかないことには、この話はかなりやばいぞというのがあります。以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。 今、会場では、非常に大きな反響が沸いておりました。

第2回社会保障審議会年金部会 議事録

当日のようす


この日は、16時から18時が年金部会。その前の、15時から16時半が東京都のくらし方会議。都庁での会議を終えてから年金部会の会場だった新橋まで出かけると、年金部会は終わる時間だったので、くらし方会議終了後、都庁に部屋を借りて、年金部会はzoomで参加――その時の部屋からの景色は、こんな感じだったかな。。。

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