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建築映像作家の仕事 vol.2 建築の活動

建築映像作家の瀬尾です。
フリーで建築の映像(動画や写真など)を作る仕事をしています。2017年に活動を始め、2024年現在で7年目になります。これまで、建築に関連してさまざまな映像を制作してきました。ウェブサイトにそれらの仕事はまとめてきたのですが、改めて整理することでより多くの人に活動を知ってもらいたいと思い、この記事を執筆しています。全部で大きく4回に分けて記事を更新していく予定です。


vol.2 建築の活動

前回の記事では、建築のかたちに焦点をあてた仕事を紹介しました。第二回にあたる今回は、建築の設計や施工、使われている様子など建築にまつわる活動に着目した映像の仕事を紹介します。この章で語られる内容においては、私がガラージュで行なっている活動も関わってくるので、最初にガラージュについての説明を挟みます。

ガラージュでの活動について
2020年、小田切駿(建築家)、渡辺瑞帆(セノグラファー/建築家)と私の3名でガラージュという建築コレクティブの活動を始めました。ガラージュは建築という領域を共有しつつ、異なる専門分野を持った3人が共同することで、建築設計に限定されない建築的活動を行なっています。具体的には、建築の設計、セノグラフィー、映像作品の製作、フィールドワーク、フェスティバルの開催など多様な活動が展開されています。


2-1.建設と解体

作品事例:記録映画『現場日記』
象設計集団の設計による住宅「ドーモ・キニャーナ」の改修をガラージュで担当しました。施主との会話を通して行われる設計の活動、改修に伴う複雑な既存建築物の部分的な解体の様子、細かな調整が求められる現場の状況を記録した記録映画を製作しました。刻々と変化する現場を状況を記録するため、撮影は現場監理担当者が行うころになりました。複数名が入れ替わり撮影を担当するため、簡易的な撮影が可能で、且つ撮影者ごとの違いが現れにくいカメラとしてiPhoneのカメラアプリを選ばれました。集まった100時間ほどの映像素材から編集を行い、最終的に52分のドキュメンタリーとしてまとめられました。(完成した映像作品は2023年U35 architects exhibitionで上映された)

『現場日記』スチル写真

事例:中間アヤカ『踊場伝説』
KYOTO EXPERIMENT 2023にて、ダンサーの中間アヤカによる『踊場伝説』のための仮説劇場をガラージュで担当しました。この劇場は一連のイベントの最終日に観客や出演者、街の人々に見守られながらパフォーマンスの一部として解体されました。建設された舞台だけでなく、建設・解体のプロセスを含めてデザインされた劇場の一部始終を、写真と動画によってを記録いました。(動画は現在編集中。)
ガラージュによる作品の詳細はこちら

中間アヤカ『踊場伝説』2023年
セノグラフィー:ガラージュ
建設された舞台
中間アヤカ『踊場伝説』2023年
セノグラフィー:ガラージュ
建設中の舞台
中間アヤカ『踊場伝説』2023年
セノグラフィー:ガラージュ
解体される舞台

また、設営された舞台下は展示空間となっており、その一部をお借りして、このプロジェクトのコンテクストとして重要な意味をもつ周辺地域の記録写真の展示を行いました。

周辺環境の記録写真


2-2.パフォーマンス

事例:ゲッコーパレードによる演劇
ゲッコーパレードは埼玉県蕨市の木造一軒家「旧加藤家住宅」を本拠地とする劇団である。彼らの演劇作品は非劇場空間を会場として用いることを特徴の一つとしている。住宅や博物館、ときには工場といった場所を会場とし、演劇作品の製作を続けている。そんな彼らの演劇作品の記録撮影では、役者のみに注目するのではなく、空間的な演出を含めた記録撮影を行っている。

ゲッコーパレード『ハムレット』
会場:旧加藤家住宅
2017年
ゲッコーパレード 『病』
会場:旧加藤家住宅
2020年
ゲッコーパレード『リンドバークたちの飛行(早稲田大学演劇博物館)』
会場:早稲田大学演劇博物館
2018年


事例:JK・アニコチェ×山川 陸 『sand (a)isles』
『sand (a)isles』はJK・アニコチェ×山川 陸が演出・設計を行なった都市を巡るパフォーマンス作品です。参加者はガイドの案内に従いながら、都市を身体的に読み解いていきます。そうした集団の身体と都市との関係性を写真という方法で記録を行いました。

演出・設計:JK・アニコチェ×山川 陸
『Sand (a)isles』
2019年
演出・設計:JK・アニコチェ×山川 陸
『Sand (a)isles』
2019年
演出・設計:JK・アニコチェ×山川 陸
『Sand (a)isles』
2019年


事例:はならぁと「喜楽座の復活祭」
「奈良・町家の芸術祭 はならぁと」は奈良県で行われている地方芸術祭です。2019年に開催された「はならぁと」の宇陀松山エリアでは築120年越えの使われなくなっていた木造芝居小屋「喜楽座」を中心に、複数組のアーティスト、劇団などによるパフォーマンス作品などが発表されました。その様子を動画・写真の方法で記録を行いました。

関川航平『心臓ら』

Aokid『草木土上から聞こえてくる”むかしばなし、しんばなし、いまばなし”から。』
アムリタ『ひかりのわかれる』


芝居小屋シェアハウス
ガラージュで改修設計を担当した芝居小屋シェアハウスは、演劇学生のために設計されたシェアハウスです。住居としての機能だけでなく、芝居小屋をイメージした吹き抜けのあるアトリエを中心に抱えた実験的なシェアハウスになっています。竣工後も、住民である演劇を学ぶ学生たちとともに、パフォーマンス作品や映像作品の共同製作を行ってきました。

事例:『embodiment』
住民となる学生たちが、改修前の民家を見学する時点から、改修が終わり仕上げとなる塗装を自らの手で行うことで、建築を身体化していく過程を追ったドキュメンタリー。

事例:theater piece
額田大志(ヌトミック東京塩麹)をゲストに迎え、住民の学生たちと行ったワークショップ『家をならす』から生まれたパフォーマンス作品を映像化した作品。パフォーマーたちの動きを通して、空間の特徴的な部分が可視化されていきます。


3.デザイン活動

事例:建築模型展
「建築模型展ー文化と思考の変遷ー」は寺田倉庫WHAT MUSEUMで行われた建築展です。建築模型が建築の設計、プレゼンテーション、施工検討などのさまざまな場面でどのように用いられているかを、その歴史的背景から解説を行う展示となっていました。私は展示映像の制作と会場記録写真・映像を担当していました。建築家、模型制作所、歴史家を取材し、インタビューによる語りと制作風景からなる展示映像の制作を行いました。

展覧会紹介動画

Vuildを取材対象とした展示映像の切り抜き
shopbotなどの加工機器を用いて、製作するプロセスとその背景にある思想を取材しました
suzuko yamada architect を取材対象とした展示映像の切り抜き
事務所に半日お邪魔して、模型を囲んでのスタディ風景を取材させていただきました

寺田倉庫では、この他にも「謳う建築」、「構造展 -構造家のデザインと思考-」、「ガウディをはかる」などさまざまな展示映像を担当させていただいております。2024年7月現在開催中の「感覚する構造 – 法隆寺から宇宙まで –」では、展示映像(一つを除く)を担当させていただいております。そちらも是非ご覧いただけますと幸いです。


喜界島フィールドワーク
喜界島建築フィールドワークはガラージュの「100年かけて劇場をつくるプロジェクト」の一環として行われている研究プロジェクトです。全国から集まった学生とともに、実測調査、模型制作、ヒアリング、ファウンドフォトなど多様な方法を通して、この島の建築についてリサーチを行なっています。これまで2022年度と2023年度の2回、開催されました。

2023年度 喜界島建築フィールドワーク
予備調査の様子

事例:プロジェクションマッピング
2022年度のフィールドワークでは島全体の模型(s=1/10000)を制作しました。最終発表会では、研究者の方からいただいたデータを用い10万年前から10万年後の海水準の変化をプロジェクションマッピングを行いました。立体的な映像を前にして、島民や研究者の方々の口からさまざまな語りが生まれました。

2022年度 喜界島建築フィールドワーク
発表会の様子


最後まで読んでいただきありがとうございます。
vol.2では、「建築の活動」に着目した仕事をピックアップしました。vol.3は「建築の人間」に焦点をあてた仕事をご紹介します。

さいごに
建築に関わるさまざまな映像の製作を行なっています。
お仕事の依頼お待ちしておりますので、気軽にご相談ください。
info(at)kenjiseo.com

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