『JAZZ』★★★☆☆(3.4)-音楽購入履歴#12
Title: JAZZ(1978)
Artist:Ry Cooder
Day:2024/3/1
Shop:KANKO RECORD(kobe)
Rating:★★★☆☆(3.4)
スライドギターの名手ライクーダー
ライ・クーダーといえばルーツ系ギタリストで、スライドギターの名手。
アメリカがルーツロック化に舵を切った70年付近にはライクーダー含めてデュアンオールマンやローウェルジョージといったブルース系スライドギターヒーローが多く誕生してるわけだけど、
僕はオールマンもリトルフィートもほとんど通ってなくて。
とにかく僕はブルースにハマらなくて、ローリングストーンズだってほとんどちゃんと聴いてないくらいだから、もちろんライクーダーなんて聴いてきたはずもなく。
あ、『Let It Bleed』はめちゃくちゃ大好きなんです。それで、『Let It Bleed』ってライクーダー参加してたよなー、って調べてみたら〝Love in Vain〟でマンドリン弾いただけねのね。
この『Let It Bleed』の時のキースを除いたストーンズメンバーとのセッション『Jammig With Edward』の印象が強いけど、本編ではそんなに弾いてないのね。
もっとがっつり参加してるイメージだったけど、意外でございました。
まぁなんにしてもライクーダーは僕とは遠く離れた人だったんです、ずっと。
Joseph Byrdプロデュース
それでもこの度『JAZZ』を手に取ったのは、ちょうどこの前Joe Byrd&Field Hippiesのアルバムを買ったからで。
このnoteでも書いたけど、僕はジョーバードの最初のバンドであるThe United States Of Americaがアメリカンサイケで1,2を争うくらい好きで。
そんなことで前々からジョーバードが70年代後半にライクーダーのアルバムをプロデュースしてる事実は知っていたんだけど、なかなか聴けず仕舞いという状況で。
それがこの間ジョーバードのもう一つのプロジェクトであるField Hippiesを買って聴いたタイミングで、そのライクーダーの『JAZZ』のLPを見かけたもんだから
「これがタイミングというやつですな」
と持ち帰ったわけです。
それでこの『JAZZ』を聴いたんだけど、
ほんとうにタイミングというのはあるなぁとしみじみ。
というのも、
「ジョーバードは最初期のエレクトロ音楽家として有名だけどField Hippiesはアメリカンポピュラー音楽ルーツな方向性を強く持っている」
ということをField Hippiesを聴いた感想として持っていて、
だから『JAZZ』がそのタイトル通り古いジャズを扱ったアルバムであることに全く違和感を感じず、すんなりと聴くことができた。
Field Hippiesを聴いたタイミングじゃなければ
「ジョーバードがプロデュースしてるってことは電子とライクーダーのコラボレーションが聴けるのか!!」
と思っていただろうし、その予想と違ったことにショックを受けていただろうし。
タイミングで耳に入る入らないはあるんです。面白いですよねー。
↑Field Hippiesの回↑
南部ルーツとアメリカポピュラー音楽ルーツ
僕はブルース含めて南部ルーツに疎いのはさっき書いたとおりだけど、この70年代付近は「アメリカポピュラー音楽ルーツ」にも立ち返る動きがあって、僕はそっちに近頃興味津々で。
ビーチボーイズやソフトロック勢やこの間書いたジョンセバスチャンのラヴィンスプーンフルだったり、その辺のアメリカンロックの背景には初期アメリカポピュラー音楽があることを知って。
「バロックポップ」だと思っていた多くのアメリカ音楽も、バロック音楽を引用したのではなく、ジャズとクラシックを融合させて生まれた20年代、30年代のアメリカポピュラー音楽からの影響だったり。
よく『ペットサウンズ』の凄さについて語られることがあるが、僕はこの要素を60'sポップ/ロックと完全に調和させたことがブライアンウィルソンの成し遂げたことだと考えていたり。
そして『ペットサウンズ』に続いて60年代後半により「アメリカポピュラー音楽ルーツ」に接近したのがレニーワロンカーがプロデュースしたバーバンクサウンドだと考えている(あとニルソンね)。
ライクーダーはそんなバーバンクサウンドの一員として70年にレニーワロンカー&ヴァンダイクパークスによるプロデュースでリプリーズからデビューしてるわけなんだけど、
実は70年代に差し掛かるころにバーバンクも南部ルーツへの方向へと変わり始めていて。
(この辺のことは以前ブログでまとめたのでよければ↓)
60年代末のバーバンクサウンドはヴァンダイクパークスやランディニューマンといった才能を使ってハーパーズビザールやボーブラメルズのアルバムで古いアメリカポピュラー音楽を蘇らせたアレンジを施したわけだけど、
70年代になるとライクーダーをはじめ、リトルフィートやドゥービーブラザーズといった南部ルーツ系の音楽を作り出していくことになる。
そんなわけで、知っての通りライクーダーはアメリカ南部ルーツとアメリカポピュラールーツのどっち系かというと言わずもがな南部ルーツ系のミュージシャンなわけで。
そんなライクーダーがジョーバードの手によってアメリカポピュラールーツに接近したのがこの78年の『JAZZ』ということである。
僕はファーストを少し聴いたくらいで、ほとんどライクーダーを聴いてないけど、おそらくこのアルバムはライクーダーの中で特殊なアルバムなのだろう。
なんせアルバムジャケットに
「Arranged&Conducted by Joseph Byrd」
ってわざわざデカデカと書いてるんだもん。
アルバム概要
ライクーダーが歌うのは3曲のみで、後は全部インスト。
曲はディクシーランドジャズやラグタイム、バハマのギタリストジョセフスペンスが編曲した宗教歌、「クーンソング」など。
このクーンソングなるワードを初めて目にしたので調べてみると、「クーン」とは黒人を指すらしく、ミンストレルショーで歌われた曲であるらしい。
ミンストレルショーは白人が黒人を演じて歌ったりして黒人の生態を笑うとんでもない差別ショーであるが、
僕の解釈ではクーンソングというのは白人が思いえがく黒人音楽、ということらしい。黒人自らが生み出した霊歌とかとは区別して考えたほうがいいのかな???ちょっと難しいです、勉強必要。
なにやらティンパンアレーとクーンソングには切っても切れない深いつながりがあるようで、同時期に流行り混在していったとかなんとか。
ブロードウェイで歌われた歌とミンストレルショーで歌われた歌が同時期に流行歌として普及していた、ということでいいのかな??
つまりは南部ルーツは黒人音楽であるが、アメリカポピュラー音楽は白人がイメージする黒人音楽である、ということなのだろうか。ちょっと断言するには知識が足りなさすぎるが、すんごい歴史的、差別的背景がそこにある気配に満ちておりますな。
何にしても20世紀初頭のアメリカ音楽をこの『JAZZ』でライクーダーは演奏していて、そのアレンジと指揮をジョセフバードがとったということ。
この頃の音楽ってのは、まぁジャズなので、リード楽器は管楽器だったりなんだろうけど、そんな音楽をギター中心で表現してるのがこのアルバムの面白いところでしょうか。
あと全編にわたってマンドリンのトレモロがわりとずっといます。
そのマンドリンでサポートしてるのがデヴィッドリンドレーって人物で。
主にジャクソンブラウンのバンドのギタリストとして有名らしくて、これまたスライドギターの名手でライクーダーと似たようなプレイスタイルみたいなんだけど。
このデヴィッドリンドレーですが、元々米サイケバンドkaleidoscopeのメンバーなんですね。びっくりです。
kaleidoscope、聴いてなくて、これを機にサブスクで聴いてみたらめちゃくちゃいいですね。
kaleidoscopeを聴いてないのには理由があって、僕は英kaleidoscopeが結構好きなんです。〝The Sky Children〟って曲にやられまして。
それで米kaleidoscopeは紛らしい存在、ってことで放置してたんですよね。
同じように米Smokeが好きだから英Smoke聴いてなかったり、英スパイロジャイラ好きだから米スパイロジャイラ無視してたり。
そんなしょうもないことで通り過ぎてちゃもったいないということを教わりました。
米kaleidoscope、のちにニッティー・グリッティー・ダート・バンドに参加するメンバーもいたり、カントリーでフォーキーなのにサイケってゆー面白さ。ハマりそうです。
では『JAZZ』から何曲か貼っときます。
ジョセフスペンスが編曲した古い宗教歌。
めっちゃいいです。
バハマのギタリストであるジョセフスペンス、全く知らないのですが、グレイトフル・デッドも取り上げたりしてるみたいで、また聴いてみようかと。
ラグタイム。ピアノの旋律をギターとマンドリンで表現。
ティンパンアレー。
ルイアームストロングとかもカバーしてる曲みたいだけどこれがクーンソングにあたるらしい。途中のマリンバが最高。ライクーダーの素朴な歌もいいですわね。
全体的に非常に聴き馴染みがよくてアメリカ音楽の素晴らしさがつまったアルバムです。
ただやっぱ僕はギターって楽器がそこまで好きじゃないのかも。自分が上手く弾けないってのがでかいんでしょうな。笑
いやでもほんとにいいアルバムです。ブルース臭のしないライクーダー、いいですねー!
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