(詩)われわれは迷うことができる

われわれは迷うことができる
いつであってもどこであっても

われわれは迷うことができる
誰かにせかされ求められることもなく

われわれは迷うことができる
ひとりで みんなで 離れていても

われわれは迷うことができる
善いことか悪いことかを捨ておいて

われわれは迷うことができる
迷いのなさをあこがれのように眺めながら

われわれは迷うことができる
選択肢がひとつでも 手を伸ばすことに

われわれは迷うことができる
晴れることのない嫌悪をかかえようとも

われわれは迷うことができる
ただのモラトリアムであることを否定して

われわれは迷うことができる
手持ちの余裕と猶予をすべて賭けてでも

われわれは迷うことができる
必死さに見合ったむくいも気にせずに

われわれは迷うことができる
たどり着くところが求めた場所でなくとも

われわれは迷うことができる
結果を責める者をかえりうちにして

われわれは迷うことができる
展開と結末を自己満足で抱きしめて

われわれは迷うことができる
ゴールの一歩先からまた迷おうとも

われわれは迷うことができる
プロットだけで足踏みする未完の推理小説

われわれは迷うことができる
冷蔵庫の残り物をかたづける休日の昼食

われわれは迷うことができる
渡せなかった書き直しだらけのラブレター

われわれは迷うことができる
長いものに巻かれおもねるわが身のおき方

われわれは迷うことができる
見知らぬこどもたちに残す未来の余地

われわれは迷うことができる
これまでの迷いの重さを引きずって

われわれは迷うことができる
迷いつつ生きたという唯一の事実とともに

われわれは迷うことができる
迷うことを生きることと言いきるほどに

われわれは迷うことができる
それが所与のものであるかのように

われわれは迷うことができる
迷うことに迷う必要などないように

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