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私的詩手帳

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_人人人人_ > 突然の詩 <  ̄Y^Y^Y^Y^ ̄
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2022年11月の記事一覧

(詩)おやすみのかたまり

寝息のかなでる子守唄の
やさしい矛盾をひきうけて
夜は虹色のうすい膜をひろげ
ふくれあがり息をする
ほら眠る子の頬をなでて
ほら泣く人の涙をぬぐい
木立の象のように街をゆくよ
おやすみのかたまりは

瞳をとじた孤独な鼓動も
無風無音のためいきも
もつれた脳波のハミングも
ぜんぶぜんぶかきまぜて
きまぐれな真夜中の対流
ささくれをなでつけて
しまわれた街はゆるまってゆく
おやすみのかたまりに

ビル

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(詩)立冬

冷たくけむる空気を
見えない編み棒で編むように
朝っぱらからギターは響く
その振動が減衰する果てに
届くべき鼓膜がないとしても

孤独と退屈とは異なる
教えてくれた人はもう遠く
そんなことを思い出したり
思い出さなかったりしながら
ガットギターはつまびかれる

離れゆく虚無の日々も
無駄ではなかったと信じることが
良いのか悪いのかその戸惑いだけを
淹れたてのコーヒーに溶かした
砂糖とクリームのよう

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