見出し画像

盛土規制法の改正案の公表(国土交通省令和4年4月21日)

令和4年4月21に、 国土交通省 都市局都市安全課 水管理・国土保全局 砂防部砂防計画課から、『宅地造成等規制法の一部を改正する法律案』(通称、盛土規制法)についての資料が公表されました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/saisei_kano_energy/pdf/001_06_00.pdf

改正案は、3月29日の衆院本会議で審議入りし、来年夏の施行を目指しています。

所管は、国土交通省・農林水産省となります。

同法の内容は概要以下のとおりです(上記国土交通省の資料内容となります)。

1.   法律の概要

盛土等による災害から国民の生命・身体を守るため、「宅地造成等規制法」を法律名・目的も含めて抜本的に改正し、土地の用途(宅地、森林、農地等)にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制することになりました。

これまで、盛り土については、宅地や森林、農地などの用途によって異なる法律(宅地造成等規制法、森林法、農地法)や、各自治体の条例で規制されてきました。しかしながら、各規制の内容は一律ではなく、規制の緩い地域に建設残土を持ち込み危険な造成が行われていることが以前から指摘されていました。

国土交通省によると、建設残土の年間排出量は約2億9000万立方メートル(2018年度)。このうち約5870万立方メートルが工事現場外に搬出され、その一部が不適切に処理されていたと指摘されています。

また、熱海市の土石流災害を受けて実施された盛土の調査では、2021年11月末時点までに調査がなされた約2万8000カ所のうち、1375カ所で問題が見つかったとされています。
災害防止措置が確認できないケースのほか、「許可・届け出などの手続きがなかった」「手続き内容と現況に違いがあった」「廃棄物の投棄があった」などの問題があったとのことです(『盛り土規制強化へ/建設残土の有効利用も図れ』(河北新報Online・2022年3月3日10:09))。

2.    法律のポイント①(スキマのない規制)

都道府県知事等が、盛土等により人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域として指定します。

市街地や集落その周辺など、人家等が存在するエリアについて、森林や農地を含めて広く指定することが予定されています。また、市街地や集落等からは離れているものの、地形等の条件から人家等に危害を及ぼしうるエリア(斜面地等)も指定されることが想定されています。

規制区域内で行われる盛土等が、都道府県知事等の許可の対象になります。
許可の対象となるのは、宅地造成等の際の盛土だけでなく、単なる土捨て行為や一時的な堆積についても規制対象となります。

3.    法律のポイント②(盛土等の安全性の確保)

盛土等を行うエリアの地形・地質等に応じて、災害防止のために必要な許可基準が設定されます。

また、当該許可基準に沿って安全対策が行われているかどうかを確認するため、①施工状況の定期報告、②施工中の中間検査、③工事完了時の完了検査を実施することになります。

4.    法律のポイント③(責任の所在の明確化)

盛土等が行われた土地について、土地所有者等が常時安全な状態に維持する責務を有することが明確化されます。

災害防止のため必要なときは、土地所有者等だけでなく、原因行為者に対しても、是正措置等を命令することができるようになります。

5.    法律のポイント④(実効性のある罰則の措置)


現行法では無許可造成や是正命令違反への罰則は、個人、法人問わず最大で1年以下の懲役または50万円以下の罰金となっており、条例による罰則の上限も、懲役2年以下、罰金100万円以下とされていました。

改正法においては、罰則が抑止力として十分機能するよう、無許可行為や命令違反等に対する懲役刑及び罰金刑について、条例による罰則の上限より高い水準に強化されることになり、個人については、3年以下の懲役または1000万円以下の罰金に引き上げられ、法人については、最高3億円の罰金を科す規定が新設されます。


牛島総合法律事務所パートナー弁護士
弁護士  猿倉 健司 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_
牛島総合法律事務所  Ushijima & Partners
E-mail:
kenji.sarukura@ushijima-law.gr.jp
TEL: 03.5511.3244 (直通)
FAX: 03.5511.3258 (代表)
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?