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【解説】取締役の責任を減免するための4つの方策と実務的留意点

1. はじめに(役員責任についての賠償額の高額化傾向)

2. 各制度の概要

3. 総株主の同意による責任の免除(会社法424条)

4. 株主総会の特別決議による責任の一部免除(会社法425条)

5. 定款の定めに基づく取締役・取締役会の決定による一部免除(会社法426条)

6. 定款の定めに基づく責任限定契約による一部免除(会社法427条)

7. 取締役の責任の免除についての監査役の同意の整理

8. D&O保険(会社役員賠償責任保険)

1. はじめに(役員責任についての賠償額の高額化傾向)

近時、社外取締役の重要性がさらに高まっている。たとえば、2021年3月1日に施行された改正会社法に基づき、上場会社において社外取締役の選任が義務化された(会社法327条の2)。
また、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社において独立社外取締役が少なくとも3分の1、その他の市場の上場会社においては2名以上選任されるべき旨が定められた(コーポレートガバナンス・コード原則4-8)。

他方、近時、企業不祥事が相次ぐ中で、企業だけではなく、当該企業の取締役等の役員についても、刑事責任を問われるケースや、株主代表訴訟等によってきわめて多額の賠償責任を負うケースも見受けられる。
たとえば、廃棄物のリサイクル製品(埋戻し材)について成分を偽装して認定を受けたうえで販売・不法投棄したケースで、株主代表訴訟が提起され、約485億円もの損害賠償義務が認められた例がある(大阪地判平成24年6月29日裁判所ウェブサイト)。

しかも、自ら積極的に関与していない場合であってもその責任が認められる場合もある。
たとえば、
① 不正行為に関し、監視・監督を怠っていた場合
     (監視・監督義務違反)
② 内部統制システムの構築を怠っていた場合
     (内部統制システム構築義務違反またはその監視義務違反)
③ 不正発覚後の損害拡大回避を怠った場合
     (損害拡大回避義務違反)

などには、責任を問われうる。

このように、多額の損害賠償を負担するリスクは社外取締役にとって大きな負担となりかねない。そのため、取締役が高額の賠償責任を負担することを恐れて経営判断が萎縮することがないようにするための制度が必要となる。

本ニューズレターでは、以下、取締役の責任を免除・限定する方法について解説する。以下では監査役設置会社を対象として説明するが、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社においても基本的に手続は同様である。

なお、本ニューズレターは、2021年11月4日時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではなく執筆担当者個人の見解を示すにとどまるものであることに留意されたい。

2. 各制度の概要

取締役の損害賠償責任を免除・限定する方法として、会社法上以下の4つの方法が挙げられる。

① 総株主の同意による責任の免除(会社法424条)
② 株主総会の特別決議による責任の一部免除(会社法425条)
③ 定款の定めに基づく取締役・取締役会の決定による責任の一部免除
 (会社法426条)
④ 定款の定めに基づく責任限定契約による一部免除(会社法427条)

②ないし④は、①の特則であり、②及び③は取締役の責任を生じさせる事実が発生した後に、その責任を会社が一部免除する事後の制度であり、④は取締役の責任を生じさせる事実が発生する前に会社と契約することにより対象者の責任を限定する事前の制度であるとされている。

①~④の各制度の詳細は、以下のリンク参照 ↓


(関連記事)
不正・不祥事を理由とする取締役に対する責任追及

近時、会計不正や品質・データ偽装などの企業不祥事が相次いでいるが、当該企業等の信用が失墜することで、補償金や賠償金等の経済的損失にとどまらず顧客の流出をはじめ企業の存続に対してきわめて甚大なダメージを受ける例も数多く見られます。他方で、企業だけではなく、当該企業の取締役等の役員についても、刑事責任を問われるケースや、株主代表訴訟等によってきわめて多額の賠償責任を負うケースも見受けられます。
企業としては、不正を行った役職員および不正に責任のある役員に対し、刑事責任や損害賠償請求その他の民事責任を追及する必要がある場合も出てきます。

概要は以下のとおりです。

1.  役員が不正・不祥事の責任を問われるケース

役員自らが、不正・不祥事に直接関与していなかった場合であっても、以下の場合に責任が認められることがあります。

① 不正行為に関し、監視・監督を怠っていた場合(監視・監督義務違反)

② 内部統制システムの構築を怠っていた場合(内部統制システム構築義務違反またはその監視義務違反)

③ 不正発覚後の損害拡大回避を怠った場合(損害拡大回避義務違反)

2.  不正・不祥事に責任のある役員に対する責任追及の判断

 (1) 刑事責任追及の判断

  ア. 不正行為に関する刑事責任

  イ. 不正に適切に対処しなかった結果生じた事故に関する刑事責任

 (2) 民事責任追及の判断(損害賠償請求等)

3.  不正・不祥事に責任のある役員に対する処分の検討

 (1) 取締役の辞任・解任等

 (2) 月額報酬の減俸等


以上の詳細は、以下のリンクを参照してください。


なお、本ニューズレターに関連するテーマについては、以下も参照してください。

『不動産取引・M&Aをめぐる 環境汚染・廃棄物リスクと法務』(清文社、2021年)第7章(廃棄物・環境汚染の不祥事によって役員の負う責任)


『不正・不祥事に責任のある役職員に対する責任追及と処分のポイント』(BUSINESS LAWYERS、2019年)


『不正・不祥事発生後における株主への対応のポイント(株主代表訴訟・株主総会等)』(BUSINESS LAWYERS、2019年)



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