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修士論文:キックオフミーティング

いよいよ修士課程最後の学期がスタート。

先週末はウプサラのSLU本部キャンパスへ。これまで毎週通っていたスウェーデン南部・アルナープのこじんまりとした、でも、公園の中にあって勉強する環境としてはとてもよいキャンパスとは違って、広大な敷地に農学や畜産関連の専攻棟が立ち並ぶ。

そこまで出向いたのは、修士論文のスーパーバイザーの先生方がこっちのキャンパス所属で、僕の修士論文のためのキックオフミーティングを主担当の先生が音頭をとって段取りしてくださったから。ありがたいことです。

ここに至るまでの経緯がちょっと面白い。主担任の先生は昨年末にたまたま外部講師として来ていた別の研究科のキノコの研究者で、同時にスウェーデン国内のレッドリスト(絶滅危惧種一覧)の作成にもかかわっている方。講義では、持続可能な森林経営を考えるには森林の多様性の維持も考慮しなくてはいけないよ、ということを具体的な事例を出しながら解説してくれた。

その例の一つとしてたまたま彼が挙げたのが「マツタケ」。まさかマツタケの話を授業で聞くことになるとは思っていなかったし、スウェーデンでマツタケの商業化に取り組んでいるのが彼の知人であるということを聞いて、これは面白そうだと授業終了直後に彼を捕まえて話を始めると、ものの1分もしないうちに「それは是非やるべきだ」と言ってくれ、後は彼主導で、経済学専攻の教授にも僕のチーム(?)に入ってもらえるよう話をつけてくれたりと、あれよあれよと話が進んだ次第。僕も昨年に日本のマツタケ生産の盛衰についてレビューエッセイをまとめていたこともあって、そういった経験も下敷きになった。なんであれ、形にしておくとどこかで役に立つものです。

マツタケだけでなく、カンタレッラをはじめ多くの食用キノコをスウェーデンの森林では見つけることができる。ベリー類も多い。隣のフィンランドほどではないようだけれど、時期になると収穫に森に入るスウェーデン人も結構多い。

日本と違って面白いのは、こういった野生の林産物は土地の所有者が誰であれ自由に採集できる権利(Allemansrätten)が伝統的に認められていること(収穫だけでなくてキャンプなども原則自由にできる)。これについては改めて詳しく書くつもりだけど、日本の入会権よりはずっと鷹揚で「誰でも好きにとっていいよ!」という権利。これは収穫好き(?)にはたまらない魅力的なものなのだが、暗黙の了解としては「必要な量だけとってね」ということのはず。一方、この権利をたてに、ポーランドなどの近隣諸国、はてはタイから(!)も時期になるといろいろと収穫に来る集団がいるそうで、そういう商業的な収穫者の行動が問題になったりもしているらしい。

こういったことをキックオフミーティングで聞きながら、向こう数カ月間の計画を詰めていった。自分が関心のあるテーマについて、専門家に胸を借りつつもいろいろと語り、ディスカッションするというのは気持ちのいいもの。こういう快感を、これからの研究生活でもできるだけ多く味わいたいなあ、と思いながら帰路についたのでした。


オリジナル記事公開日:2013年2月1日

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