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ヨコハマ・クロニクル

25年ぶりに、とある店を訪ねた。

当時は伊勢佐木町の街に誇らしげに映えていた赤いひさしが、時代に取り残されてすすけている。

流行りの味ではないことは自明のこの店に、人生に自分なりの折り合いをつけた中年客たちが続々と入ってくる。


出されたラーメンと茶碗カレーを頬張れば頬張るほどに、懐かしい20代の頃の記憶が蘇る。

けれど、いま口にしているこの味がこの店の最高到達点であるのと同じように、自分もあの頃に戻りたいとは思わない。


折り合いをつけたのは自分も同じだけれど、それは諦めを意味するのではなくて、気持ちが整理されたということだからだ。


横浜は海を感じることのできる街だから好きだ。
それに来る人を拒まない何かがある。


そしてなぜだか、

「好きにすれば?」

と言われているような気持ちになる街だ。


あの素朴なラーメンにあごだしが使われていることを今さらながら知った。
オヤジさんだってあのひさしの中でちゃんと工夫しているのだ。

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