風の街にて
とあるローカル線の駅にたどり着いた頃、不意に風が吹いて、駅におそろしく隣接したマンションの2階から、紺色のタオルのようなものが空を舞った。
タオルは風に乗って、しばらくの間、気持ちよさそうに空にいる。
そして2回くらい宙返りをしてからどこかに消えた。
僕は、いつか水族館のガラスのトンネルで下から見上げたエイを思い出した。
改札を通り、ホームに降りて、
帰りたいとは思わない都会のほうに向かう電車を待つ。
するとさっきのエイが、紺色のタオルそのものに戻って、対岸のホームのベンチにたたずんでいるのが見えた。
そんな時に限って電車は来るのだ。
対岸のホームと紺色のタオルに目を奪われながら、
僕は故郷を後にした。
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