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僕のKIESプロジェクト奮闘記

 しばらく前にFPSゲームを作りたいという記事を書いたときに、ほんの少し触れていましたが、僕の所属していたプロジェクトの話です。

 じつは、2021年の3月31をもって、僕が所属していたKIESプロジェクトが、活動を終了しました。僕は、このプロジェクトが学生生活で最も楽しく、成長につながっていると思っています。ただ、僕はこのプロジェクトには通常3年間所属するのが基本ですが、活動2年目にこのプロジェクトをやめています。

 なぜこのプロジェクトをやめることになったのか、
 そして、なぜ最終的にこのプロジェクトが消えることになったのか
 
 僕が所属し始めた当初からの経緯を踏まえて、その理由をまとめるとともに、金沢工業大学のプロジェクト活動を含め、サークルや部活動にかかわっている後輩(特に大学1・2年生)に向けて僕が伝えたいことを書きました。

 あくまで、金沢工業大学のKIESプロジェクトのことに関連して話していますが、サークルや部活動などはもちろん、後半のほうは他の大学の方でも参考になる話になるかなーと思っております。

 ただ、今となっては、僕はもはやプロジェクト関係者ではありません。
正直長いですし、そんな部外者な僕が書いたブログだと思って、ゆっくり読んでもらえればと思います。

KIESプロジェクトに所属していました

 僕は2018年の入学当初から、2年次の終わりまでこの
「KIESプロジェクト」に所属していました。

 KIESというは、KIT Information Engineering Systemの略称で、2013年に組織され、「テクノロジーの力で新しいものを!」をモットーに活動を行っていました(実はこのモットーはかなり最近に変更された)。

 このプロジェクトでは、主に以下の3つの班で構成されていました。

・VR班 (VRゲームなどのコンテンツ制作)
・アプリ班 (スマートフォンアプリの制作)
・ハードウェア班 (電子回路やマイコンを用いた制作)

 それぞれ、制作するコンテンツによって班に分けられ、僕はVR班として、作成したコンテンツなどを地域のイベント(NT加賀、NT金沢、学内オープンキャンパス、文化祭など)に展示・体験を行う活動を行っていました。

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↑ 文化祭での展示の様子

 僕はゲーム制作に興味を持っており、入学当初ゲーム制作に関するサークルやプロジェクトなどがあるか探していて、このプロジェクトのVR班でVRゲームをチームで制作していることを知ったことをきっかけに、このプロジェクトに所属しようと決めました。

 ちなみに2年次には、プロジェクトの運営メンバーとして、VR班の2年リーダーとしても活動していました。そのため、プロジェクトの運営にも少し携わっていました。

初めてにしては多すぎる”問題”

 しかしながら、プロジェクト活動を行っていくうちに、このプロジェクトには山積みの問題があることがわかってきました。

班同士がほぼ分離している問題
 このプロジェクトでは、VR・アプリ・ハードウェアと3つの班に分かれていますが、プロジェクト全体での目標があいまいなために、班同士がほぼ分離される形となり、班を超えた形の取り組みがしにくい状態でした。 

未完成・低クオリティなコンテンツ問題
 これはVR班に限った話かもしれませんが、制作物を締め切りまでに完成できないことが多く、完成できたとしても、ほぼ未完成に等しいくらいの低クオリティなコンテンツがほとんどでした。

 しかし、2年次の運営としての活動を行っているうちに、これらの問題よりも、さらに深刻で大きな問題を抱えていることが分かったのです。

 それは、
プロジェクト本来の活動と現在行っている活動に違いがあることでした。

 KIESプロジェクトは、金沢工業大学内ではもともと
「産学連携・地域連携による教育研究プロジェクト」
というカテゴリで発足していました。

 つまり、プロジェクト本来の活動というのは産学連携や地域連携に沿った活動ということなのです。
 しかし、プロジェクトで当時行っていた活動というのは、自由にものづくりをただ行っているだけにしか見えないような状況でした。
 地域連携に関してはNT金沢やNT加賀などで出展活動を行ってはいましたが、展示しているコンテンツはほぼ未完成で低クオリティなものばかりでした。

 しかも、このプロジェクトは、金沢工業大学の特別奨学生制度(リーダーシップアワード)のスカラーシップフェローやスカラーシップメンバーの学生が、課外活動として推奨するプログラム(KITオナーズプログラム)に属していました

金沢工業大学の特別奨学生制度
https://www.kanazawa-it.ac.jp/nyusi/honor01.html

 つまりは、これらの制度に適した学生が自己目標を達成するために活動できるような、しっかりとした活動を行うプロジェクトであるべきなのです。具体的には、プロジェクトを設置している連携推進室での継続条件の要件(2018年度現在)には以下のようなものがありました。

◇02Labプロジェクト H30ビジョン◇]
「地域社会の課題解決に貢献する」
◇02Labプロジェクト H30共通目標◇
「ビジョン達成につながる具体的な目標設定とPDCAの実施」

 しかし、こうした条件をほとんど満たしていない状態、いわば”グレー”な状態で活動を続けていたのです。

 これらの状況をみて、僕は正直なところ「話が違うではないか」と感じていました。所属当時の活動のモットーとして「テクノロジーの力で楽しいことを」を掲げていたため、僕が感じていた活動としては、「仲間と共に楽しくコンテンツを開発できるプロジェクト」だと思っていました。しかしながら、これは単なる僕が外から見たグレーな活動であり、本来の活動とかなり異なっていたのです。

僕らの奮闘

 ただ、活動を行っているなかで、気の合う友人ができ、プロジェクトの活動自体は非常に楽しく感じていました。そのため僕は、プロジェクトの仲間と、この楽しい活動を続けていきたいと感じるようになっていきました。
 だからこそ、こうした状況を打開するために、先輩方と協力しながら、様々な取り組みを行っていきました。

 僕が所属して間もない、2018年にKIES全体での話し合いを行いました。ワールド・カフェ方式というアイディア出しの手法を用いて、今後こうした状況を打破するための方法や、新しい目標、新たなテーマ(モットー)を考えました。

 この話し合いによるアイディアから、「テクノロジーの力で楽しいことを」から、「テクノロジーの力で新しいものを」というものに変わり、従来の3班に分けるような組織ではない、本部の下にプロダクトチームを組織して活動を行うように考えました。

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↑ 当時の議事録から引用して作成

 上記のような組織体制するにあたり、新メンバーも初めから班を選んでから所属先で必要な学習を行うのではなく、共同勉強会をまず行った後に、プロダクトごとに勉強会を企画するようにしました。

 そして、VR班では、いまだ完成されたコンテンツを展示できていない問題を解決するため、僕なりの取り組みも行いました。

 制作がチームで思うように進まない原因として、コミュニケーションの不足が考えられました。特に夏休みなどの長期休暇中制作では、これが顕著でした。チーム内でのやり取りが少ないことで、メンバーと連絡が取れなくなってしまうケースが多く、現状のタスクがどのくらい進んでいるのか(進まない原因把握も含めて)の把握や、次のタスクを振り分けることができず、連絡が取れるメンバーだけで制作を進めなくてはならなくなっていました。

 こんな中、2年次に大学の文化祭(工大祭)に展示するゲームを制作することになった際に、僕は制作チームのリーダーとなりました。そこで、今までのチームのコミュニケーションを円滑で活発なものにするためにいくつか工夫を凝らしました。

通話アプリSkypeの導入
 
コミュニケーションが活発にならずに滞ってしまう原因としては、リーダーからメンバーへの連絡が少ないことや、メンバー同士のコミュニケーションが少ないからだと考えました。プロジェクトでは通話アプリとしてSlackをつかっていましたが、ほとんどが文字情報で、グループ通話がしにくいので、リアルタイムに音声で相談しながら制作ができるSkypeを導入しました。

定期的な進捗会を企画
 今までの制作ではアイディア出し以降、チームで集まる機会がほとんどなく、連絡も不定期でした。そのため、メンバーからすればいつ連絡が来るかわからず、制作の計画も立てづらい状況に陥ることになります。
 そのため、週に1回Skypeのグループ会議を開き、全体の進捗を確認する時間を設けました。

 こうした工夫によって、メンバーが一人も欠けることなく制作が進み、当日までにしっかりと完成できました。ちなみに制作したVRゲームは、本来HMDを付けられない小学生でもゲームに参加できるようなVRとPCの対戦型ゲームです。

 小学生を連れた家族でも楽しめるゲーム性だったからか、工大祭当日はかなりの来場者が訪れました。最終的には、学園祭での展示では初めて100人を超える来所者数となりました。

 その後の制作時の反省会では、ソースコードを統合する作業が遅くなってしまったことや、リーダー側の負担が大きく、よりメンバー全体へバランスよくタスクを振り分けられることが挙げられました。まだまだ、リーダー役として未熟な部分はありましたが、今後に大きな自信が持てるような良い経験でした。

 学園祭での制作を通じて、チームでしっかりとコミュニケーションが取れれば、きちっとした制作ができることが分かり、改善を繰り返していけば、より良いものを作れる体制ができるのではと、思っていました。
 正直なところ、こうした活動で、まだまだプロジェクト全体の体制が変わっていない現状でした。ただ、今後しっかりとコミュニケーションをとっていけば、プロジェクト全体として具体的な目標を挙げ、地域や産学連携の取り組みを積極的に行っていけると、個人的に希望を感じていました。

が...

KIESプロジェクト事実上の解体

 2019年の12月ごろ、ちょうど僕が後輩のプログラマーに向けた勉強会
( https://youtu.be/XO0loXoguSs )を終えた後ぐらいに、顧問の先生から連絡がありました。

 その内容は、今後このプロジェクトで新メンバーを入れないことを決めたということでした。
 のちにプロジェクト全体でも説明がありましたが、新メンバーを入れずに今後は活動を行うということになり、すべてのメンバーが卒業したらこのプロジェクトは無くなるということになってしまいました。
 

 つまりはKIESプロジェクトが事実上、解体されることとなったということです。

 具体的に僕自身が関与していませんが、プロジェクトのリーダー会と顧問の先生との話し合いの結果、こうした方針に決まったとのこと。これはあくまで僕の推測ではありますが、顧問の先生としては、これまでの活動状況から変わらないようであれば、このプロジェクトには関与したくないという様子がうかがえました。

 顧問の先生から、プロジェクト全体でこのような説明があったのと同時に、今後のメンバーがとれる方針として以下の3つがあげられました。

◆ これまで通り活動する(新しいメンバーは追加せず、メンバー全員が卒業したらプロジェクトは終了)
◆ 他に代わる顧問を探し、その先生に顧問をお願いする(新たにメンバーを追加できる可能性はある)
◆ KIESプロジェクトをやめる

 もちろん大半のメンバーは辞めることをその場で決めていきました。一応は残る判断をしたメンバーもいたため、そのメンバーからリーダーが選出されました。

 僕はこの方針となったことを聞いていて、ショックを隠せませんでした。なぜなら、ようやくこのプロジェクトがいい方向に動くことができそうだと感じていた矢先だったからです。

 苦渋な決断でしたが、僕も辞めることを決心しました。できることなら続けたいとも思ったのですが、多少なりとも愛情を注いだとしても最終的にはなくなってしまうことや、何よりも、たくさんの仲間を失ったプロジェクトでは楽しく活動はできないと思ったからです。

KIESプロジェクト空洞化、そして、

 僕がプロジェクトを離れ、その後の具体的なことはわかりませんが、一応は残ったメンバーがいるとのことで、Slackでの連絡のやり取りを見ることはできました。

 また、プロジェクトをやめたメンバーでVRゲームを制作するチームを新たに発足させ、サークル活動などで独立しようという動きもありましたが、ちょうどその時期に、新型コロナウイルスが蔓延し、チームを集めることができず、頓挫してしまいました。

 その後は、顧問の先生がプロジェクトの残ったメンバーに向けて連絡を行っている様子はありましたが、残っているはずのメンバーから返答がくることはありませんでした

 このような状況が1年間続きました。

そして、
2020年の3月31日をもって、
2013年から8年間続いたこのKIESプロジェクトが終わりました。

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https://www.facebook.com/kitmg.pro/

なぜKIESプロジェクトは消えたのか?

 このプロジェクトが活動を終了してしまった、大きく二つの原因があると僕は考えています。

◆ 顧問の先生と、僕らプロジェクトの学生達との亀裂
 僕の個人的な感想でしかありませんが、このプロジェクトがなくなった直接的な原因がどちらにあるのか、ということは関係なく、こうした僕ら学生と先生方の間に意見の齟齬が生まれていたことが、プロジェクトの運営がうまくいかなかった原因となっている気がしています。
 顧問の先生方も、「あくまでも学生主体で動いてほしかった」という考えでいたにもかかわらず、学生からの意見や連絡をほとんどシャットアウトしてしまったことも原因の一つであったと話していました。
 ただ、僕ら学生が主体となって、プロジェクトが抱える問題にしっかりと対処できていれば、顧問の先生も納得して、今後も存続できていたのではないかと感じていました。

◆ 目標・目的があいまい
 「目標や目的を明確にしなければならない」とたとえルールになかったとしても、チームとして具体的な目標がないと、どちらにせようまくいかなかったと思っています。自分たちが思う理想像から、具体的な大きな目標を立てて、その達成のための小さな目標のために日々の活動を行うような体制が整えられれば良かったのではないかなと感じています。
 もし、この目標が本来のプロジェクトとしての活動でないとするならば、プロジェクトの名前を変えることや、方針を転換することも可能であり、メンバーを解散する結果にはならなかったのかもしれません。

 ただ、今個人的に思うところでいえば、上記のことが、もし、解決されていたとしても、産学連携プロジェクトとしての条件には合致していないため、早急に対処するべき問題だったなと感じています。

ただ、プロジェクトは”消えるものだ”と思う

 プロジェクトを途中から抜けた僕が、正直な話、こんなことを書くのは無責任だとは思います。ただ、この金沢工業大学のプロジェクト活動は、存続させるのが非常に難しいと思います
 なぜならば、サークルのようによくある目的で集まっているわけではなく、ほぼすべて学生主体で、学生の意欲だけがプロジェクト活動の原動力であるためです。

 この大学におけるプロジェクトというのは、学生が「これやりたい!」とか「これを作りたい!」と思い立ち、それに大学の先生の協力が得られることで作ることができるコミュニティーです。そのため、プロジェクトを組織する学生が行いたい内容というのは、サークルなどの「音楽を一緒に演奏したい!」とか「スポーツを一緒にやりたい!」などの一般的なものとは異なるものであり、場合によれば大学の外の組織(地域や企業などの)と協力を得なければなりません。だからこそ、大学側と帳尻合わせをしていかなければ、活動がうまくいきません。

 また、プロジェクトは学生の作りたい意欲があり、それらに共感を持つ学生が集まって組織されます。つまり、作りたい意欲がなくなるようなことになれば、その組織に引き留めるような理由はほぼなくなります(なにかしら、ほかにプロジェクトで活動したい理由があれば話は別ですが)。プロジェクトは外部から管理されているわけでも、メンバー同士(雇用みたいな)契約を結ぶわけでもないのです。
 つまり、プロジェクトの原動力はすべて学生の意欲にかかっているわけです。

 だからこそ、プロジェクトの運営というのは、一般的なサークル活動ではできないような難しい難題を、学生の意欲だけで解決・存続させていくというのは、非常に難しいことです

 ただ、逆に言えば、プロジェクトは組織を解散する、もしくは方針を転換したり名前を変えるなどが容易にできる組織ともいえます。

 サークルというのは、毎年少なからず新入生にやりたい学生がいる場合がほとんどで、すぐに解散・方針転換というのは、しにくい組織といえます。例えば、大学に吹奏楽サークルや野球サークルがあったとすれば、大学でも「楽器を演奏したい」とか「野球をしたい」と思う学生は少なからずいるはずですし、極端な話、吹奏楽サークルにいるメンバーが「実は、楽器を演奏したいんじゃなくて、オリジナルの楽器を作りたいんだ!」みたいなことを、ほとんどすべてのメンバーが思っているというケースは、ほぼあり得ません(多少目的が個人で変わることはあるかもしれませんが)。サークルや部の方針を変えるには、必ず、チーム全体や顧問の了承を得られる必要があるでしょう。

 しかし、プロジェクトというのは、一時的にやりたい意欲があって集まった組織であるため、他のアイディアを思いついたらそれを全体の目標を変えてしまい、方針を一変させることはできます(ただ、顧問の先生やメンバーが納得するのかどうかは別ですが)。また、チームのやり方が気に入らなければ、自分でプロジェクト内に別のチームを作ったり、別の顧問の先生を探して独立してしまうのもアリというわけです(噂ですが、そのまま学生起業してしまおうと考えたプロジェクトもあるみたいです)。

 だからこそ、プロジェクトで活動するうえでは、「存続させる」ということはあまり考える必要はなく、チームもしくは自分自身がやるべき・やりたいことをすることのほうが大事なのかもしれません。

今、プロジェクトやサークルなどに関わる後輩たちへ

 最後になりますが、金沢工業大学で(もちろんほかの大学の方でも)プロジェクト活動やサークル・部活動にかかわる方に、僕から伝えたいことを書きたい思います。

 プロジェクト活動やサークルを含め、大学の課外活動で仲間と共に創造活動をする際に、まず重要なのはコミュニケーションです。個人で制作をするだけならば別ですが、チームとなったら存続させる・しないにかかわらず、成果にはやはりコミュニケーションが必須だと思います。
 いまのご時世、面と向かって話し合うことはできず、活動の幅が狭く感じるとは思いますが、ツールをうまく活用しながら、積極的に話しかけてみましょう。

 そして、自分で、もしくは自分たちで、(個人でもチームでも)「何かものを作りたい」、「何か活動をしてみたい」と思ったらならば、具体的な目標を立ててみましょう。チームでの活動であればより積極的に、自分がリーダー役だったらなおさら、考えていくのが良いと思います。目標は、より具体的な数値目標であれば目指しやすいと思います。

 もし、いま個人で活動をしているのであれば、チームでの活動に挑戦してみるのもアリです。知識を共有できることで、できることが増えるのはもちろんですが、

仲間と一緒にものづくりをするのは、めちゃくちゃ楽しいんです

そして、なによりも最後に言いたいのは、

大学での活動でいくら失敗しようが、
あなた、もしくはあなたたちを責める人はいません。
大学生活中、いくらでも挑戦しちゃってください。

僕も、大学4年生、残り少ない学生生活、
思いっきり挑戦して、楽しみたいと思います。

長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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