見出し画像

安全確保か業績回復か

  感染者数が日増しに増加して緊急事態宣言も発出し、誰の目にも外出することが危険だと分かった4月中旬、多くの企業で在宅ワークが始まりました。

  「外出しないこと」の正義が万人に共感・共有され、他に選択肢がない中で、企業は従業員に出勤禁止を命じました。短期間に様々な対応を余儀なくされたとはいえ、判断としては難しくありません。

  当初は不自由だった在宅ワークも、多くの人がそれに適応し、そのメリットが広く実感、共有されたことで、「会社に行かないこと」が当たり前になりました。

  そして今、第2波の恐れはおおいにあるものの、日々のウイルス感染者数だけで見るとほぼ鎮静化しました。それに伴い交替出勤などでオフィスに出社する従業員の数は増えていますが、いまだ在宅ワークが推奨されるムードがあります。そしてその一方、多くの企業が業績を落としています。

  そんな中、経営者や事業責任者の頭の中に、「従業員が出社していないこと」が業績ダウンの原因なのではないかという疑念が生じていても不思議ではありません。ひょっとして、従業員が在宅ワークを続けているのは単にそれが楽だからなのではないか、そんな思いも頭をよぎります。

  もう「明日から全員出社しろ」そんな言葉が喉まで出ています。

  しかしつい2〜3週間前までは「出社禁止」を命じていた立場から、正反対の“命令”を下すことに強い自己矛盾を感じる。また沈静化したとはいえ感染のリスクはある中で従業員の安全を軽視するような発言もできない。

  こんな、悩める経営者の方は意外と多いのではないでしょうか。

  多くの政府・自治体関係者が、国民の安全と経済のダメージ回避のはざまで苦悩していたのと同じように、いま経営者や管理職が従業員の出勤について苦悩、葛藤しています。

  従業員の安全か、業績か。

  しかし、このような“問い”を立ててしまうと永遠に答えは出ません。

  いま考えるべき事は、オフィスにいようが自宅にいようが、業績(=社会や株主に対する責任)を確保するためにしなければならないことは何か、その質と量を何で測り、必要なボリューム(質×量)を担保する上での課題は何か、です。

  「いかにオフィスに出社させるか」、「安全か業績か」という“問い”しか立てられない会社は、残念ながら新時代に適応できず、たとえ足元の業績を回復させたところで、また従業員から短期的に感謝されたところで、明日はないと言えるのではないでしょうか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?