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惰性的な面接から脱してみると

    Harvard Business Reviewの最新記事から『採用プロセスを改善するための4つのアプローチ』。

「あなたの最大の強みと弱みを教えてください」

「仕事で試練を乗り越えたときの話を聞かせてください」といったものだろう。

 多くの面接で繰り返されるポピュラーな質問ですが、筆者は、この世代間で受け継がれてきた伝統的な行動面接(過去の行動を答えさせる質問をする)では正しい評価ができないとしています。

 行動面接は、自らの経歴に関する情報を伝える能力をテストする上では有効だが、ストーリーテリングのスキルが必要とされる職の採用活動でない限り、候補者の能力に関して十分な情報を得られないというのです。

    筆者が試行錯誤の上に編み出した手法は、候補者を旧来型の面接とは全く異なる状況に放り込み、クリティカルシンキングの能力、テクノロジーの知識、対人関係スキルを把握するというものだそうです。

    プロセスは決して固定的なものではなく、それぞれの候補者に期待するスキルに応じて、候補者にそのスキルを保有することを実証する機会を与えるにはどのような質問をするべきか、ということを面接官担当者同士ですり合わせます。そしてそれらの問いは、面接冒頭の対話パートで尋ね、45~90分を割いて話をします。

候補者に投げ掛ける問いを大別すると以下の3つです。

(1)候補者がどれくらい準備してきたか

    ※例:「我が社についてどのようなことをご存じか教えてください」

(2)批判的思考とテクノロジーに関する知識

   ※イエス/ノーでは答えられない問いを投げ掛けて会話のきっかけをつくり、候補者に独創性を発揮させる

(3)人の話を聞く力とコミュニケーション能力

  ※例:「あなたの情熱の対象か、詳しく知っている物事、あるいは自分が名ばかりの専門家だと思うテーマについて説明してください。そのことについて私たちがまったく知識を持っていないという前提で話してください」(こちらが何を求めているかを候補者にはっきり示し、候補者がその指示に応えられるかを見る)

 一言で言えば、採用したいのは先を読んでものを考えることができて強い重圧がのしかかる局面でも真の知識と過去の経験を引き出せる人物であり、相手の聞きたいことを推測して答えるコツを持っているだけの人ではありません。

 これをさらにビデオ会議システムを利用して行なえば、システムを活用する能力やビデオ会議での振る舞いなど、オンライン・コミュニケーションのスキルも併せて判定することができます。

   そして、対話パートのあとは、やはり45~90分くらいかけて、候補者とその人の専門分野のエキスパートであるチームメンバーが話した上で、実際にどのようにスキルを活用し、同僚とどのくらいコラボレーションができるかを様々なシミュレーションによって試します。

  また同社は、採用する全社員に対して、場合によっては厳しい時間的制約の下で明晰な文章を書けることを求めているため、様々なパターンの文章能力テストを行なっています。どのような課題を与えるかは職種によって異なりますが、提出された文章をもとに、候補者が批判的思考を実践して文章の構成とメッセージのトーンを考えられるか、全般的に思慮深い文章が書けるかをジャッジします。


   同社の採用が優れている(採用した人材の質が高い)ことは、決して上記のような“手法論”で片付けるられません。

   合否の意思決定を行なうプロセスや、採用した人物に対するアセスメント、また、次なる面接に対する綿密な準備の繰り返し、

  それによって完全な科学にすることはできないとされている採用面接の精度を極限まで高めようとしていることにあります。

   

    オンライン面接が普及しても、それに強い抵抗感を示す企業もあります。その理由を尋ねてみると、「オンラインでは候補者のことは分からない」との声が圧倒的です。

  では、対面での面接なら「分かる」のか。

  この記事は、何を分かる必要があるか、そのために何を訊くか、何で判断するか、判断の結果がどうであったか、といった仮説と検証を突き詰めた企業が採用の勝者になり得るということを教えてくれます。

  








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