中高年の能力低下は、加齢でなく「制度」が原因
日経BizGateに投稿された太田肇先生(同志社大)のエッセイ『中高年の活躍阻む3つの壁 テレワークが崩す』。
少子化にともなう労働力不足を補う役割を期待されている中高年社員にとって、仕事を継続する上での壁とは何かが述べられています。
1)能力の壁
中高年になると創造性や記憶力、判断力など知的能力が衰えると言われています。しかし脳科学者によると、人間の脳は使い続けているかぎりいくつになっても発達するらしく、筆者は、むしろ毎日の通勤による肉体的負担の方が大きいと、テレワークの普及を中高年にとっての追い風と見ています。
2)制度の壁
筆者が援用したデータによると、中高年の"能力の壁"をことさらに不安視するのは我が国特有の傾向であり、欧米では年をとっても知的能力は低下しないと認識されているようです。
筆者は、この認識の違いが制度の違いによるものだとしています。すなわち、年功によって能力の伸び以上に給料が上がってしまう40〜50代は、実際には能力が低くなくても、相対的に給料が高く映ってしまうというのです。
「年功制を廃止すれば欧米の中高年と同じようにいつまでも第一線で活躍できるはず」というのが筆者の出張ですが、テレワークの普及によって加速する「ジョブ(職務)型」への移行により年功賃金が維持できなくなることから、この壁も崩壊に向かいます。
3)文化の壁
上司と部下の年齢逆転も、我が国では様々な組織のストレスを産み出します。これに対しても筆者は、テレワークによって対面的な接触が減る分よい意味で対等かつドライな関係を築くことができるとしています。
本稿の結論は、「3つの壁」の崩壊はいずれも合理的・必然的なことであり、すべて中高年の活躍を促す(「60代でも70代でも、能力に応じて第一線で働き続けることが夢ではなくなる」)ものであるということで、そうすると「シニアをどのように働かせるか」といった議論すら意味を失うとしています。
一方で、60歳定年の制度下ではそろそろ逃げ切り体制に入らんとする年代であるはずの"48歳"が、75歳定年が実現した時にはまだまだ折返し点に過ぎない年齢となることから、非年功システムの中で能力を発揮し続け得るために、学びを絶やさずアップデートを続けることができるか、という働く側の問題は根が深いのではないでしょうか。
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