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WHYから始める

  サイモン シネック氏によるTEDトーク「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」。

  名著「WHYから始めよ!」でも唱えられている「ゴールデンサークル」を用いて、マーケティングやマネジメントで人の心を動かすコミュニケーションとは、「WHY」を基点とするものであると説いています。


  企業や組織にとっての「WHY」は目的、すなわち組織が存在する理由です。利益は理由ではなく結果です。

  「企業活動の目的は利益を上げること。何故なら企業は存続し続ける社会的責任を負っており、利益こそがその原資になるから。」

  これは確かに正論ではあります。

  しかし、供給が需要を上回る“モノ余り”の社会で、売り手(作り手)と買い手の力関係が買い手優位になった今日において、消費者に選ばれるためには企業やその製品、サービスに対する共感・共鳴が不可欠である、というのが昨今多くの識者が唱える『パーパス経営』であり、そのパーパスこそが“WHY”なのです。

  これは、企業活動を行う上で獲得すべき人材(従業員)、取引先、提携先といったパートナーとより強い絆で結ばれる上でも重要なことであると言われています。 

  これに対し、旧来のセールスコミュニケーションは“WHAT“から始まります。


「我々は素晴らしいコンピュータ(WHAT)を発売しました」
「美しいデザインで簡単に使えます(HOW)」
「一ついかがですか?」

  すなわち、何をして どう違いどう優れているかを述べ 相手に何か行動を期待するのです。

  一方、アップル社のコミュニケーションは逆です。

「我々のすることはすべて 世界を変えるという信念で行っています  (WHY)」
「私たちが世界を変える手段は 美しく簡単で 親しみやすい製品です(HOW)」
「 こうして素晴らしいコンピュータができあがりました」(WHAT)

 この製品に真っ先に飛び付くユーザーは「世界を変えたい」またその変化を真っ先に体験したい、と望む人たちなのです。


  さて、変革期を迎える人材紹介ビジネスは、次代でどのような”WHY“を掲げることができるのでしょうか。

  グローバル化やテクノロジーの進化によって社会の変化のスピードは増しています。それはすなわち、長期的で計画的な人材育成が難しくなるということです。

  これからは適材を適時に獲得していく、そんな人材獲得競争の成否がビジネスの優勝劣敗を左右します。

  一方、そんな”採用ファースト“の世の中に対して各社はインハウスリクルーターを増員し、ダイレクトリクルーティングによって求職者と直接つながりをもち始めます。

  それによって、採用企業と人材紹介会社間にあった情報の非対称性がなくなり、人材コンサルタントにはよりシビアな介在価値が求められるようになるということです。  

  採用のプロであるインハウスリクルーターでも集められない優秀で稀有な候補者を集めて選考のテーブルに進めること、これが最低限の”参加資格“なのであり、自らの人材獲得能力を棚上げして企業に安易な妥協(業界では「スペックの緩和」という奇妙な言葉で表現されます)を迫ることで数字を作ってきたコンサルタントは即刻退場です。

『人材獲得競争を成功に導くことで、取引先企業の持続的成長を支える』

  これが人材紹介ビジネスの最大公約数的な“WHY”なのであり、「今月何件決めたいか(WHAT)」という発想から、そのためには「採用要件を多少下回る候補者でも面接してもらう(HOW)」ことでそれを実現しようとするアウトサイドイン(※上記の動画、著作を参照)の仕事に未来はありません。



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