見出し画像

”35%”はいつまで続くのか /第1回

 人材紹介会社にとっての売上とは、取引先企業に推薦した登録人材が選考を通過し、実際に入社した際に成功報酬として受領する「紹介手数料」です。
  今日の相場では、入社した人材が入社初年度に受領するであろう想定年収(残業や通勤を除く諸手当と賞与)に35%を乗じた金額で、例えば想定年収1,000万円の人材を媒介した際の成功報酬は350万円ということになります。

 この「35%」が高いのか安いのか、それは判断が分かれるところですが、“過去比較”と“国際比較”によって、今後のトレンドを予想することができます。

 まず、国内において「35%」が相場となったのはここ10年以内です。
私が人事の採用担当者として人材紹介会社を利用していた25年ほど前(1990年代)は「25%」や「一律100万円」というような条件で利用していました。
 2000年代に入り、それまで利用に消極的であった日本企業の間でも徐々に認知と利用が進み、長期的な景気回復の中で企業が雇用を増やす中、徐々に「30%」という相場が形成されていきました。

 一方、海外に目を転じると、当社がグループ会社を置く英国において、その相場は「25%」です、一方、同じく当社が事業を行なうアジアの国々においても概ね同様です。

 では、何故日本だけが高いのか、それは我が国の労働市場における低い流動性が原因であると考えられます。
  労働市場における流動性は、すなわち人材紹介会社による登録人材(求職者)の確保が難しいことを意味します。

 バブル崩壊からの回復期において、年功序列や終身雇用といった日本の高度経済成長を支えた人事管理システムは否定され、長くその終焉が予測され続けてきましたが、いまだ多くの日本企業の人事制度において“長期勤続のインセンティブ”ははたらき続け、新卒採用をベースとする長期的人材確保が王道ととらえられがちです。

 一方、年末年始に行なわれたトヨタ自動車の豊田章男社長や経団連会長の談話は、いよいよ日本型雇用システムが終焉を迎えることを感じさせるものでした。
 また定年延長によって働く期間が伸び、テクノロジーの進歩は私たちの生活を目まぐるしく変え、それに伴い生活スタイルや価値観が多様化することからも、22歳で選んだ企業が70歳になるまでずっと自分にとって最適な職場であり続けること(=終身雇用)はもはや奇跡といってもよいでしょう。

 このように、労働市場の流動性が増すと、人材紹介会社にとっての登録人材獲得コスト(サービスの原価)は理論的には低下することになります。

 これによって、「35%」の相場は海外並みに低下していくのでしょうか・・・(明日に続きます)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?