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ワイガヤに対する大いなる誤解

 日経Biz gateから『ワイガヤ効果に錯覚 仕事を個人に「分けた」ら生産性3倍』。同志社大学の太田 肇教授による寄稿です。

 日本企業においてはとかく不明確になりがちな各個人の役割と責任の範囲を”分ける”ことによって生産性が目に見えて改善した、という例を挙げ、モチベーションの期待理論をもとにその原因を解説しています。

 筆者は、日本企業が仕事を一人ひとりに分けようとしない原因として、私たちが陥りがちな「錯覚」を挙げています。

 すなわち、人間には集団に属したい、人と交わりたいという社会的欲求があり、仲間と一緒に仕事をしていると楽しく充実感や満足感が得られる。そしてワイワイガヤガヤ議論すれば互いに触発し合ってよいアイデアが生まれているような気がするというのです。

 筆者は、社会心理学者の釘原直樹氏の説を引用し、「課題の種類にかかわらずブレーンストーミングのような相互作用集団より名義集団(独立した個人の成果を集めた名目だけの集団)のほうが、アイデア総数だけでなく独創的なアイデアの数も多いことが多くの研究から明らかになっている」と主張しています。

 特に、困難な課題、学習されていない新しい課題になるほど集団作業では間違いが多くなり、仕事の質が低下するという点に注目し、現代は以前に比べ高度な知的労働のウエイトが高まっており、仕事の質がますます重要になることから、この傾向(集団<個人)は今後いっそう強まると予想しています。

 ITなどの技術革新が単独でこなせる仕事の領域を急速に拡げつつあるなか、それに逆行して「みんなで、アナログのつながりを重視して」と必要以上にこだわり続ける組織は、新たな社会から脱落せざるを得ないのかも知れません。


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