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“35%”はいつまで続くのか /第3回


  前回は、世の中の変化に伴い日本の労働市場がどのように変化するのかを予測してみましたが、今回はそれに伴い人材紹介会社や人材紹介コンサルタントがどんな変革を余儀なくされるかについて考えてみます。

<第1回> 世界的に見て高額なわが国の人材紹介手数料(35%)

<第2回> わが国において予想される労働市場の変化

前回私が挙げた変化(予想)は以下のようなことです。
  変化-1)年功型賃金カーブは変形し、年齢と収入との相関関係は弱まる
  変化-2)企業の人材獲得において外部労働市場への依存度が増す
  変化-3)優秀人材獲得の競争は特定領域の給与水準を高騰させる
  その他)HRテックの流れによって企業が人材採用を行なう手段が多様化する

  第1回で仮定したようにわが国の人材紹介手数料(35%)が高いとすると、企業の人材採用手段が多様化することで、人材紹介会社はより一層その価格に見合った価値提供を求められるようになることは疑いようがありません。

   言い換えれば、人材紹介会社を利用しなければ実現できない採用とは何かについて市場からシビアに問われるということです。

  これを、「顧客体験」の観点から考えてみます。

  以前の投稿でも述べたことですが、企業の採用シーンにおける人材紹介会社の提供価値は時代とともに変遷しています。
  過去は、「数少ない求職者の中から自社に合う人材(辞めた人と同じような人材)を探してもらう」という価値、また長い景気回復期が続き人手不足が定着した近年においては「速く多くの候補者を紹介してもらうこと」が顧客の最大の期待でした。

  「速く、多く」という期待に応えるために人材紹介会社に取り組んだことは、①仕事の効率化、②増員と早期戦力化、③大きなデータベース、の3つです。

  その結果、本来「人」が介在することに意義があるはずのマッチングが記号化・機械化され、充分な経験を見識を持たないコンサルタント(営業職)が急増、そして各社が同じ「スカウトサイト」を利用することによる人材紹介各社ごとの同質化(逆・差異化)が起こりました。

  慢性的な“人手不足”を背景に止むを得ず人材紹介会社に相談した多くの企業は、自社が求める人物像を無機質に記号化することによってスピーディで機械的なマッチングを行おうとする“コンサルタント”によって、「結局会ってみないと分からない」という本末転倒な“体験”をさせられるに至ったのです。

  人材紹介各社が行なったこれらの経営努力は、皮肉にも自分たちの「介在価値」を希薄化させたと言っても過言ではないでしょう。

  だとしたら、今後どのような「顧客体験」が求められるのか。

  それは極論すれば、「自社が真に求める、自社の歴史の中では培い得ないようなスキル・経験値をもつ、それでいて自社には見向きもしないような人材を採らせてくれること」ではないでしょうか。(次回に続く)

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