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“35%”はいつまで続くのか /第4回(最終回)

 第3回は、「人材紹介会社を利用しなければ実現できない採用とは何か」について今後よりシビアに問われることになるであろうとの予測とともに、一方で現状においては、業界の成長期において人材紹介各社が行なってきた努力(①仕事の効率化、②増員と早期戦力化、③大きなデータベース)が皮肉にもその「介在価値」を希薄化させてしまっているということを述べました。

 問題として挙げたのは、
1)本来「人」が介在することに意義があるはずのマッチングが記号化・機械化され、
2)充分な経験を見識を持たないコンサルタント(営業職)が急増し
3)各社が同じ「スカウトサイト」を利用することによる人材紹介各社が同質化

です。


 すなわち、この3つの流れを逆転させることで、人材紹介ビジネスが再びその意義を取り戻す方向へと向かっていくのではないかと考えられます。

 1)を逆転させるためには、取引先や求職者とのコミュニケーションのあり方を見直す必要があります。
 巨大なデータベースを多くのコンサルタントで運用するために止むを得ず定められたルール(入力ルール等)を守ることのみに注意が払われ、多くの場面でヒアリング項目を埋めることがコミュニケーションの目的になっています。
 注意を払うべきは、事業の計画や展望についての経営者の考えであり、その要員によって成し遂げられるべきミッションです。そしてこれらの事柄を経営者自身が用いる言葉や文脈で正しく理解し、またそれを深めるための対話こそが商談で行なうべきことです。


 すなわち、ヒアリングシートの項目にそって、「仕事内容」、「応募資格」、「勤務地」、「面接回数」を尋ね、全てを自分の言葉(大抵は奇妙な業界用語)に置き換える“自分ありき”のコミュニケーションではなく、相手の言葉と相手の文脈に添って話を深く掘り下げる“相手ありき”のコミュニケーションが求められるのです。

 2)について、各社は自社が目指すサービス水準をもとに明確な能力開発指針を定義する必要があります。
 私が社内外のコンサルタントと接して感じることは、前述のような経営者との対話を行なう上で、「担当業界の知識」よりもむしろ「話す」、「訊く」、「書く」といった基礎的なビジネススキルに弱点を持つ人が多いということです。


 これこそがマニュアル化の最大の弊害であり、マニュアル化が「話す・訊く・書く」の基盤となる「考える」力を退化させていることに気付くべきです。
 また、マニュアルに書かれた独特の業界用語も、思考停止の原因です。(その人の転職回数を表す「●社経験」という奇妙な言葉はその代表)

 3)については、単純に「ヒトと会う」ことです。
 私の知る優秀なコンサルタントはとにかく人と会っています。求人発注者か求職者かは関係なく、自らの人脈を拡げているのです。
 これを表面的に行なうコンサルタントは、様々なセミナーに参加して、片っ端から名刺交換を行ないます。私も時折自治体等が主催するセミナーで講演することがありますが、どこに行っても大抵会場をウロウロしているのは人材ビジネスの人たちで、主催者は冷ややかな目でそれを見ています。


 また、人と会うために必要なことは「機会」ではなく「自分自身の見識(を磨くこと)」です。当社にもプライベートで参加するサークル活動から次々と登録人材を獲得する優れたコンサルタントがいますが、彼女は純粋に趣味(バイオリンやワインなど)に打ち込んでいて、その場で発露する彼女の魅力が人を惹き付け、相手側から「お仕事は何をしているの?」と尋ねられるのです。
 一度、その活動が社内のベストプラクティスに取り上げられたことがあり、それを見たある人が「私もプライベートの場で登録者獲得を行なう!」と宣言していましたが、その発想がそもそも違うのです。


 今回(最終回)は、個人としての資質について述べました。あくまで理想論であり私自身もまだまだ成長途上ですが、人材紹介コンサルタントは一人でも組織でも、また何歳になっても、そしてあらゆる経験を礎として行なうことができる素晴らしい仕事です。

 現在この仕事に取り組んでいる方々が、新たな時代に向けてアップデートし、未来にも「なくてはならないサービス」であり続けることを願います。(完)

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