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続・“35%”はいつまで続くのか

  4回にわたる投稿に対し、社内外の非常に多くの方からコメントをいただき、誠に有難うございました。

  懐かしい方々とも久し振りにコミュニケーションを取ることができ、改めてSNSの楽しさ(?)も実感しました。

  先日、たまたま私がファシリテーションを担当した社内のとある組織のビジョンミーティングで内容の一部を引用したところ、参加者の方々のご発言から私自身に更なる学びがあったため、再び投稿させていただきます。

  下の動画は、そのミーティングのインプットとして用いた、サイモン シネック氏によるTEDトーク「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」です。

  名著『WHYから始めよ!』でも唱えられている「ゴールデンサークル」を用いて、マーケティングやマネジメントで人の心を動かすコミュニケーションとは、「WHY」を基点とするもの(WHY→HOW→WHATという流れ/インサイドアウト ※動画参照)であるとテンポよく解り易く説いています。


  その最も解り易い例として氏が挙げているのがApple社のセールスコミュニケーションです。

▼「我々のすることはすべて 世界を変えるという信念で行っています。違う考え方に価値があると信じています (WHY)」

▼ 「私たちが世界を変える手段は 美しくデザインされ 簡単に使えて 親しみやすい製品です(HOW)」

▼「 こうして素晴らしいコンピュータができあがりました」(WHAT)

これに対して、旧来のセールスコミュニケーションは“WHAT“から始まります。

▼「我々は素晴らしいコンピュータ(WHAT)を発売しました」

▼「美しいデザインで簡単に使えます(HOW)」

▼「一ついかがですか?」 =相手の行動(WHY)に期待

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  自ら積極的に「WHY」を打ち出していく経営は、昨今「パーパス(Purpose)経営」と言われて注目されています。

※ 関連書籍をご紹介します ※


  企業活動の目的は利益を上げること。何故なら企業は存続し続ける社会的責任を負っており、利益こそがその原資になるから。

  これは確かに正論ではあります。

  しかし、供給が需要を上回る“モノ余り”の社会で、売り手(作り手)と買い手の力関係が「買い手優位」になった今日において、消費者に選ばれるためには企業やその製品、サービスに対する共感・共鳴が不可欠である、というのが昨今多くの識者が唱える『パーパス経営』であり、そのパーパスこそが“WHY”なのです。

  これは、企業活動を行う上で獲得すべき人材(従業員)、取引先、提携先といったパートナーとより強い絆で結ばれる上でも重要なことであると言われています。

  さて、話を元に戻します。

  Apple社のようなインサイドアウトのコミュニケーションを行なうためには、そもそも「WHY」「Purpose」の存在が不可欠です。

  そして、この「WHY」「Purpose」の存在は、組織や個人の仕事の仕方も大きく変えるのです。

  人材紹介コンサルタントの仕事は、取引先企業の求人募集に対して適した候補者を推薦することであり、「採用・入社」がサービスのゴールです。(もちろんその人材が活躍して初めて紹介したことに価値が産まれるわけですが、ここでは議論の焦点が異なるため触れずに話を進めます)

  すなわち、いくら優秀な人材を紹介しても入社に至らなければ仕事の成果も売上もゼロなのであり、また「書類選考通過」「面接通過」、「採用内定」という一連のプロセスには一定の成功確率が現れますので、コンサルタントにはそれぞれの目標値から逆算した期間(月・週・日)ごとの活動量目標が定められています。

  気を付けなければならないことは、この活動量目標が目的化してしまうことがあるということです。

  前述のコミュニケーションの流れ(ゴールデンサークル理論)にあてはめてみると、それがよく解ります。

▼週20人の候補者を推薦しなければならない(WHAT) ※このコンサルタントが月間の成果目標を達成するための必要数

▼そのためには企業が求める採用要件から少し外れた人も紹介して、企業に妥協を迫ることで内定を出してもらおう(HOW)


  一方、インサイドアウトの考え方に基くとコンサルタントの活動が下のように変わります。

▼取引先が人材獲得競争に勝利することでビジネス競争を勝ち抜いてもらうために(WHY)

▼真にその企業が必要とする人材を妥協せず探し抜いて(HOW)

▼他の募集チャネルからは獲得できないような優秀(稀有)な候補者を推薦しよう(WHAT)

  事業環境変化のスピードが増し、企業の人材確保において外部労働市場への依存度は一層増していきます。それに伴い、大手~中堅企業ではインハウスリクルーター(=採用プロフェッショナル)の増強が行なわれており、またテクノロジーの進化も相まって、「かつて人材紹介会社とユーザー企業の間にあった「情報の非対称性」は急速に解消されています。」( (株)懸け橋代表 竹内博和氏)

 その上で、人材紹介コンサルタントが今後もその存在意義を保つ術は「他のチャネルからは獲得できない候補者を推薦する」ことしかありません。

  幅広く求人情報を告知して、たまたま「受けたい」と言ってくれた候補者をあたかもベストな候補者であるかのように推薦し、取引先企業に妥協を迫る(妥協を待つ)スタイルの人材紹介コンサルタントは早晩、少なくとも”35%”の市場から退場せざるを得なくなるでしょう。


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