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BFF ベタ・フラッシュ・フォワード[10]tofubeats 音楽プロデューサー・ DJ・トラックメーカー【新しい街】

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*『建築ジャーナル』2019年10月号の転載です。 
 誌面デザイン 鈴木一誌デザイン/下田麻亜也 

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渋谷の中央、スペイン坂が巻き付くようにWWW/WWWXと呼ばれるライブハウスがある。ここはかつて『RISE』(1986)と呼ばれた映画館、建築家・北川原温の代表作だ。『RISE』の発表に寄せて、北川原はこう綴っている。「以前、この都市の白い闇の中にひとつの迷宮があった。それは解釈の迷宮と呼ばれるものであった。(中略)私たちは対象そのものを見ることはできない。つまり解釈を見ることでしかないということになる。(中略)表現はこの解釈という手続きを前と後に常に合わせもたされている。(中略)そして今、解釈の迷宮は廃墟となって都市の白い闇の中に空しく埋もれている」❖1。北川原が「白い闇」と指すものは、実体を置き去りにして生産されゆく都市のイメージだったろうか。パルコに代表される、実体ある都市イメージを加速度的に書き換えていく広告の氾濫を思わせるこの文章は、「解釈
という手続き」を失ったインターネット出現以降の現在の世界をどこか思わせる。
 客観的事実より、虚偽であっても心情に訴えかけるものが勝る状況を指す「ポスト・トゥルース(ポスト真実)」。それは「ひとつの真理をめぐる諸解釈の争いではなく、根底的にバラバラな事実と事実の争い(中略)別の世界同士の争いに他ならない」❖2。いまや真理めいた客観的な事実は存在できず、私たちが何かについてそう思うこと自体がひとつの事実となってしまう。解釈ではなく、(主観的な)事実の連なりとして物事を捉えるとき、その裏には無数のありえるほかの事実が広がっている。それは私にも、あなたにもある。相容れないお互いの事実は、どうすればともにいられるのだろうか。

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