ネットでの情報発信について思うこと

11月上旬に私がドイツに出掛けている間に、「知財系 Advent Calendar 2021」が全部埋まっており、かつ、「知財系 もっと Advent Calendar 2021」も空きが数日しか残っていない状態となっていました。その後も、「知財系 もっともっと Advent Calendar 2021」まで開設されるなど、「知財業界で情報発信をする人がここまで増えたのか……」と驚くばかりです。

私個人については、相変わらず、記事の執筆、書籍の出版、講演やインタビューなどの従来型の情報発信が中心となっていて、SNSやYouTubeを使った流行りの情報発信はあまり行っていません。そういった意味で、時代の変化に対応できていないのでしょうし、知財業界内で「いなぽんはオワコン」と言っている方がいるとも伺っています。

そういった従来型の情報発信をしている私から、最近の情報発信の傾向に関する懸念点を2つだけ述べてみることにします。

1.情報発信の質について

私が従来型の情報発信に重きを置いている大きな理由の一つとして、情報発信の質が保たれるという点があります。書籍や雑誌などでは、編集者や校閲者が介在し、発信する情報の質を高めてくれます。地上波のテレビやラジオでも、シナリオライターが予め作成したベース台本が存在し、不適切な発言を防ぐような工夫がなされています。ネットの情報発信は、SNSやコメント欄などでの指摘を除けば、実質的にチェック機能はありません。もちろん、既存メディアに関しては、「色々な人が中に入るからコスト高になるのでは?」という指摘があることも承知しています。ですが、正確かつ質の高い情報発信をすることを重視するのであれば、こういった方々の存在は極めて重要です。また、書籍が売れたり、雑誌や番組の評判が上がったりすれば、一緒に喜び合うこともできますし、自分の仕事が他人の生活を支えていることを意識する機会にも繋がります。

2.情報発信の対価について

ネットの情報発信は、一部有償のこともありますが、基本的には無償のことが多いです。SNSのフォロワー数やYouTubeのチャンネル登録者を増やして広告収入で稼いだり、人気が出てからコンテンツを書籍化するという手法も随分と増えてきました。もちろん、そこまで至るのはごく一部ですし、知財系コンテンツでは相当厳しいでしょう。私がそんなことを言うと、「フォロワー数やアクセス数を増やすことが目的ではない!」と答える方もいらっしゃいます。ただ、そうであっても気になるのは、特にコロナ禍以降、これまで有償でなければ入手できなかったような情報をタダで簡単に手に入れることができるようになった点です。「情報発信している人が気にしなければ、それでよいのでは?」という指摘があることも承知しています。しかし、コンテンツ無償化の流れは、既存メディアへの影響はもちろん、知財業界全体への影響も少なからずあるような気がします。

あまりスッキリしない記事となってしまいました。ここまで読んでも「全然共感できない」という方もおられるかもしれません。かく言う私も、色々と思うところはありながらも、大勢の方々に業界全体を盛り上げるような情報発信をしていただきたいと考えています。どういったやり方がベストなのかを皆さんと一緒に考えていければと思います。


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