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観るサイクリスト ~自転車映画レビュー~ トップ・ランナー

ただの自転車好きが勝手に自転車映画を批評します。
基本的にネタばれを気にせずつらつらと書いていきますので、気になる方は注意してください。

トップ・ランナー

実在のサイクリストであるグレアム・オブリーの戦いを描いた2006年公開の作品。U-NEXTで視聴可能なので、加入されている方はご覧になってはいかがでしょうか。

正直、作品としての知名度は低く、このブログをはじめるまで存在を知りませんでした。(笑)

監督はダグラス・マッキノン、主演 ジョニー・リー・ミラーなど座組も通好みといえば聞こえはいいですが、間違ってもビッグバジェットの大作ではありませんね。

グレアムオブリーとアワーレコード

彼とこの映画を語る上で、アワーレコードという競技を知る必要があります。コレは1時間でどのくらいの距離を走れるかを競う種目です。百聞は一見にしかず。最近、日本人の今村選手がアワーレコードに挑戦した動画がありますので、ご覧ください。

はい、こんな競技です。(笑)

肉体的にも精神的にも極限の戦いゆえに、レコードホルダーは大変な名誉とされています。特に1990年ごろまでは非常に人気のある競技で、エディ・メルクス、ジャック・アンクティル、ミゲル・インドゥラインといったスター選手が次々に挑戦し、記録を塗り替えていきました。

しかし、1993年にグレアム・オブリーというほぼ無名の男が突然この記録を更新してしまいます。コレはなかなかの事件でした。
しかも、彼が記録を更新したときに使用した自転車は、胸の前に腕をたたんで乗るヘンテコな代物。下の写真がそれです。

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タック・ポジションと呼ばれる伝説のポジションです。今となっては常識となっていますが、走行中に最も障害になるもの空気抵抗です。これを抑えるために、オブリーが生み出したのがこの姿勢でした。

これを良しとしなかったUCIがイロイロ規定を変えて、オブリーを邪魔します。さらに、オブリーの記録は他の選手に更新されてしまうのですが、オブリーはめげません。「胸に腕を付けてはいけない」というルールに対してオブリーの考案したポジションがスーパーマン・ポジションと呼ばれるポジション。写真のような姿勢です。このポジションでオブリーは再びアワーレコードを更新します。

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富も名声も実績もない男が創意工夫を武器に、巨大権力のルール改正にも屈せず、機材の可能性を探り記録更新に挑み続けた姿勢は、多くの人から称賛されています。


映画としてはどうなのか

観た感想は、どすの効いた濃厚豚骨スープを期待してたら、あっさり魚介スープだったみたいな感じでした。
駄作ではないけど……という感じ。

ちなみに、映画のあらすじは上に書いた通りです。(笑)


一番残念に感じたのは、敵が弱く感じられてしまったところでしょうか。まぁ、権力との闘いというよりは、オブリーの内なる葛藤に重きがおかれているため、仕方ない部分はありますが。

この作品の敵は①大まかに権力組織と②子供のころのいじっ子の二つです。このどっちも弱い!

まず、権力組織は割とテンプレ的な敵って感じで、どす黒い邪悪さみたいなものが全然感じないんですよね。なんか屁理屈言って、オブリー困らせてやろーくらいの小物にしか見えない。(笑)
もっと、金と権力に執着したクソ野郎であった方がいいように思うんですよ。

次にいじめっ子。序盤オブリーがいじめられる描写があるんですが、オブリーは父から自転車をプレゼントされます。自転車に乗ったオブリーは、いじめっ子を振り切ることで、いじめは終わります。
で、後にこいつらがまた出てきて、オブリーを苦しめるんですけど、、、そのトラウマは序盤で克服してなかった?とか思っちゃったんですよね~。

①と②が弱いんで、オブリーが思い悩むんで自殺未遂を犯したところとか、そこまで落ち込むか!?ってなっちゃったんですよ。その後、再び立ち上がっても、うーんみたいな。

ということで、まとめます。
映画としてはそれほど面白い作品ではないです。

が、オブリーの功績に敬意を表しておススメです!

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