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デザインにおけるシステム1・システム2

前回、無意識と意識についての記事を書きました。今回はその「無意識」について行動経済学の観点からもう少し掘り下げて書いていきます。

以下参考書籍です。



1. 行動経済学の基本「認知の癖」

カーネマンによると「人間の脳は情報処理をする際に2つの思考モードを使い分けており、それをシステム1・システム2と呼ぶ」とのこと。

システム1は直感的で瞬間的な判断であることから「ファスト」、システム2は注意深く考えたり分析したりと時間をかける判断であることから「スロー」と呼びます。認知の癖を生む理論のうち最も基本となる思考です。

前回私が作成した図解でいう右側の部分です。

デザインプロセスの意識と無意識

書籍に書かれている具体的な事例は割愛しますが「人間は無意識に非合理な選択をしてしまう生き物だ」ということです。身の回りの出来事をまず直感的にシステム1で捉えるからです。

人間は全ての事象に対して深く吟味して取捨選択しているわけではない。間違えてしまうこともあり、それが当たり前で、人間というものはそういうものだ、という解釈です。

では、人はどのようなときにシステム1で判断してしまうのでしょうか。それは以下のような状態のときです。

・疲れているとき
・情報量、選択肢が多いとき
・時間がないとき
・モチベーションが低いとき
・情報が簡単で見慣れすぎているとき
・気力、意志の力がないとき

ビジネスパーソンは皆忙しく常に大量の情報に接しています。つまりシステム2のエンジンとも言える「注意力」は常に危険にさらされています。人はシステム1で物事を判断する可能性が高いということです。


2. 消費者の行動はシステム2を使って考えない

仮に自社の商品やサービスが機能・価格・サポートその他全ての要素で他社より優れていたとしたとしても、商品が購入されないケースはあります。(実際に競合他社が存在している時点でそういうことでしょう)

自分が消費者として何かを購入するときのことを考えてみると分かります。買う物に対して全て競合調査をして効能・利便性・価格などを比較・塾考し購入の意思決定をしているわけではないはずです。

多くはシステム1を使って、なんとなく良いなと感じ、瞬間的な思考で購入したり、記事を見るためにクリックしたり、動画を見たりと、あらゆる判断を直感で意思決定しています。


3. 概念メタファーとデザイン

デザインにおける「印象形成」の重要性はこれまで過去の記事で何度か書いてきました。デザインレイアウトや色によって人が抱く印象は大きく異なってしまいます。だからこそ、その人間の認知を活用したデザインのコントロールが必要になります。

例:垂直のレイアウト(腕時計の広告)
権威性、贅沢、優位性、高級、と無意識に解釈

例:背が高く細長い(飲料のボトル)
高級、高品質、特別感、と無意識に解釈

消費者が上記のような印象を抱き、システム1にて購入に繋がる可能性を考えると、デザインによってどのような印象を与えたいのか、どのような印象を感じ取ってほしいのか、深く考え責任を持つことが重要です。


4. 情報は多過ぎてはいけない

意思も働かないうちにシステム1で判断して行動するのが人間です。大量の情報にさらされて集中力を失い、メンタルが蝕まれ、ベストな選択ができない… そのようになってしまってはどうしようもありません。

多過ぎる情報は、人を疲れさせ、意思決定を妨げます。例えば広告をデザインする際、見た人に「大切なメッセージ」を伝えたい場合は、極力情報量を少なくし、文章を短く調整することが必要でしょう。

私が業務の中でメンバーに何かを伝える時、できるだけ図解して伝えるよう意識している理由はここにあります。


まとめ

要するにデザインが大切であることは間違いない、ということです。日常のあらゆるタッチポイントの「顔」は全てデザインです。デザインが印象形成の大きな役割を担っており、我々がそれらをコントロールし、コミュニケーションを効率化していきます。

その理論でいうと私が書いているこの記事も、もう少し図解を増やしたり、サムネイル画像を改善していく必要がありそうです。

そこで過去のサムネイル画像のデザインを、この度リデザインしてみました。常にアップデートしていきたいと思います。


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