原発は万能の神?

エネルギー基本計画見直しの議論が政府の審議会で進んでいます。

12月には、原子力に関しての議論がされました。最近の審議会資料は、なぜか大量のスライド(ポンチ絵)になっています。今回ご紹介するのは149ページもあります。

一般の方がみれば、一体どれがポイントなんだかわからなくなるでしょう。

全てに答えるためなのか、あるいは煙幕なのか分かりませんが、事実、めちゃくちゃ多い資料になってきています。

でも結局言いたいことは、ごく一部のスライドに凝縮されています。その1枚がこれ。

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出典:総合資源エネルギー調査会基本政策分科会第35回会合(2020年12月21日)資料1、p.84(※このページ、これでも、この審議会で提示されたものとしてはかなりシンプルですが、それでもごちゃごちゃしてますね・・。)

このスライドがいいたいのは、原発は、安定供給性があり、経済効率性があり、環境にすらやさしい、ということです。まるで万能のエネルギー、神のような存在のようにみえますね。

事実はどうでしょうか。福島原発事故後、稼働はほとんど進んでいません。むしろ、多くが廃炉になってしまいました。原発は、災害が起こると止まりますし、トラブルでも止まりますし、訴訟でも止まってしまいます。コストも、実はとても高いです。2011年度以降に電力会社が投じた安全対策費用と維持費だけで、今後万事うまくいったとしても高コストです(実際に計算してみるとわかりました。これについては近著で書くことにします)。

また、「環境適合」って言ってますが、このスライドは非常に偏りがあります。原発には、確かにCO2排出は直接ありません。でも、原発でもっとも重要な放射能汚染については書かなくてよいのでしょうか。福島原発事故は、環境を汚染しなかったのでしょうか。これだけみてると、環境対策不要に見えてしまいます。書くスペースは十分あります。

エネルギー基本計画は、国の重要な計画の一つで、数年(だいたい3年)おきに改定されます。現政権の考えは、原子力に関して、ほとんど全く変わっていないというか、かなり偏っていると言ってよいでしょう。

誤った認識の下で何を議論しても、非現実的な計画しかでてこないのは当然の帰結です。またしても時間の無駄になってしまうのではないか、と大変心配しています。

政府は、一体なにをみているのでしょうか。このスライドをみるに、現政権は原子力を「万能の神」として「信仰」しています。「信仰」は、さすがにもうやめたほうがよいです。

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