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10年前の日記を発掘して分かった、人生が好転した瞬間。あるいは、身だしなみはメタ認知だという話。

Evernoteの無料プランのノート数上限が「10万→50」に引き下げられた。いきなり4桁のダウンである。どんなデフレなんだ。


ここ数年は「オワコン」ならぬ「オワアプ」感のあるEvernoteだったが、このニュースで完全に終焉を感じた。聞けば、Evernoteはもう何年もずっと赤字らしい。利益復活の見込みもないまま、無料ユーザーは事実上利用が不可能になるほど厳しい制限が打ち立てられた。これはもうサービス終了の布石と考えて間違いないだろう。多分、あと5年でEvernoteはなくなるのだ。

とても悲しいニュースだ。僕の青春はEvernoteと共にあった。僕が大学生だったとき、Evernoteは最もイケてるアプリだった。初めて買ったMacBookProに真っ先にインストールして、あらゆるサービスと連携させた。「すべてを記憶する」というEvernoteのミッションにつられて、人生すべてを記録する「ライフログ」という言葉がバズワードになった。ギークたちは皆いかにEvernoteを活用するかで競い合っていた。

今となっては意味不明だが、「Evernoteが作る手書きノート」というワケの分からない商品もあった。手帳メーカーのモレスキンとコラボで販売していた。

引用元:https://takalog.info/moleskine/evernotesmartnoteboo/


冷静になってみれば「デジタルでいきたいのかアナログでいきたいのかどっちなんじゃい!」としか言いようがないのだが、当時の僕にとっては垂涎のアイテムで、限定発売の時期を逃してしまって「買えなかった!」と後悔したことを憶えている。今になって思えば、買えなくて正解である。要らないから


ともあれ、そんな感じで、当時の僕らにとってEvernoteはとにかくイケてる存在だった。今で言うとテスラに近いのかもしれない。テスラが先日納車を開始したという「Cybertruck」は人気すぎて今予約しても数年待ちらしい。


Cybertruck、超イケてる。引用元: CNET Japan


落合陽一先生に至っては、免許がないのに買っちゃったらしい。どうすんねんそれ。


https://twitter.com/ochyai/status/1730548772130992394



ともかく、Evernoteは当時の僕らにとって最高のブランドだった。それが本格的に終焉に向かっているのは、「巨星墜つ」といった趣がある。センチメンタルな気持ちにならずにいられない。


Evernoteからデータを救い出す

センチメンタルになってばかりもいられない。僕は2013年~2020年の7年間、Evernoteに情報を書き溜め続けた。読んだ本や買ったものや考えたことを、できるだけたくさん書こうと頑張っていた。あの頃は、毎日のように日記を書いていた。

このデータは間違いなく資産だ。昔話を書くために事実関係を正確に思い出したくなったら、Evernoteを見ればいい。このマガジンの執筆でも、今まで何度も助けられてきた。

だけど今、Evernoteは終わろうとしている。当面はデータの閲覧やエクスポートには問題がなさそうだけど、それもいつまで続くか分からない。5年後には、閲覧さえできなくなっていることもありうる。

最も恐ろしいのは、Evernoteが話題にならずにひっそり終わってしまうことである。話題にすらならずひっそり終わったとしたら、僕は自分の書いた昔の日記にアクセスすることができなくなってしまう。

それは避けたいから、今のうちにデータをすべてエクスポートすることにした。すべてのデータをHTML形式で書き出して、Googleドライブに保存して、ヒマを見て少しずつNotionに移行しよう。


作業を始めて、すぐに気がついた。地味にめんどくさい、と。Evernoteは「すべてを一括でエクスポート」という機能を提供しておらず、「ノートブックをひとつずつエクスポート」しなければいけなかった。たとえば日記でいうと、僕は「2013年」「2014年」のようにノートブックを分割していたので、1年ずつそれぞれエクスポート処理をしなければいけない。

だが、怪我の功名というべきか、この作業をしている間に大きな発見があった。僕の幸福度が大きく変化しているのだ。大学3年生だった2014年あたりを境に、急に人生が楽しそうになっている。

たとえば、2013年1月17日の日記はこう。楽しくなさそうだ。

テスト勉強は全然楽しくない。なんだこれ。ドイツ語の勉強とかつまらなすぎて死ぬかと思った。今も全然楽しくない。
(中略)
「えろいちちうえをぺろり」すなわち「エロい父上をペロリ」という文章がキーボードの上段しか使わないで入力できることに気が付いた。
今世紀最大の無用な発見。

「テスト勉強が楽しくない」と文句をたくさん書いている。

あと、「エロい父上をペロリ」という文章がキーボード上段だけで書けることが分かってテンションが上がっている。ホントだ。試したら実際そうで驚いた。何をきっかけにそのことに気づいたのか不可解すぎる

……失礼。「エロい父上をペロリ」の件は忘れていただきたい。本題と全然関係ないので。ちょっとおもしろかったのでつい引用しちゃったけど、本題とはまったく関係ない。

ともかく、2013年の僕の日記は明らかに文句が多い。楽しかったことも書いているが、同じだけの量の文句が書かれている。攻撃的な印象だ。

一方、2014年11月8日の僕の日記はこう。(固有名詞をテキトウに伏せてある)

昨日の勤務後は、A(友人)のバイト先の牛タン屋へ行った。1時過ぎまで飲む。
終電をなくしたB(後輩)とCさん(先輩)が家に泊まりに来た。

今日は◯◯(学校名)で「学校改善を考える」ワークショップを手伝った。
「正門前に8時20分に集合」という信じられないメッセージがDさん(ボランティア先の上司)から送られてきて衝撃だった。朝早い。
そんなわけで6時起きで気合いの出発。BとCさんがいたからわりとしっかり起きれた。


なんとなく楽しそうだ。スケジュールもいっぱい詰まっているし、友だちの話もいっぱい出てくる。

こんな感じで、2014年を境に、人生が好転しているように見える。いわゆる「人生グラフ」を描いたら、2014年からドンドン上昇していくのではないだろうか。今まで自覚していなかったけれど。


その理由は分からなかったのだが、しばらく移行作業をしているうちに仮説が浮かんできた。見た目を改善する作業をやったからではないだろうか。



というのも、昔の僕の写真は「どうしようもないオタク」としか言いようがない。見た目が汚い。

汚いし、覇気もない。あとなぜか逆光


これをどうにかしようと思い立って改革を行なったのがどうやら2014年らしい。だいぶマシになった。


マシになったのはいいが、イキリ始めていて腹立たしい顔である。決め顔をするな。昔の自分ってなんでこんな腹立たしいんでしょうね。


日記を見る限り、僕の容姿は半年ぐらいかけて徐々にマシになっていったらしい。「男子三日会わざれば刮目して見よ」と言うが、僕の場合は3日ぐらい会わなくても変化は少なかったようである。

あまり自覚していなかったのだが、僕の人生は「見た目を何とかする作業」から徐々に好転していったのかもしれない。


その仮説にたどり着いたとき、脳裏に急にフラッシュバックした。「どうやら僕は見た目がヤバいらしい」と自覚するきっかけになった思い出が。あまりにも悲しい事件だったから、記憶の底に封印していたのだけれど。

記憶の底を掘り返して、その事件について書こう。

以下、あまりにも痛ましい恥ずかしい事件なので、有料になる。気になる方は課金して読んでほしいが、恥ずかしいので別に読まなくてもいい。単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。いつ入っても当月書かれた記事は全部読める。12月は5本更新なので、バラバラに買うより3倍オトク。


それでは見ていこう。話は、大学2年生のときに遡る……。


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