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僕の嫌いな100の人びと(1)。演劇関係者とイノシシの角煮の類似点について。

──嫌いな人の多い生涯を送ってきました。


哲学者・中島義道先生の「私の嫌いな10の人びと」という本がある。僕は大学生の時に読んだ。

「皆の喜ぶ顔が見たい人」が嫌いであるという主張が出てきて、当時大学生の僕は心の底から「分かるわ~」と思った。

カンボジアに学校を作ろうとする人も、恵まれない子どもたちのためにボランティアをする人も、なんかウソ臭く思えた。全員偽善者だと思った。「皆の笑顔が自分の幸せです」と語る人を見る度に、胃がフワッと浮くような、なんとも座りの悪い感覚を覚えていた。


大学生だった当時、僕はそんな「嫌いな人が多い」という自身の特性を自覚し、正体について分析してみた。

出た結論はこうだ。これはある種の反抗期なのだ。親に対する反抗期ではなく、社会に対する反抗期である。

そもそも、親に対する反抗期とは何か。それは、家族の庇護の元から、自立した個人へと変化する過渡期である。何をやるにも親の同意が必要な義務教育期間がもうすぐ終わろうかという14歳。自己を確立しなければならない不安定な精神状態が引き起こすのが、「反抗期」という現象だ。

であるならば、大学生だって反抗期になってもおかしくない。大学生は、経済的にも実質的にも、完全に自立した個人へ変化する過渡期だからだ。世間的には立派な大人の年齢でも、まだまだモラトリアムを楽しんでいる大学生21歳。これからモラトリアムが終わり、自分の食い扶持を自分で担保しなければならないという不安な精神状態が、やはり反抗期を引き起こすのかもしれない。

第二次性徴まっさかりだった14歳と違って、21歳の反抗期は親よりももっと大きな対象に向かう。この社会そのものだ。だから、”社会性”を上手に身につけたヤツに反感を覚えるのだ。「カンボジアに学校を作る」なんてビジョンを掲げるいけ好かない同級生は、”社会性”の鎧を纏っていたから、ほとんど生理的に嫌いなのだろうと結論を出した。

同時に、この結論から得られる当然の帰結がこうだ。「僕はこれから社会人になり、この反抗期も終わるのだ。きっとこんな”嫌い”もほとんど感じることがなくなり、数年後には懐かしく振り返るのだろう。14歳の頃の親への反抗期を今、懐かしく振り返っているように」

だから、大学生の僕は「今だけ感じるこの”嫌い”を、ぜひ憶えておこう。大人になれば失われてしまうのだから」と思い、この反抗を受け入れることにした。


あれから、5年の月日が流れた。

そして、僕の”嫌い”は予想通り失われた……などということは全くなく拍車がかかる一方である。

今、毎日のように「あいつは嫌いだ」「こいつは嫌いだ」という気持ちが湧いてくる。終わらない社会への反抗期。大学生の僕の考察はバチバチに間違っていた。カンボジアに学校を作ろうとする人は、未だに嘘臭いとしか思えない。

今日ここではっきり宣言したい。「大人になると人は丸くなる」という牧歌的な人間観は正しくない。社会への反抗は一過性のものではなかった。


となると、次に訪れる疑問は「この反抗期はいつまで続くのだろう…?」ということだ。この答えについては未だ分からないのだけれど、こないだ大きなヒントを得た。

インターネットが好きな人なら知らぬものはいないであろうWEBメディアの大家「デイリーポータルZ」の林編集長に先日、飲みに連れて行ってもらった。

この飲み会の中で、林さんは悪口ばっかり言っていた。発言の85%くらい「こいつは嫌い」「あいつは嫌い」というものだった。あ、この人も反抗期真っ最中だ、と思った。

林さんは御年48なのだが、バリバリに反抗期だった。一生あのままなのかもしれない

というか、よく考えたら中島義道先生も結構な高齢であの本を書いてるワケで、反抗するタイプの人の反抗期は終わらないのかもしれない。僕は一生この性質と付き合っていく覚悟を決めた方がいいらしい


できるなら、僕もステキな大人になりたかった。人の悪口など言わず、優雅にアフタヌーンティーを楽しめるような余裕ある大人になりたかった。サンドイッチと紅茶を手に、小鳥のさえずりを味わう暮らしをしたかった。

しかし、そうはならないのだ。ハイボールを手に、「あいつは嫌いだ」と言い合うのが最高に楽しい大人になってしまった。小鳥のさえずりではなく、焼き鳥のぼんじりを味わう暮らしをしている。


しかしその性質を嘆いていても仕方ない。僕はもうそういう大人なので、そういう大人として生きていくしかない。焼き鳥は小鳥に戻ることはできない。ハイボールは紅茶に変わることはできない。現実を受け入れてやっていくしかない。

だから、最近の嫌いな人の話をしよう(マイケル・サンデル風)。10では収まらない。「私の嫌いな100の人びと」をこの有料マガジンでやろうと思う。

どうせ一生悪口を言っていかねばならないなら、有料マガジンで小銭になった方がいいからだ。

悪態をついて、生きていく。そういうYouTuber的世界観である。


初回のテーマは「演劇関係者とイノシシの角煮」だ。あんまりよく分からないと思う。怒られたくないので無料部分ではあえてよく分からない表現にしている。気になる方はぜひ有料部分を購読して欲しい。

単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。今まで書かれたものも全部読めるからお得だよ。


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