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YouTuberが正気を失わない方法を、『呪術廻戦』から学ぶ。イケハヤという両面宿儺。

先週、こんな記事を書いた。

我々がこれからオープンする「ゆる学徒カフェ」のYouTubeが割と上手くいっている話と、対照的に上手くいってない人を扱いながら「プロセスエコノミーって安易にやるとヤケドするからやらん方がいいぞ」みたいな内容を書いた。

で、「上手くいってるよ」と言いながら貼った動画がこちら。

だが、公開後、この動画が割と多くの人に怒られてしまった




僕はこれを見て「たしかになあ」と思った。(アホみたいな感想である)

置いてある資材を触ってるぐらいならともかく、面白半分で何らかの計測器具を持ってはしゃいでいるのは明らかによくない。


「でっかい定規だ!カッコいい!武器みたい!」とテンション上がって喜んでいた。中学生か


恥ずかしながらテンションが上がって中学生みたいな行動を取っており、指摘のコメントを読んだ後で「たしかになあ」と反省したので、頑張って謝ることにした。

頑張って謝った


つい数日前まで「プロセスエコノミー上手くいってないヤツざまあwww」と言っていた人間が「軽率でした。たいへん申し訳ありませんでした」と謝り始めるの、現代寓話という感じがする。イエスは「剣を取るものは剣によって滅びる」と言ったが、「人のプロセスエコノミーを笑う者は自分のプロセスエコノミーによって滅びる」のである。皆さんも安易に人のことをバカにしてはいけない。肝に銘じてほしい。僕は仕事なのでやり続けますけど


何のことはない、醤油差しを舐めて逮捕されている迷惑系YouTuberと僕は大して違わない。同じグラデーションの中にいるのだ。これは程度問題だ。そのことに気づかされてゾッとした。彼らよりもずいぶんマトモな感性があるのではないかと、自分では思っているけれど。


さて、今回の一件を皮切りに、最近は色々と考えさせられた。

特に、インターネットの中で正気を失わないためにどうすればいいのか、ということについて。インターネットは人間の正気を失わせる装置みたいなところがあるので、油断しているとすぐに正気を失ってしまう。

その答えを得るには、大人気のマンガ『呪術廻戦』と、かつてブロガーのカリスマだった「イケダハヤト」を組み合わせて考えるのが最適だ。今日はそんなことを論じたい。


イケハヤさんという参考資料

インターネットのせいで正気を失った人物の代表格といえば、イケハヤさんことイケダハヤトだろう。プロブロガーの草分け的存在であり、10年前は「ネットを基盤にする論客」として大きなポジションを取っていた。

最近はもうすっかり人気が衰えて存在感がなくなってしまったが、2010年代前半の彼は本当にすごかった。「俺がインターネットだ」と言わんばかりだったし、実際に僕はそう思っていた。カリスマだった。

大学1年生のときに読んだ『年収150万円で僕らは自由に生きていく』が、僕に大いなる思想的影響を与えた。今の僕があるのはこの本のお陰だ。当時は「オルタナティブな生き方」みたいなものについて一切考えたことがなく、この本が価値観を大いに広げてくれた。

この本を読んだ結果として就職しそびれたから「人生を狂わされた」とも言えるのだろうけれど、振り返ってみれば僕の人生はこれがベストだったと思う。イケハヤさんには心から感謝している。


正気を失った論客

とはいえ、イケハヤさんは途中から明らかに正気を失っていった。僕が大学を卒業する2016年あたりからかなり厳しい存在になり始め、2018年頃には「もはや正気ではない」と感じられるようになった。

次から次へとワケの分からない粗悪なオンラインサロンを始めて明らかにコンテンツに見合わない高額な会費を徴収したり、「誰でも○○円儲かる!××の攻略法」といった過激な触れ込みで高額な情報商材を売りまくったり、薬機法違反の手法でサプリメントを売りまくったり、「正気を失った論客」というにふさわしい行動だった。

そこには彼なりのロジックがあったのだろう。それは多分「ビジネスを拡大せねばならない」だったのだろうし、経営者として彼の気持ちは分かる。だけど彼は明らかに長期利益を失う選択をしていた。論客としても経営者としても、正気を失っていたと思う。


正気を失わせる合言葉「アンチは即ブロック」

人から正気を失わせる方法として、よく知られるのは「外界との接触を絶たせる」である。カルト教団は信者に外部と接触させないようにして、教団内部でのみコミュニケーションを取らせる。こうすれば水を差す人間が一人もいなくなるので、どんな異常な思想でも信じ込ませることができる。外界からの孤立。洗脳の基本だ。

イケハヤさんの興味深い部分は、別に誰にも洗脳されていないのに、自動的に外界から孤立したことである。

彼はいつも「アンチは即ブロック」と明言しており、自分に対して批判的なツイートが目に入った瞬間にその人をブロックしていた。当然だが僕もブロックされている。


https://twitter.com/IHayato


僕は高知の山奥までわざわざ行ってイケハヤさんと長時間話したことがあるし、そのときはたいへん良好な関係だったはずなのだが、一瞬にしてブロックされてしまった。人生は一期一会である。

6年前の写真。イケハヤさんはと道を歩いているときも怪しいビジネスの話(「この木の切れ端は5000円で売れそうですね」)をしていた。おもしろかった。


「アンチは即ブロック」は、人間から正気を失わせるための合言葉である。反対意見をすべて封殺することは、外界からの孤立に他ならない。特定の思想を持った人間だけが集まり、その思想が強化されていく。エコーチェンバー現象なんて名前をつけなくても、その恐ろしさは古来からよく知られている。


「アンチは即ブロック」の合理性

とはいえ、イケハヤさんがこの発想にたどり着いたのは極めて合理的である。インターネット芸人として食っていく上で、「アンチは即ブロック」という理念は強力に機能する。

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