アダルトAIを巡る探究の記録と、未来予測。アダルトAIは人工培養肉になるかもしれない。
ゆるコンピュータ科学ラジオで、人工知能シリーズをやることになった。
しかも、誰もが知っている某有名企業の広告案件である。単に大きい会社というより、ワクワクするタイプの会社なので、とても取り組みがいのある仕事だ。
そういうことで、ずいぶんやる気を出してリサーチと台本作成を進めた。ここ1週間はこの仕事にかかりきりになっていた。機械学習に関する本をたくさん読み、自分でコードも書いた。こんなに勉強したのは久しぶりだ。
で、アレコレ勉強しながら台本を構成してみて、一番思ったのは「ほとんど使えないな」ということだった。機械学習の内部構造は地味すぎる。ラジオ制作の悲しみだ。ラジオ映えしない知識は勉強しても結局死蔵することになる。
「面白いがこれは使えない」という経験は慣れているけれど、今回は更にイレギュラーな「面白いがこれは使えない」があった。AI×アダルトである。ひょんなことからAIアダルトサービスについて探究することになり、たいへん面白い気づきの数々があったのだけれど、さすがの僕でも、広告案件にこれを持ってくるワケにはいかない。しかたないのですべてnoteで供養しようと思う。
人工知能のアダルト活用
台本に組み込むためにAIのキャッチーなニュースを探していると、こんなTwitterアカウントを見つけた。
プロフィールの、この一文に心奪われた。
「HentAI」、センスの良いネーミングである。ダジャレなんだけど妙にシンプルでスタイリッシュだ。僕はこの手の絶妙なネーミングに弱い。
最初は軽い気持ちで「この人おもしろいじゃん」と思いフォローしたのだが、この人を起点に色々とエッチなAI界隈のアカウントがサジェストされるようになり、エッチなAIについての情報が集まってくるようになった。
そして、またも僕の心を掴んだのはヘンな名前のサービスである。
それがこちら。deepsukebe.io。恐らくディープスケベドットアイオーと読むと思われる。海外のサービスなのだが、「すけべ」は世界共通語になっているらしい。
このサービス、着衣画像をアップロードすると脱衣させてくれるという極めて単純なサービスである。
昭和において「透視メガネ」というアホみたいな詐欺アイテムが流行したらしいが、これとほとんど同じである。
人類はせっかく生み出したディープラーニングによる高度な画像処理を使って、昭和の詐欺アイテムとほとんど同じ発明を繰り返している。技術が進歩しても時代が進んでも、人間の愚かさは何も変わらない。
また、こちらのサービス、UIの洗練されてなさもバカっぽくておもしろい。ディープラーニングという最新技術を使ってるはずなのに、UIはなぜか90年代風だ。
このサイトには繰り返し「ヌーデフィケーション」だの「Nudify」という謎の単語が出てくる。どうも、「画像処理で着衣画像を脱衣画像に変えること」を意味する英単語のようだ。技術の発展にともなって発生した新単語である。こういうのを発見するとテンションが上がる。
あと、フリーメイソンみたいな怖いロゴもポイントだ。怖すぎる。どうしてこうなった…?
ぼかしが取れない
そんなワケで、僕は「バカな名前のサイトでおもしろいな~」から入り、「UIが古い!」「ロゴが怖い!」という衝撃を立て続けに受けて、だんだん面白くなってきてしまった。
そうなると、次に行なうべきは実際に使ってみることである。
ということで、早速自分の画像をアップロードしてみた。
※言うまでもなく、自分の画像を脱がせたところで嬉しくも何ともないのだが、他者の意に反して脱衣画像を生成するのは倫理的に問題があるので、僕はこういうとき自分を実験台にすることにしている。よく言われることだが、AI時代に問われるのは人間の倫理なのだ。(上手くいったら自分以外の画像でも試してみようなどと考えてはいない。いやもう、断じて。僕は倫理的な人間だから、断じてそのようなことは考えないのである)
で、アップロードして処理した結果がこちら。
脱げた。すごい。
すごいけど、ツッコミどころがいっぱいある。
まず第一に、ぼかされている。どうやら「無料版だとぼかしが入るよ」ということらしい。「悪用を防ぐために」ともっともらしいことが書いてあるが、実際の動機はそれではなく「儲かるために」であると思われる。そもそも、金を取ろうが取るまいが悪用はされるだろうし、これは悪用を前提とするサービスだろう。「君のことをNudifyしていい?」「いいよ」というやり取りを経て使われるケースがどれだけあるのだろうか。そのやり取りをする度胸があるヤツは最初からこんなツールに頼らない気がする。
ということで、これは原則として誰もが悪用するサービスと言えよう。僕のような倫理的な人間を除けば。
第二に、ボリュームのあるおっぱいらしき部分が生成されている。
ぼかされているからよく分からないが、これは多分おっぱいだろう。
このあたり、AIの学習のクセが分かっておもしろい。恐らく、そもそも男性の画像を学習元としてほとんど使っていないのだろう。僕の顔は分かりやすく男性なので、普通に考えると男性の裸体が生成されるべきなのだけれど、学習データに極端な偏りがあるとそうはいかない。
あと、おっぱいの位置もおもしろい。だいぶ下の方に生成されている。これもやはり学習データの特徴を感じられておもしろい。この「腕でおっぱいを下から支えている構図」はセクシーな画像にありがちなので、僕のポーズもこれに相当すると判断されたのだろう。
第三に、手の周りの処理に失敗している。
「画像生成AIの課題は手」とよく言われる。指の本数が間違っているのは日常茶飯事だ。我々の手は実に複雑な造形であるらしい。吉良吉影が「手」に惹かれていたのは実に正しいというか、先見の明があったのかもしれない。AIが粗製濫造した画像が溢れてありがたみがなくなっていく現代において、価値が上がっていくのは正しく美しく描かれた「手」なのかもしれない。
経済合理性によってAIにジャックされるKindleUnlimited
そんな調子で、自分を脱がしてみる経験から色々と気づきを得て「AIによるヌード生成、おもしろいな」と思うようになった。
こうなってくると、「AIが生成したヌード写真集」みたいなものを探してみたくなるのが人情である。軽くググってみると、出るわ出るわ。
特に衝撃だったのが、KindleUnlimited(月額の電子書籍読み放題サービス)のジャックされっぷりである。
KindleUnlimitedの写真集ラインナップを見ると、「AIが生成した写真集」がとんでもない量並んでいる。
考えてみると、無理からぬことであると言えるだろう。なぜなら、AIで写真集(イラスト集)を作るのは限りなくゼロコストに近いからだ。一般に、写真を生成するためのモデルを作る部分が大変で、それさえできてしまえばあとは無限に量産できる。
そして、KindleUnlimitedは「読まれたページ数に応じて著者に収益が分配される」という仕組みである。つまり収益は概ねページ数に正比例する。したがって、粗製濫造であってもとにかくページ数・冊数を出しまくるのが経済合理性がある行動だ。
したがって、「魂を込めてこの写真集を作りました!」みたいなものより、「とにかくいっぱい作りました!」という商品が多い。たとえばこれ。
この写真集の説明文、潔すぎて笑ってしまった。
「手足が変に取れてるかもしれないけどごめんね(汗)」、見たことない文字列すぎて頭がクラクラする。
「手足が変に取れてるかもしれない」のなら精査して弾いてくれやという気がしないでもないが、やはりどちらかというとページ数をとにかく増やす&収益を増やす方にインセンティブがはたらいていることが見て取れる。
それにしても「概要欄で手足が取れていることを謝る」という発想は天才的である。この写真集は著者自身が「AI少女 AYA」という設定なので、「手足取れてるかもしれないけどごめんね(汗)」と言わせておけばそれでいいのだ。青天の霹靂である。人間が「手足取れていたらごめんなさい」と書いていると「いやお前でチューニングしろよ」と思うが、美少女が「手足取れてるけどごめんね(汗)」と言われると許してしまう。「いいよいいよ!手足取れてる君の方が大変なんだから気にしないで!」と、風邪の人に優しくしちゃうみたいな現象が発生する。すごい。「AI美少女の本を出すならAI美少女になりきれ」という教訓が生まれた。
ちなみに、こう言ってはいるが、著者はそれなりに画像を精査してるっぽく、実際に手足が取れているほどおかしなものは見つからなかった。だが、「ちょっとヘンだな」ぐらいのものはたくさんある。たとえばこれ。
これ、鏡に写っているものが明らかに整合性が取れていない。ちょっと怖い。でもまあ「手足取れてるかもしれないけどごめんね(汗)」と謝られてるので、このぐらいは余裕で許容範囲である。やはり美少女になりきって書かれた概要欄は強い。
極端な別パターン:「未満」と言っちゃう
あと、別パターンを採用していたのがこれ。
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